最終SSまで続いた首位攻防戦
勝田範彦が急展開なラリーを制し今季2勝目

2015年全日本ラリー選手権第3戦 若狭ラリー2015レポート

2015.06.08 全日本ラリー選手権2015

全日本初開催の新天地

全日本ラリー選手権第3戦「若狭ラリー2015」は、京都府から福井県にかけての大規模なリアス式海岸地形を形成する若狭湾に面した福井県大飯郡おおい町の総合レジャー施設「うみんぴあ大飯」を拠点に、6月5日(金)~7日(日)の日程で開催された。

全日本ラリー初開催となるこの大会は、福井県の景勝地である三方五湖を眼下に望む有料観光道路の「レインボーライン」や、総合スポーツ公園の「プレーパーク大飯」にギャラリーが観戦できるSSが設定されるなど、おおい町周辺の観光スポットに多彩な観戦ステージが用意されていた。いずれもラリーで初めて使うステージということもあり、ベテランも経験が浅いドライバーもイコールコンディションに近く、3クラスで全日本初優勝者が誕生する結果となった。

福井県大飯郡おおい町の総合レジャー施設「うみんぴあ大飯」で行われたセレモニアルスタート。
福井県大飯郡おおい町の総合レジャー施設「うみんぴあ大飯」で行われたセレモニアルスタート。

[ JN6クラス ] トラブルで奴田原/佐藤組が離脱、勝田/足立組が今季2勝目

雨のステージで好タイムを連発した奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)が初日のトップを奪ったJN6クラス。しかし2日目に突然のトラブルが奴田原を襲い、勝田範彦/足立さやか組(スバルWRX STI)が逆転優勝を果たした。

奴田原は2番手の勝田に12.6秒差をつけて迎えたSS10でターボトラブルに見舞われてリタイアとなってしまう。トップに立った勝田だが、その勝田を猛追したのが、初日を4番手で折り返した福永修/鈴木裕組(三菱ランサーエボリューションⅩ)だ。ドライ路面となった初日後半からベストタイムを連発し、SS12を終えて勝田に2.2秒差まで迫る。

だが、SS13で福永が痛恨のスピン。実は勝田もこのSSでスピンを喫し、サスペンションにダメージを与えてしまったが、最終ステージのSS14でも首位を死守し、今季2勝目を獲得した。福永は2位、3位には、タイヤ選択の失敗とマシンセッティングに苦しんだ新井敏弘/田中直哉組(スバルWRX STI)が入賞した。

JN6クラスで今季2勝目をマークした勝田範彦/足立さやか組(スバルWRX STI)。
JN6クラスで今季2勝目をマークした勝田範彦/足立さやか組(スバルWRX STI)。

[ JN5クラス ] 再逆転を果たした眞貝/漆戸組が優勝

JN5クラスは、SS1で眞貝知志/漆戸あゆみ組(アバルト500ラリーR3T)がトップに立つが、続くSS2では大倉聡/北田稔組(トヨタ86)が眞貝を抜きトップに浮上。その後も大倉はSS6までトップの座を守り切るが、SS7で眞貝が再びトップを奪い返すという一進一退の展開となった。

2日目に入ると、一気にスパートをかけた眞貝が2位以降との差を広げるが、2番手の大倉に今度は天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツGRMNターボ)が襲いかかる。2日目に一気にスパートをかけた天野は、SS12で大倉を抜き2番手に浮上。トップの眞貝はそのまま最終SSまで逃げ切り今季2勝目を挙げ、2位には天野、3位には初日の後半までトップを守った大倉がそれぞれ入賞した。

JN5クラスの接戦を制した眞貝知志/漆戸あゆみ組のアバルト500ラリーR3T。
JN5クラスの接戦を制した眞貝知志/漆戸あゆみ組のアバルト500ラリーR3T。

[ JN4クラス ] APRCで活躍した番場/亀森組が初優勝

JN4クラスは雨に見舞われた初日の前半、アジア・パシフィックラリー選手権でジュニアカップを獲得した経験を持つ番場彬/亀森隆志組(トヨタ86)と、第2戦の久万高原ラリーを制した香川秀樹/浦雅史組(ホンダ・シビックtype-R)が一進一退の攻防を見せた。

天候が回復した後半で番場が一気にスパートをかけ、香川に18.7秒差のトップで初日を折り返した。番場は、2日目に入ってもトップの座を守り切り、全日本初優勝を遂げた。

