お盆休み最後の週末、2013年SUPER GTシリーズ第5戦「第42回 インターナショナルポッカサッポロ1000kmレース」のサポートレースと言うこともあり、多くの観客に見守られながらのレースとなった。エントリー数は第2戦よりも増え、70台(トヨタ86:59台、スバルBRZ:11台)と多くの参加者が集まった。
今回は土曜日の午前中に予選、午後に決勝という1DAYでのレーススケジュール。予選はA組/B組に分かれて行なわれ、A組では開幕以来独走2連勝中のNo.7 山野直也選手(P.MU RACING 86)が、決勝のことを考え1周のみのアタックで、唯一の35秒台となる2分35秒059を記録。3連覇に向けてポールポジションを獲得。B組はNo.57 阪口良平選手(FK-TECacreBRZ)が、BRZ勢最上位でもある2分36秒792を記録し2番グリッド。以下、上位39台(1台は未出走)が決勝に駒を進めた。
8周で行なわれた決勝は、予選トップのNo.7 山野直也選手(P.MU Racing 86)がジムカーナで鍛えたという抜群のロケットスタートでトップを死守。1周目は約3秒、2周目から約2秒引き離す独走態勢で、今回も2位以下を全く寄せ付ない走りで3連覇を達成。
2位は今回初めてBRZに乗ったというNo.57 阪口良平選手(FK-TECacreBRZ)。「予選が決まっていたので、決勝は後ろのプレッシャーに負けずに走り切れました」と語る。3位は「赤い人達(ブリヂストンユーザー)が強いので予想外の表彰台でした(笑)」と言う、スーパーGTドライバーのNo.92 谷口信輝選手(コウベトヨペット86)が獲得した。
また、今回も上位陣だけでなく中段/下位グループでも接近戦のバトルが繰り広げられたが、初戦や第2戦と違い、接触やコースアウトの少ないクリーンなレース展開であった。
ちなみに、予選落ちしてしまった28台(2台が未出走)のためのコンソレーションレース(決勝に残れなかった参加者によるレース)は、今回は開催されなかった。
ここ最近、オトコの世界に飛び込む女性…が増えてきている。「草食系男子」に対して「肉食系女子」とでも言うのだろうか?それはモータースポーツの世界も同様だ。もちろん、GAZOO Racing 86/BRZ Raceにも、女性ドライバーが何人かエントリーしているが、今回は2名の女性ドライバーに本音を聞いてみた。
No.85 八講めぐみ選手に、女性ドライバーにとっての86/BRZ Raceの魅力について聞いてみると…、
「JAF戦のワンメイクレースと言うことで、パドックなどではギスギスしているイメージを持っていたのですが、実際は意心地が凄くいいです。『女なのに生意気だ!!』と言われたこともないですし、いじめられたこともありません。他のチームの人も気さくに話かけてくれますし、皆さん色々なことを教えてくれますよ。」
女子カート部を率いるNo.773 塚本菜々美選手には、マシンの印象を聞いてみた。
「86Racingは、他のカテゴリーのレースカーより女性でも扱いやすいクルマです。パワステも付いていますし、クラッチなどの操作系も軽いので、ドライビングする上での体力的なハンデはないと思います。むしろ軽い女性のほうが有利かもしれませんよ。」
女性ドライバーはもっと増えてほしいか?という質問には2人とも即答で「YES」。
「男性女性と分け隔てなく戦えるのがこのレースのいい所ですが、女性ドライバーがたくさん増えて“レディースクラス”などができたら楽しいですね(八講選手)」
「ここまで女子カート部の活動をしてきて、その結果カートでレディースクラスが復活し、レース自体も盛り上がりました。女性がたくさん走っているのをアピールすることで、色々な人に86/BRZ Raceに関心をもってもらえると嬉しいですね。ただ、女性の戦いは…男性のよりもある意味壮絶かも!?(塚本選手)。」
GAZOO Racing 86/BRZ Raceに参戦可能なトヨタ86Racing/スバルBRZ RA Racingはナンバー付きのレーシングカーである。つまり、普段は普通のクルマと同じように使用することが可能だ。と言っても、普通の人は「ナンバー付きとはいえ、実際の日常使用は大変でしょ…」と思っているはず。そこで今回、東京から鈴鹿サーキットまで自走で向かうNo.84 橋本洋平選手(カーウォッチ86ポテンザEDΩ)のクルマに乗せてもらうことに。ちなみに橋本選手は、この86を普段乗りとして本業でも使用している。
外観は様々なスポンサーステッカーが貼られているため、見た目が“派手”なのが難点!?一目で誰かがバレてしまうので、今まで以上に安全運転になったとか!?
