GAZOO Racing 86/BRZ Raceがついに北海道に上陸。「2013北海道クラブマンカップレース第3戦」に組み込まれて行なわれた第5戦は、寒冷前線の接近により大豪雨が予想されていたが奇跡的に予選はドライ。しかし予選終了後より雨が降り始め、決勝はウエットのコンディションで開催となった。北海道・十勝スピードウェイでの開催ということで、エントリー数の心配があったものの、蓋を開けてみれば30台(トヨタ86:22台、スバルBRZ:8台)と、多くの参加者が集まった。
予選は29台(1台不出走)同時に行なわれ、No.557大西隆生選手(オートバックスG786ポテンザ)が、1分37秒764を記録、2位のNo.7 山野直也選手(P.MU RACING 86)との差はわずか0.005秒差という超僅差ながらポールポジションを獲得。
予選後から降り始めた雨は途中強くなったものの、決勝の始まる14時20分には雨は止んだ。14周で行なわれた決勝はNo.7山野直也選手(P.MU Racing 86)が得意のジャンプスタート。「年間チャンピオンというプレッシャーはなく、得意のスタートを決めて先行逃げ切り体制になれば、結果はついてくると思っていました(山野)」と、大西隆生選手(No.557オートバックスG786ポテンザ)を抜きトップで1コーナーへ進入。そこから独走態勢となり、安定した走りで2位以下を5秒近く引き離してゴール。
2位はスーパーGTドライバーのNo.892 佐々木孝太選手(CARトップ&XACAR BRZ)。「スタートが上手くいったので、もう1台のBRZ(No.61近藤翼選手)と山野選手を追ったのですが…逃げられちゃいましたね(佐々木)」と。3位はNo.100 富澤勝選手(N1TechポテンザWIN86)。「予選は9位だったのですが、上位陣がバトルでタイムが伸びていなかったため、混戦をすり抜けジャンプアップすることができました(富澤)」と語る。
山野選手は今回の優勝でドライバーズポイントが105となったことで、残り2戦を残しながらもシリーズチャンピオンを獲得した。
今回も予選/決勝とコンディションが変わる難しいコンディションだったこともあり、決勝中に接触やスピン、コースアウトなどもいくつか見られたものの、上位から下位までテールtoノーズ、サイドbyサイドの白熱したレース展開が繰り広げられていた。
ここ数年ビッグレースの開催がなかったことや地理的な条件もあり、十勝スピードウェイを走るのが初めて…という参加者が多かった。ドライバーの中には、過去にスーパー耐久シリーズの十勝24時間耐久レースに参戦したドライバーもいたようだが、彼らも「走ったのは5年前だから…」と、過去の記憶にズレがあったようだ。
他のコースであれば、ドライビングシミュレーターなどもあるが、さすがに十勝は用意されておらず。各ドライバーは事前にコース図や動画などでコースレイアウトをチェック、前日の練習走行を多く走ることでコースを覚えたようだ。
十勝スピードウェイは5.1kmのグランプリコースだが、GAZOO Racing 86/BRZ Raceでは、ショートカットされた3.4kmのクラブマンコースを使用する。コースレイアウトは非常にシンプルである。各コーナーも回り込んでいないので、ドライバーはコントロールしやすいし、Rが似ているコーナーも多く、路面の傾斜もないのでコースを覚え易く、各コーナーのボトムスピードを上げていく走りを心掛ければ、いいタイムに繋がりやすい。また他のコースに比べると、少しだけ“気合”と“根性”が通じるコースだと、上位ドライバーが教えてくれた。
実際に予選タイムを見てみると、トップが1分37秒代に対して、最下位は1分41秒と、他のサーキットでのタイム差を比べると接近していることからも明らかだ。
これまでのレースでビギナードライバーは、「練習走行から予選、決勝を走り終わる位にやっとコースがわかってきた」という人が多かったので、十勝は攻略しやすいのだろう。
しかし…、予選後にドライバーに話を聞くと「シンプルだからこそ奥が深い」と語る人が非常に多かった。恐らく、タイムを短縮するためのコツが解りにくいのだろう。
スーパーGTでスバルBRZ GT300に乗る佐々木孝太選手。これまで「GAZOO Racing 86/BRZ Race」には、KOTA RACINGの監督として関わっていたが、今回はドライバーとしての参戦である。その心境を聞いてみた。
「元々、このレースには参戦してみたいと思っていました。ただ、スーパーGTやイベントなどと被っていて、スケジュール的には厳しかったので、それは叶いませんでした。しかし、今回の十勝戦はレースもイベントも被っていなかったので、『北海道のレースを盛り上げよう』ということで、交通タイムスさん、ダンロップさん、そしてスバルさんに協力していただき参戦することができました。
86/BRZ Raceと言いながらも、これまで上位は86…というレースが多かったので、『このレースは86だけじゃないぞ!!』ということを、僕が参戦することでアピールできればいいなと思っています。また、KOTA RACINGは若手育成のために活動していますが、僕が走ることで様々なデータをフィードバックすることで、若手に刺激を与え彼らの成長に役だってくれればいいなとも思っています。
僕はGT300のレーシングカーだけでなく、普段は市販車のBRZにも乗っています。この2台、サーキットを走るのが凄く楽しい、低重心の感覚、コーナーで速さを稼ぐスポーツカーという点は、非常に共通点があります。
もちろん、これまでシリーズを戦ってきているドライバーは、このクルマを上手に走らせるコツやポイントをたくさん持っているので、そう簡単には勝たせてもらえないと思っています。ただ、BRZの事を他の人よりも多く知っている…という点ではちょっとだけ有利なので、チャンスがあれば狙っていきますよ。」