番場と同じくドライ路面となった初日の後半からペースを上げ、2日目に香川を捕らえた小濱勇希/馬場雄一組(スバルBRZ)は、今季2度目となる2位に入賞。3位にはドライ路面に苦戦した香川が入賞した。

アジア・パシフィックラリー選手権で実績のある番場彬がトヨタ86で全日本では初の優勝を飾った。
アジア・パシフィックラリー選手権で実績のある番場彬がトヨタ86で全日本では初の優勝を飾った。

[ JN3クラス ] 全日本3戦目の武田/鈴木組が初優勝

開幕戦からライバルを圧倒し2連勝を飾った岡田孝一/鶴田邦彦組(マツダ・デミオ)が、SS6でエンジントラブルに見舞われてリタイアとなったJN3クラス。

島田章/石黒祐輔(マツダ・デミオ)がトップで初日を折り返したが、2日目に入るとハイスピードSSを得意とするいとうりな/新井祐一組(マツダ・デミオ)がSS9で島田を逆転してトップに浮上する。

2009年の大井こずゑ以来となる女性ドライバーの優勝に期待がかかったが、SS12で島田が再びトップを奪い返し、さらにSS13では初日を3番手で折り返した武田雄一郎/鈴木和人組(トヨタ・ヴィッツRS)がトップに立ち、全日本初優勝を飾った。2位には島田、3位にはいとうが初の表彰台を獲得した。

トヨタ・ヴィッツRSでエントリーした武田雄一郎が、全日本初優勝を果たした。
トヨタ・ヴィッツRSでエントリーした武田雄一郎が、全日本初優勝を果たした。

[ JN2クラス ] 伏兵、中井/佐土原組が全日本初優勝

開幕戦を制した田中伸幸/藤田めぐみ組(スズキ・スイフトスポーツ)と、第2戦を制した高橋悟志/箕作裕子組(トヨタ・ヴィッツRS)の対決が注目されたJN2クラスは、田中がSS1でベストタイムをマークし、好スタートを切る。

しかし、SS2では中井育真/佐土原慶一組(マツダ・デミオ)がベストタイムをマークしてトップに浮上。その後も中井は雨のステージで次々と好タイムをマークして田中とのタイム差を広げていく。ドライ路面となった初日の後半からは田中が追い上げるが、わずか0.4秒差で中井が初日トップの座を守り切る。

2日目はドライ路面で速い田中が中井を逆転することが予想されたが、逆に中井が田中とのタイム差を広げ、自身初となる全日本優勝を獲得した。2位には田中、3位には2日目に高橋を逆転した須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞した。

ベテランの田中伸幸を抑えて、マツダ・デミオをドライブする中井育真が全日本初優勝。
ベテランの田中伸幸を抑えて、マツダ・デミオをドライブする中井育真が全日本初優勝。

[ JN1クラス ] JN5トップに迫る速さをみせた中村/古川組

第2戦は出場台数が少ないためにクラス不成立となったJN1クラスは、今回5台がエントリーし、今シーズン2回目のクラス成立となった。

ラリーは、昨年すべてのターマック(舗装路)戦を制した中村晃規/古川智崇組と、開幕戦優勝の松田保夫/杉原慶彦組のマツダRX-8同士の一騎打ちとなったが、持ち前の速さに磨きをかけてきた中村が、2日間すべてのSSでベストタイムをマーク。

SS12では土手にフロント左側をヒットしてヘッドライト周辺とフロント左フェンダーを大きく破損させてしまい、あわやリタイアというアクシデントもあったが、最終的には松田に6分以上の大差をつけ、今季初優勝を飾った。

RX-8同士の戦いとなったJN1クラスは中村晃規/古川智崇組が今季初優勝を挙げた。
RX-8同士の戦いとなったJN1クラスは中村晃規/古川智崇組が今季初優勝を挙げた。

トップ争いをサポートしたTOYOTA GAZOO Racing社員チーム

「人を鍛え、クルマを鍛える」を目標に、社員チームとして全日本ラリー選手権に挑戦しているTeam TOYOTA GAZOO Racing。同チームのトヨタ86は、ここ若狭ラリーで初日にトップを奪う快走をみせ、2日目はライバルの逆転を許したものの、第2戦に続いて3位表彰台を獲得する活躍を見せた。

