“新城マイスター”の勝田/石田組が通算6度目の優勝
JN4、JN1クラスのシリーズチャンピオンが確定

全日本ラリー選手権第9戦 新城ラリー2015 レポート

2015.11.02 全日本ラリー選手権2015

過去最多となる5万人以上の観客がラリーを満喫

女性にモータースポーツを広めるプロジェクトの試作として、TOYOTA GAZOO Racingがピンクのカラーリングを施したゼロカーが観客の目の前を走った。
女性にモータースポーツを広めるプロジェクトの試作として、TOYOTA GAZOO Racingがピンクのカラーリングを施したゼロカーが観客の目の前を走った。

2015年全日本ラリー選手権は、最終戦となる第9戦「新城ラリー」を迎えた。2004年に地域再生を目指し、愛知県新城市をホストタウンとして初開催されたこのラリーは、愛知県や新城市の支援を受け、2013年から新城総合公園を拠点とし、園内路で行われるスペシャルステージ(タイムアタック区間。以下SS)やゲストドライバーによるデモンストレーションラン、自動車関連企業や地元企業によるブース出展などで賑わいを見せるイベントとして定着。好天に恵まれた今年の大会は過去最高となる5万人を超える観客が会場を訪れた。

 

イベント広場に設けられた「TOYOTA GAZOO Racing PARK in 新城ラリー2015」には、WRCで活躍した歴代のラリー車やニュルブルクリンク24時間耐久レースでクラス優勝を果たしたレクサスLFAなどが展示されたほか、キッズラリーチャレンジやガールズラウンジなど、家族で楽しむことができるイベントが多数用意された。

女性にモータースポーツを広めるプロジェクトの試作として、TOYOTA GAZOO Racingがピンクのカラーリングを施したゼロカーが観客の目の前を走った。
女性にモータースポーツを広めるプロジェクトの試作として、TOYOTA GAZOO Racingがピンクのカラーリングを施したゼロカーが観客の目の前を走った。
  • 終始賑わいを見せた、キッズラリーチャレンジ。
    終始賑わいを見せた、キッズラリーチャレンジ。
  • 女性にドリンク無料サービスを行った、ガールズラウンジ。
    女性にドリンク無料サービスを行った、ガールズラウンジ。

また、今年は新城市郊外の鬼久保ふれあい広場に新たなギャラリーステージが設定され、海外ラリーを彷彿させるようなロケーションが人気を集めていた。2日 間で争われるラリーは、17SS(SS総距離96.735km)が設定され、総走行距離は414.088km。2日目にはTRDラリーチャレンジも同時開 催され、延べ145台という過去最多の出場車が各ステージを果敢にアタックした。

【JN6クラス】難ステージを制した勝田範彦/石田裕一組が今季3勝目

第6戦から勝田範彦とコンビを組むコ・ドライバーの石田裕一は、全日本ラリー最上位クラス初優勝。
第6戦から勝田範彦とコンビを組むコ・ドライバーの石田裕一は、全日本ラリー最上位クラス初優勝。

JN6クラスは、これまでの新城ラリーで最多となる5勝を挙げている勝田範彦/石田裕一組(スバルWRX STI)と、今年のチャンピオンを獲得した新井敏弘/田中直哉組(スバルWRX STI)のマッチレースとなった。テクニカルステージは勝田/石田組、ハイスピードステージは新井/田中組がベストタイムという状況となった初日は、勝田/石田組が2番手の新井/田中組に9.2秒差を付ける首位に立つ。

 

2日目に入っても両者の攻防は変わらず、終盤のSS16で新井が勝田に8.0秒差まで迫るものの、最終SSで新井を0.5秒上回った勝田/石田組が、2013年以来となる優勝を飾り、新城ラリー最多優勝記録を“6”に伸ばした。勝田にとっては第3戦以来となる今季3勝目、シリーズ中盤から勝田のコ・ドライバーを務める石田にとっては、最上位クラスでの初優勝となった。2位には3本のハイスピードステージを制した新井/田中組、3位には2位の新井を上回る5本のSSでベストタイムを奪いながらも、テクニカルステージに苦しんだ奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)が入賞した。