「タイヤ4本と工具がシッカリ積める」というのは本当で、それだけでなくパドック内で使用するテントやイス、レーシングスーツや着替えなどが入るバックも飲みこむ。乗り降り時に気になる “ロールバー”の存在だが、これもコツをつかんでしまえば問題ない。
走りはノーマルに比べると引き締められた専用サスペンションとハイグリップタイヤのために、少々硬さは感じるものの不快ではない。減衰力調整も可能な上、車高もそれほど下がっていないので、ヘタなチューニングカーよりもずっと快適だ。
装備面では、橋本選手はナビ/オーディオを取り付けずにスマートフォンで代用(軽量化!?)しているが、エアコンはもちろんのこと、パワーウィンドウやリモコンドアロックなども標準なので装備面でも不満はないと言う。
結論を言えば、86Racing/BRZ RA Racingは日常でも普通に使える1台だ。レースと日常走行を両立できる「一粒で二度おいしい」モデルなので、コスト的にも抑えることが可能だ。皆さんもそんなレースに参加しませんか?
トヨタ86/スバルBRZは、空気の流れを上手に利用し、上下左右からクルマを挟み込むことで走行安定性を高める…という新しい空力性能の考え方を採用している。空力特性に優れたデザイン処理は、見える場所だけでなく見えない床下にも及ぶ。
床下を覗いてみると、エンジンやトランスミッション付近も空気がキレイに流れるためにカバーで覆われている。そのため、エンジンルーム内の熱が逃げにくい。となると、レースのように高回転/高負荷走行が多い条件下での使用の場合、エンジンオイル/トランスミッションオイルの油温上昇が気になるところだ。
そのため、トヨタ86Racing/スバルBRZ RA Racingには、空冷式オイルクーラーが装着されている。それと共に、エンジンオイルやトランスミッションオイルのセレクトも重要な要素となる。
通常のレーシングカーであれば、1戦ごとにエンジンを開けて整備やオーバーホールを行なうが、GAZOO Racing 86/BRZ Raceは、イコールコンディションのためエンジンが封印されている。そのため、一発勝負の性能重視オイルと言うわけにはいかないのである。そこで、オイルメーカーのエンジニアに「いいオイルを選ぶコツ」を聞いてみた。
「性能はもちろんですが、信頼性がどこまで持てるか?と言うのが大事ですね。エンジンオイルは、100度を超えるとまず添加剤が劣化していきます。なので、ベースオイルの性能がいい物を選ぶことをお勧めします。
同じ粘度のオイルで言えば、鉱物油よりも化学合成油、化学合成油の中でもエステル系と呼ばれる物の性能が良くなります。『何が良いか?』と言うと、オイルの粒子が小さいため、薄い油膜であっても強靭な油膜が作れることです。つまり、抵抗の少ない柔らかいオイルであっても、シッカリとエンジン内を保護してくれる…というわけです。ちなみにベースオイルの差=値段の差と言っていいと思います。
確かに、性能が劇的に変わる…ということはありませんが、ワンメイクレースは『チリも積もれば…』ですし、最終戦まで同じ性能が維持できているかも重要になります。ちなみに、いいオイルであれば、レース前に交換しておけばレースウィーク中は大丈夫でしょう」
ちなみに、86のチーフエンジニア多田哲哉さんは、以前メディアに向けて「86を制するには“熱”を制することです」と語っていることからも、オイル選びも慎重に…。
グランドスタンド裏のイベントスペースは、朝7時のオープンから多くの来場者が。朝から30度を超える猛暑のため、水を霧状に噴射する「Cool Down Area」も用意された。