ドライバーを務める大倉聡は、「今回のラリーは、サービスを務めるトヨタの社員チームの皆さんが、サービスに戻るたびにマシンを完璧な状態に整備してくれ、本当に心強かったです。できることなら、トップのままゴールしたかったのですが、それは僕の技術が至らないということでもあるので、いつかきっと期待に応えられるように頑張りたいと思いました」と、チームに感謝するとともにクラス優勝へ意欲をみせた。

チーフの豊岡悟志は、「開幕戦は、正直なところワケが分からないままという状態でしたが、第2戦でラリーの流れを掴むことができ、第3戦はその経験値をしっかりと積み上げることができたと思います。特に今回は、ドライバーの大倉さんがラリー前にサスペンションのセッティングやLSDのセッティングの変更をリクエストしてきたんです。要するに、開幕戦と第2戦は私たちがサービスの経験を重ねるためのラリーでしたが、第3戦はドライバーが勝負に出たラリーでもあったということです。実際に優勝争いを展開するなかでサービスを行うという、今まで以上に緊張感があるラリーでしたが、そのなかでしっかりと自分たちの仕事をできたということは自信にも繋がりますし、モチベーションもさらに上がりました。またひとつ、違う入り口に来たというようなラリーでしたね」と、メカニックとしてラリーを戦う手応えを感じていた。

第4戦からは、ラリーカーにとってはさらにハードなグラベルラリーが続く。ターマックラリー以上に、短い時間でラリーカーを修復しなければならないシーンも増えるはずだ。豊岡チーフは、「グラベルラリーも楽しみですね。これまでの3戦でまだ経験していないような場面も、当然あると思います。逆に、それが楽しみにも感じるようになってきました」と、力強く語った。

  • 初日にトップを奪う速さを見せたTOYOTA GAZOO Racing 86。第2戦に続く2位表彰台を獲得した。
    初日にトップを奪う速さを見せたTOYOTA GAZOO Racing 86。第2戦に続く2位表彰台を獲得した。
  • 限られた時間のなかで必死にラリーカーを整備するTeam TOYOTA GAZOO Racingのメカニックたち。
    限られた時間のなかで必死にラリーカーを整備するTeam TOYOTA GAZOO Racingのメカニックたち。
  • TOYOTA GAZOO Racing 86のドライバーを務めた大倉聡(左)とコ・ドライバーの北田稔(右)。
    TOYOTA GAZOO Racing 86のドライバーを務めた大倉聡(左)とコ・ドライバーの北田稔(右)。

クラス別順位結果(上位3クルー)

class - JN-6
1位 ドライバー/コ・ドライバー
勝田 範彦/足立 さやか
スバル・インプレッサ
2位 ドライバー/コ・ドライバー
福永 修/鈴木 裕
三菱ランサーエボリューションX
3位 ドライバー/コ・ドライバー
新井 敏弘/田中 直哉
スバル・インプレッサ
class - JN-5
1位 ドライバー/コ・ドライバー
眞貝 知志/漆戸 あゆみ
アバルト500ラリーR3T
2位 ドライバー/コ・ドライバー
天野 智之/井上 裕紀子
トヨタ・ヴィッツGRMNターボ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
大倉 聡/北田 稔
トヨタ86
class - JN-4
1位 ドライバー/コ・ドライバー
番場 彬/亀森 隆志
トヨタ86
2位 ドライバー/コ・ドライバー
小濱 勇希/馬場 雄一
スバル・BRZ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
香川 秀樹/浦 雅史
ホンダ・シビックtype-R
class - JN-3
1位 ドライバー/コ・ドライバー
武田 雄一郎/鈴木 和人
トヨタ・ヴィッツRS
2位 ドライバー/コ・ドライバー
島田 章/石黒 祐輔
マツダ・デミオ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
いとうりな/新井 祐一
マツダ・デミオ
class - JN-2
1位 ドライバー/コ・ドライバー
中井 育真/佐土原 慶一
マツダ・デミオ
2位 ドライバー/コ・ドライバー
田中 伸幸/藤田 めぐみ
スズキ・スイフトスポーツ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
須藤 浩志/新井 正和
スズキ・スイフトスポーツ
class - JN-1
1位 ドライバー/コ・ドライバー
中村 晃規/古川 智崇
マツダ・RX-8
2位 ドライバー/コ・ドライバー
松田 保夫/杉原 慶彦
マツダ・RX-8
   
 
 

全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。