第6戦から勝田範彦とコンビを組むコ・ドライバーの石田裕一は、全日本ラリー最上位クラス初優勝。
第6戦から勝田範彦とコンビを組むコ・ドライバーの石田裕一は、全日本ラリー最上位クラス初優勝。

【JN5クラス】勝田貴元/足立さやか組が怒濤の大逆転!

勝田貴元/足立さやか組のトヨタ86は17SS中15カ所をベストタイムで駆け抜ける速さを見せて今季初優勝。
勝田貴元/足立さやか組のトヨタ86は17SS中15カ所をベストタイムで駆け抜ける速さを見せて今季初優勝。

TOYOTA GAZOO Racingチャレンジプログラムに選抜され、フィンランドでトレーニングを行う新井大輝/フィル・ホール組(トヨタ・ヴィッツGRMNターボ)と勝田貴元/足立さやか組(トヨタ86)が揃って出場し注目を集めたJN5クラスは、初日のSS1で勝田/足立組がタイヤをパンクさせてしまい、トップから57.1秒遅れのクラス14番手と大きく出遅れてしまった。だが、SS2から反撃を開始した勝田/足立組は、初日の最終SSとなるSS10まで9連続ベストタイムをたたき出し、初日トップの眞貝知志/漆戸あゆみ組(アバルト500ラリーR3T)まで11.4秒差の3番手まで順位を上げる怒濤の追い上げをみせた。

 

3日目も勝田/足立組の勢いは止まらず、オープニングとなるSS11で眞貝/漆戸組を捉え首位に浮上。その後もSS15以外はすべてベストタイムを奪い、2位の眞貝に11.8秒差を付け、新城ラリー初優勝を飾った。また、今シーズンチャンピオンを獲得した天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツGRMNターボ)は3位に入賞。新井/ホール組は初日にターボトラブルに見舞われながらも、メカニックの懸命な修復と粘り強い走りで6位入賞を果たした。

勝田貴元/足立さやか組のトヨタ86は17SS中15カ所をベストタイムで駆け抜ける速さを見せて今季初優勝。
勝田貴元/足立さやか組のトヨタ86は17SS中15カ所をベストタイムで駆け抜ける速さを見せて今季初優勝。

【JN4クラス】横尾芳則/渡邊晴子組が薄氷の勝利

JN4クラスは横尾芳則/渡邊晴子組のトヨタ86が前戦に続く2連勝で今季3勝目。
JN4クラスは横尾芳則/渡邊晴子組のトヨタ86が前戦に続く2連勝で今季3勝目。
3位入賞の石川昌平/石川恭啓組(スバルBRZ)が、自身初となるJN4クラスチャンピオンを獲得した。
3位入賞の石川昌平/石川恭啓組(スバルBRZ)が、自身初となるJN4クラスチャンピオンを獲得した。

JN4クラスは、2013年にトヨタ86で全日本チャンピオンを獲得した横尾芳則/渡邊晴子組が、初日の序盤からベストタイムを重ね、2番手以降を大きく引き離す展開となった。一方、今シーズンのタイトル争いを展開する番場彬/加勢直毅組(トヨタ86)は、クラス2番手で迎えた初日の最終SSでスピンアウトを喫してしまい、タイトルに手が届きそうになりながらも痛恨のリタイアとなった。この番場/加勢組がクラッシュしたコーナーでは首位を独走する横尾/渡邊組もスピンしてしまい、あわやリタイアというシーンもあったが、マシンにはダメージを受けずフィニッシュ。首位の座を守り切り、初日を終えた。

 