様々な自動車メーカーやタイヤメーカー、パーツメーカーのブースがひしめく中、GAZOO RacingとSUBARUは、隣り合わせでブースを設置し、トヨタ86RacingとスバルBRZ RA Racingを展示。GAZOO Racing 86/BRZ Raceの予選後に来たのだが、説明員に熱心に質問をしたり、細部をチェックしている人も。
GAZOO Racingブースでは、開幕戦(富士スピードウェイ)でも好評だった、ドライビングシミュレーター「グランツーリスモ5」によるタイムアタックを開催(コースは鈴鹿サーキット、車両はトヨタ86でのトライ)。
SUBARUブースは物販だけでなく、スバルBRZをベースにSTIが独自にカスタマイズを施したモデル「BRZ tSコンセプト」を展示。説明員は「あくまでもコンセプトモデルです…」と言いながらも、内外装共にいつ発売されてもおかしくないクオリティに仕上がっている。もちろん、ニュルブルクリンクで磨き抜いた“走り”のほうも期待できるはずだ(8月19日に「スバルBRZ tS」として正式発表)。
さらに、GAZOO Racingブースには、発売間近のスポーツコンバージョンモデル「Vitz GRMN Turbo」が展示された。このモデルは、GAZOO Racingの「クルマの味づくり」を具現化したチューニングカーの第3弾(GRMNとは「GAZOO Racing Meister of Nürburgring」の略)。すでに様々な自動車雑誌ではプロトタイプ試乗記が掲載されているが、非常に高い評価を受けている。そんなモデルを発売前にも関わらず見ることができる…いうことで、ブースには多くの人が訪れた。
このモデル、通常のヴィッツにはラインナップされない3ドアボディに、152ps/21.0kgf・mを発揮する専用の1.5Lターボエンジンを搭載。ボディやサスペンション、ブレーキをはじめ、細かな部分まで徹底的に手が加えられたホットハッチモデル。
86同様に新車開発の聖地であるドイツ・ニュルブルクリンクをよく知る、走りのマイスターによって鍛えられたことで、クルマの“楽しさ”、走る“気持ち良さ”を存分に味わえるクルマに仕上がっている(詳しくはhttp://toyotagazooracing.com/archive/gr/grmngs/grmn/)。
販売台数は限定200台で価格は270.0万円。ヴィッツにここまで手が加えられてこの値段は、正直バーゲンプライスと言っていいだろう。
ちなみに、8/25(日)21時よりインターネット限定先着で商談申込受付を開始(http://gazoo.com/GRMN/Vitz_Turbo/howto_buy.html)。第2弾(iQ GRMN Supercharger)のモデルは、受付後数分で完売してしまったので、今回もアッという間に売り切れてしまう可能性も!?気になる人は早めにチェックしておこう!!
順位 | Car No. | 車両 | ドライバー |
---|---|---|---|
1位 | 7 | P.MU RACING 86 | 山野 直也 |
2位 | 57 | FK-TECacreBRZ | 阪口 良平 |
3位 | 92 | コウベトヨペット86 | 谷口 信輝 |
順位 | Car No. | 車両 | ドライバー | 合計 ポイント |
---|---|---|---|---|
1位 | 7 | P.MU RACING 86 | 山野 直也 | 60 |
2位 | 557 | オートバックスG786ポテンザ | 大西 隆生 | 26 |
3位 | 60 | OTG GY 86 | 服部 尚貴 | 22 |