今回、佐々木孝太選手以外に、「GAZOO Racing 86/BRZ Race」に初参戦のドライバーがもう1人いる。レースクイーン/タレントでありながら、レースやラリーにも参戦しているいとうりな選手だ。このレースには様々な女性ドライバーもエントリーしているが、新たに参戦を決意した心境を聞いてみた。
「8/4に開催された『Fuji 86 Style with BRZ 2013』でのエキシビジョンレースに86Racingで出場しました。それ以来『シリーズ戦にも出たい!!』と思っていたのですが、今回実現しました。
ワンメイク車両に乗るのも久しぶり、更に十勝スピードウェイを走るのは初めて…という状況なので、目標はビリじゃなければいいかな…と(笑)。コース図と睨めっこしています。コースは覚えやすいですが奥が深そう、さらに路面も滑るので、シンプルだけど難しいコースのように感じています。
これまで86のN1車両の86 Racer’sを使った、『富士チャンピオンレース』に参戦していたので、N1車両とナンバー付きレーシングカーである86Racingの違いに戸惑っているところです。
N1車両はレーシングカー的な乗り方に対して、86Racingは頑張らずに無駄のない走りを心掛けなければタイムが出ません。頭の中ではそう思っていながら体は…という感じで戸惑いがあります。なので、練習走行から試行錯誤です。
ただ、これまでは少ない台数のレースばかりで、『レース中は一人旅』という展開が多かったのですが、GAZOO Racing 86/BRZ Raceは多くの台数の中で走れる…という環境がすごく嬉しいし楽しみです。決勝では中段を目指すだけでなく、他のドライバーとのバトルも楽しみたいと思います。」
GAZOO Racing 86/BRZ Raceの開催に合わせ、パドックでは「86/BRZサーキットパーティin十勝」というイベントも開催された。8月に行なわれた86/BRZのイベント「Fuji 86 Style with BRZ 2013」で公開された、インテリアをモディファイしたコンセプトモデル「Style S」を展示。また、86の開発責任者の多田哲哉さんのトークショー、86グッズの販売などが行なわれた。
今回も86/BRZ専用駐車スペースやオーナーラウンジも用意されたが、“FR不毛の地”と呼ばれる北海道にも関わらず、今回は何と50台以上の86/BRZが十勝スピードウェイに集結。86/BRZの人気の高さが全国レベルだと言う事を実感。
86開発責任者の多田さんに色々聞いてみると、「北海道は四駆神話があるので、他の地域に比べると販売台数は少なめですが、北海道のタクシーの多くはFRですよね?確かに雪道では四駆に比べると劣る部分はあるのは事実ですが、スタッドレスの技術も発達しているので、FRだからダメ…ということはありません。
私としては、北海道でもっとFRの楽しさを認知させたい…と思っています。雪道はFRを学ぶにはピッタリのステージです。雪であれば低い速度でもコントロールするテクニックを磨けますし、タイヤも減らない。雪道で鍛えたドライバーは、ドライのサーキットでも上達度合いが全然違います。
そういう意味でも、北海道の86オーナーさんは、FRを楽しむのに最高の地域に住んでいる…ということに、誇りと自信を持って欲しいです。
今回のようなイベントは、来年以降も継続して開催したいと思っています。今後、北海道だけでなく、本州の人にもツーリングで来てもらって楽しめるような大きなイベントに成長してくれると嬉しいですね。」
今回は北海道で開催…ということもあり、クルマを積載車などで送って飛行機で来る人、フェリーなどを用いて自走で現地まで来た人など、参加者の移動方法も様々だったようだ。
ちなみに、本州から十勝スピードウェイへ行く場合は、「十勝帯広空港」からレンタカーを借りて移動…と言うのが一般的なのだが、東京の羽田空港からの就航のみなのと、1日の本数が少ないのがネックである。時間を気にしないのであれば、北海道最大の空の玄関口である「新千歳空港」から、様々な観光スポットを訪ねながら十勝スピードウェイに来る…という方法もアリだ。
新千歳空港から十勝スピードウェイまでの距離は、約160km。イメージ的には東京から静岡へ行くような感覚である。ただ、ほとんどは高速道路での移動の上、渋滞も全くないのでラクラクドライブだ。
今回はトヨタレンタカーでトヨタ・アクアを借りて実際にそのルートを走ってきたのだが、ノンストップの移動だと約2.5時間で到着。平均燃費は25.7km/Lだったので、燃料代は約1000円(6~7L)であった。
また、高速道路を使わずに一般道(国道274号、38号を経由)で走ると約4時間程度だ。高速道路で一気に走り抜けるもいいが、途中で寄り道しながら来るのも旅の醍醐味と言えるだろう。
帯広市内に到着したら、全国的にも名物として知られる「十勝豚丼」、牛の生肉を細切りにしたどんぶり「牛トロ丼」、新鮮な生肉で生臭さがほとんどない「ジンギスカン」などなど、地元でしか味わえない“北海道グルメ”をぜひ堪能して欲しい。また、北海道の土産として全国的にも有名な「六花亭」の本店もあるので、そちらに寄ってみるのもどうだろうか?
順位 | Car No. | 車両 | ドライバー |
---|---|---|---|
1位 | 7 | P.MU RACING 86 | 山野 直也 |
2位 | 892 | CARトップ&XACARBRZ | 佐々木 孝太 |
3位 | 100 | N1TechポテンザWIN86 | 富澤 勝 |
順位 | Car No. | 車両 | ドライバー | 合計 ポイント |
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1位 | 7 | P.MU RACING 86 | 山野 直也 | 105 |
2位 | 557 | オートバックスG786ポテンザ | 大西 隆生 | 46 |
3位 | 37 | ケンダタイヤ86 | 蒲生 尚弥 | 35 |