2日目に入っても横尾/渡邊組の首位は変わらず、今季3勝目を獲得。出場した3戦すべてで優勝を飾った。2位には佐藤隆行/藤井俊樹組(スバルBRZ)が、入賞した。タイトル争いで注目された石川昌平/石川恭啓組(スバルBRZ)は3位に入り、自身初となるJN4クラスチャンピオンを獲得した。

JN4クラスは横尾芳則/渡邊晴子組のトヨタ86が前戦に続く2連勝で今季3勝目。
JN4クラスは横尾芳則/渡邊晴子組のトヨタ86が前戦に続く2連勝で今季3勝目。
3位入賞の石川昌平/石川恭啓組(スバルBRZ)が、自身初となるJN4クラスチャンピオンを獲得した。
3位入賞の石川昌平/石川恭啓組(スバルBRZ)が、自身初となるJN4クラスチャンピオンを獲得した。

【JN3クラス】岡田孝一/鶴田邦彦組が今シーズン最多の6勝目

JN3クラスはチャンピオン岡田孝一/鶴田邦彦組のマツダ・デミオが全クラス中で最多となる今季6勝目。
JN3クラスはチャンピオン岡田孝一/鶴田邦彦組のマツダ・デミオが全クラス中で最多となる今季6勝目。

今シーズン優勝したラウンドすべてで2位以下を大きく引き離す独走をみせ、今シーズンのチャンピオンを獲得した岡田孝一/鶴田邦彦組(マツダ・デミオ)が、この最終戦でも変わらぬ強さを発揮した。初日を終え、2番手の島田章/石黒祐輔(マツダ・デミオ)に1分30秒以上の大差を付ける首位に立った岡田/鶴田組は、2日目のステージはペースを抑えながらも7SS中3本のSSでベストタイムをマーク。島田/石黒組がSS12でリタイア、3番手に浮上した鷹野健太郎/尼子祥一組(マツダ・デミオ)がSS14でリタイアと2位以下の順位が激しく入れ替わるなか、2位に浮上した藤田幸弘/藤田彩子組(マツダ・デミオ)に2分40秒もの大差を付け、全クラスのなかで最多となる今季6勝目を獲得した。2位には藤田/藤田組、3位にはSS16でベストタイムを獲得した戸塚和幸/木村悟士組(トヨタ・ヴィッツ)が入賞した。

JN3クラスはチャンピオン岡田孝一/鶴田邦彦組のマツダ・デミオが全クラス中で最多となる今季6勝目。
JN3クラスはチャンピオン岡田孝一/鶴田邦彦組のマツダ・デミオが全クラス中で最多となる今季6勝目。

【JN2クラス】須藤浩志/新井和正組が2日目に逆転

JN2クラスは須藤浩志/新井和正組のスズキ・スイフトスポーツが2日目に逆転して今季2勝目。
JN2クラスは須藤浩志/新井和正組のスズキ・スイフトスポーツが2日目に逆転して今季2勝目。

JN2クラスは、第8戦で全日本ラリー初優勝を獲得した鈴木尚/山岸典将組(スズキ・スイフトスポーツ)が、初日のSS1とSS2でベストタイムをマーク。早くも2番手に22.9秒もの大差を付ける。SS3以降は須藤浩志/新井和正組(スズキ・スイフトスポーツ)が3本のSSでベストタイムを奪い鈴木/山岸組を追い上げるが、SS1のリピートステージとなるSS5で鈴木/山岸組が須藤/新井組を18秒引き離し、初日を終えた時点で21.2秒のマージンを築き上げた。

だが、2日目に入ると須藤/新井組が一気にペースアップを図る。ギャラリーステージのSS14以外すべてのSSでベストタイムをマークし、SS15ではついに鈴木/山岸組を逆転しトップに浮上。最終的には2位の鈴木/山岸組に8.1秒差を付け、今季2勝目を獲得した。また、3位には第8戦でチャンピオンを獲得した高橋悟志/箕作裕子組(トヨタ・ヴィッツ)が入賞した。

