トラブル続出…こんな日もある
5月ながらも初夏を思わせる気温の中でのレースウィークとなった、スーパー耐久シリーズ第2戦。13時30分から行われた3時間の決勝は、接触やクラッシュ続出のサバイバル戦となったが、ST-XクラスのNo.16 REAF REAL ESTATE KiiVA BMWが総合優勝を飾った。ST-4クラスはNo.16 ENDLESS ADVAN 86、No.52 埼玉トヨペットGreenBrave 86が1-2フィニッシュ。なお、No.86 TOYOTA Team TOM’S SPIRITはエンジントラブルでリタイヤとなった。
トラブルに悩まされたレースウィークで得た「チーム力」
ニュル24時間レースからS耐へ。ニュルから帰国したばかりのドライバーも高いモチベーションを維持しながら挑んだ第2戦だったが、チームは予想外のトラブルに悩まされた。事前に入念に調整し菅生に持ち込んだマシンだが、予期せぬエンジン不調が発生。スペアエンジンに乗せ換えるも原因が特定できず…という状況で、木・金曜日の練習走行はほとんど走行を行うことができなかった。そこでチームは急遽、3機目のエンジンを東京八王子にあるファクトリーまで取りに戻ることを決定。メカニックは往復8時間の移動後に、そのまま夜を徹してエンジン換装と補機の調整を行った。
ぶっつけ本番で臨んだ土曜日の予選だが、第2戦から投入された改良版サスペンションやブレーキのセットアップが決まらずタイムは伸び悩み、ST-4クラス9位からのスタートとなった。予選後にチームはサスペンション周りやブレーキの再セットアップを実施、日曜日のフリー走行で確認走行を行うことになった。
日曜日、8時40分から行われたフリー走行は、昨日までの不調が嘘のように好タイムを連発。井口・松井選手からは「前に進む感じも強いし、クルマが軽く感じる」と好評価を得た。ただ、下位からのスタートとなるため、チームは“攻め”の戦略を選んでいる。そのような状況だが、ドライバー・チームメンバーの士気は非常に高く、影山監督は「今日は“チーム力”で頑張ります!!」と語ってくれた。
13時30分にスタートした決勝。スタートドライバーは井口卓人選手が担当するも前が塞がれているのを嫌って6周目にピットインし松井選手に交代。松井選手はいいペースを維持しながら順位を着実に上げ、ピットアウト時は18位だった順位を11位までアップ。チーム関係者からは「松井は綺麗な走りをする」と評価も高かった。松井選手は45周目にピットイン、蒲生選手に交代とあわせてタイヤ交換と燃料補給を行う。メカニックもドライバーの追い上げに応えるべく、迅速かつ正確な作業により短い時間でコースへ送りだした。
蒲生選手の怒涛の追い上げが始まり、毎周ベストタイムを更新しながらの走行で、ピットアウト時に11位だった順位は62周目には何と5位までアップ。「このまま行けば上位入賞も!!」と誰もが期待したが、残り約1時間となった66周目に蒲生選手から「エンジンがおかしい」と無線連絡が。マシンはそのままピットを目指すも途中でマシンはストップ。残念ながらリタイヤとなった。
蒲生選手は「今回はトラブルが続いてしまいました。決勝のペースはよかったのですが…仕方ないです。悔しいですが、気持ちを切り替えて次に臨みたいと思います」と語ってくれた。影山監督は「木・金曜日とトラブルが起き、走り始めが土曜日の予選となってしまいました。根本的なトラブルが直りひと段落しましたが、予選は上手くいかず9番手。しかし、決勝はいいペースで5番手までアップし、残り1時間のサバイバル戦でチャンスがあるかなと思っていた矢先のエンジントラブル…。今回の経験や反省を元に、次戦もチーム一丸となって頑張りたいと思います」。
ニュル24時間を経験して強くなった!!
今回は練習走行から様々なトラブルが起きたことで、満足な走行を行うことができなかった。そんな状況にも関わらず、3名のドライバーは普段と変わらず、冷静で落ちついた姿だったのが印象的であった。少ない走行時間、セットアップが完調ではないマシンにも関わらず、与えられたミッションを的確かつ正確にこなすドライバーたち。表情や立ち振る舞いは、開幕戦とはちょっと違うように感じた。落ちついて力を発揮する心理のマネージメント、これは第2戦の直前に行われた「ニュル24時間」に参戦した経験が役に立っているのだろうか? そんな疑問をチームスタッフに聞いてみると、このように答えてくれた。
「ニュル24時間もそうですが、これまでレースを戦ってきた経験は確実に自分の財産になっているでしょう。3人を見ていると、1戦1戦落ち着きもでてきていますし、今回のレースも色々なトラブルを抱えながらも冷静なレースをしてくれたので、安心して見ていられました」。やはり、ニュルは「人」を鍛えてくれるのだ。
「監督よりもドライバーのほうが楽ですね」影山監督に聞く
開幕戦はドイツで開催のVLN1(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)に参戦するため欠席していた影山正彦監督が第2戦からチームに合流。昨年まではドライバー兼監督だったが、今年は監督業に専念している。その想いを聞いてみた。
「本音を言えば、乗る方が楽ですね(笑)。ドライバーはドライビングに専念すればいいのですが、監督はチーム全体を見なければいけません。現場はチーム代表でチーフエンジニアを兼ねる三塚(隆)がクルマのセットアップやレース戦略などを担当。僕はドライバーのコントロール役です。もちろん、三塚から相談されて、自分の案があれば提案もします。ドライバーと監督の線引きはあまり意識していません。3名のドライバーは元々FTRS(フォーミュラ・トヨタ・レーシング・スクール)で先生と生徒関係で、10年くらいの付き合いがあります。彼らのいい悪い、失敗や成功も見ています。その辺りを踏まえ、いい形で結果に導けるようにするのが僕の役目だと思っています」。
今回は波乱万丈なレースウィークとなってしまったが、気持ちを切り替えて次戦の巻き返しに期待である。