JN2クラスは須藤浩志/新井和正組のスズキ・スイフトスポーツが2日目に逆転して今季2勝目。
JN2クラスは須藤浩志/新井和正組のスズキ・スイフトスポーツが2日目に逆転して今季2勝目。

【JN1クラス】最終SSでまさかの展開、松田保夫/杉原慶彦組が優勝

JN1クラス優勝の松田保夫/杉原慶彦組が全日本ラリー最年長チャンピオンに輝いた。
JN1クラス優勝の松田保夫/杉原慶彦組が全日本ラリー最年長チャンピオンに輝いた。

開幕戦で優勝を飾っている松田保夫/杉原慶彦組(マツダRX-8)と、第3戦で優勝した中村晃規/古川智崇組(マツダRX-8)との対決となったJN1クラスのチャンピオン争いは、松田/杉原組が3位以内に入賞した時点でタイトル獲得、中村/古川組は優勝がチャンピオン獲得の絶対条件となる。その中村/古川組がJN4クラスのトップに迫る速さで松田/杉原組を引き離すが、松田/杉原組もチャンピオン獲得に向け2位をキープする。このまま独走態勢で優勝を飾るかに思えた中村/古川組だが、2日目の最終SSで滑りやすい路面にコントロールを失いまさかのコースアウト。完走ペースで順位を守り切った松田/杉原組が、JN1クラスチャンピオンを優勝で決めた。今年で70歳になる松田は、全日本ラリー最年長チャンピオンの記録も大きく更新した。また、水素燃料電池車を全日本ラリーに投入した国沢光宏/木原雅彦(トヨタMIRAI)が2位でフィニッシュした。

JN1クラス優勝の松田保夫/杉原慶彦組が全日本ラリー最年長チャンピオンに輝いた。
JN1クラス優勝の松田保夫/杉原慶彦組が全日本ラリー最年長チャンピオンに輝いた。

クラス別順位結果(上位3クルー)

class - JN-6
1位 ドライバー/コ・ドライバー
勝田 範彦/石田 裕一
スバルWRX STI
2位 ドライバー/コ・ドライバー
新井 敏弘/田中 直哉
スバルWRX STI
3位 ドライバー/コ・ドライバー
奴田原 文雄/佐藤 忠宜
三菱ランサーエボリューションX
class - JN-5
1位 ドライバー/コ・ドライバー
勝田 貴元/足立 さやか
トヨタ86
2位 ドライバー/コ・ドライバー
眞貝 知志/漆戸 あゆみ
アバルト500ラリーR3T
3位 ドライバー/コ・ドライバー
天野 智之/井上 裕紀子
トヨタ・ヴィッツGRMNターボ
class - JN-4
1位 ドライバー/コ・ドライバー
横尾 芳則/渡邉 晴子
トヨタ86
2位 ドライバー/コ・ドライバー
佐藤 隆行/藤井 俊樹
スバルBRZ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
石川 昌平/石川 恭啓
スバルBRZ
class - JN-3
1位 ドライバー/コ・ドライバー
岡田 孝一/鶴田 邦彦
マツダ・デミオ
2位 ドライバー/コ・ドライバー
藤田 幸弘/藤田 彩子
マツダ・デミオ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
戸塚 和幸/木村 悟士
トヨタ・ヴィッツ
class - JN-2
1位 ドライバー/コ・ドライバー
須藤 浩志/新井 正和
スズキ・スイフトスポーツ
2位 ドライバー/コ・ドライバー
鈴木 尚/山岸 典将
スズキ・スイフトスポーツ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
高橋 悟志/箕作 裕子
トヨタ・ヴィッツ
class - JN-1
1位 ドライバー/コ・ドライバー
松田 保夫/杉原 慶彦
マツダRX-8
2位 ドライバー/コ・ドライバー
国沢 光宏/木原 雅彦
トヨタMIRAI

※JN1はクラス不成立。全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。