勝敗を決したタイヤ戦略
地元群馬の新井敏弘が逆転優勝

全日本ラリー選手権第6戦 モントレー2015 in 嬬恋 レポート

2015.08.31 全日本ラリー選手権2015

全日雨に見舞われた伝統のモントレー

全日本ラリー選手権第6戦「モントレー 2015 in 嬬恋」が、8月28日(金)〜30日(日)、群馬県吾妻郡嬬恋村のスキーリゾート「パルコールつま恋リゾートホテル」を拠点に開催された。嬬恋村はリゾート地として有名な軽井沢の北に位置し、高原キャベツの産地としても有名だ。ラリーが盛んな群馬県で行われる「モントレー」は今年で23回目を迎える伝統ある一戦で、嬬恋村での開催は昨年に続いて2回目となる。そして、第4戦、第5戦と続いたグラベル(未舗装路)ラリーから趣を変え、3戦ぶりのターマック(舗装路)ラリーとなる。

昨年の大会ではゲリラ豪雨に見舞われリタイアが続出。それを受け今年はSタイヤの装着を禁止し、全クラスとも市販ラジアルタイヤ、またはラリータイヤの装着という、通常と異なるタイヤレギュレーションが実施された。ラリーは2日間とも雨になり、このレギュレーションと難しいコンディションの中、選手たちは難しいタイヤ選択を迫られるとともに、場所によっては視界を奪われる豪雨もあり、大荒れの展開となった。

2日間あいにくの天気だったにもかかわらず、ラリーパークには多くのギャラリーが訪れた。
2日間あいにくの天気だったにもかかわらず、ラリーパークには多くのギャラリーが訪れた。

[ JN6クラス ] 新井/田中組、タイヤ戦略が功を奏し逆転優勝

早朝から雨が降り続き、悪天候の中で幕を開けたSS1と続くSS2では奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションX)がベストタイムを奪取した。2番手に新井敏弘/田中直哉組(スバルWRX STI)がつけ、ヨコハマタイヤ勢がラリーをリードする。しかし雨が小降りとなったSS3では勝田範彦/石田裕一組(スバルWRX STI)がトップ、福永修/鈴木裕組(三菱ランサーエボリューションⅩ)が2番手につけ、ダンロップタイヤ勢が追い上げる。SS4でベストタイムをマークした福永/鈴木組はその後もSS6から5本連続ベストタイムを奪い、初日トップに立った。2位は勝田/石田組、3位は奴田原/佐藤組、4位に新井/田中組で初日を終える。

前日以上に雨脚が強くなった2日目、オープニングのSS11でトップの福永/鈴木組が痛恨のコースアウトを喫し、波乱のラリーは幕を開けた。一方、逆転優勝を狙う新井/田中組は、スタート直前のサービスでヘビーウエットとなった路面コンディションに合わせてラリータイヤに交換。そのタイヤ戦略が見事に当たり、SS12で一気にトップに立つとそのまま首位を守り切り、今季4勝目を飾った。2位は奴田原/佐藤組、3位には勝田/石田組が入った。

JN6クラスは2日目にラリータイヤを装着した新井敏弘/田中直哉組が逆転で今季4勝目を飾った。
JN6クラスは2日目にラリータイヤを装着した新井敏弘/田中直哉組が逆転で今季4勝目を飾った。

[ JN5クラス ] ヴィッツGRMNターボが全日本初勝利

グラベルラリーをスキップしていた柳澤宏至/中原祥雅組のプジョー208GTiや、眞貝知志/漆戸あゆみ組のアバルト500ラリーR3Tなど、輸入車勢が3戦ぶりに顔を揃え、JN5クラスは再び大混戦となった。SS1で柳澤/中原組がトップを奪いラリーをリードするが、雨が小降りになると眞貝/漆戸組が一気にペースを上げてSS6で柳澤/中原組を逆転した。初日は柳澤/中原組に16.9秒差をつけて眞貝/漆戸組がトップ、天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツGRMNターボ)が3位で終える。2日目最初のSS11、逆転を狙って勝負に出た柳澤/中原組がスピンして横転、リタイアを喫する。波乱は続き、トップを行く眞貝/漆戸組を、ラリータイヤを選択し追撃する天野/井上組がSS17で逆転し今季初優勝を飾った。

JN5クラスはヴィッツGRMNターボの天野智之/井上裕紀子組が最終SSで逆転優勝。
JN5クラスはヴィッツGRMNターボの天野智之/井上裕紀子組が最終SSで逆転優勝。

[ JN4クラス ] 諏訪姫PLUMレーシングが初優勝

2013年にJN3クラス(当時)でトヨタ86に初の全日本タイトルをもたらした横尾芳則が、JN4クラスに諏訪姫PLUMレーシングから初参戦。17SS中14SSでベストタイムを奪うという圧巻の走りで勝利を飾った。2012年に当時スポンサーとして全日本ラリーに初参戦した諏訪姫PLUMレーシングは、今回念願のドライバー、コ・ドライバー、チームともに“オール長野”で挑み、嬉しい初優勝を獲得した。2日目のヘビーウエット路面で好タイムを連発した番場彬/亀森隆志組(トヨタ86)が、最終ステージで石川昌平/石川恭啓組(スバルBRZ)を逆転し2位に上がった。

JN4クラスは横尾芳則/渡邉晴子組のトヨタ86が2位以下に54.7秒の大差をつけて優勝した。
JN4クラスは横尾芳則/渡邉晴子組のトヨタ86が2位以下に54.7秒の大差をつけて優勝した。

[ JN3クラス ] 岡田孝一/大久保叡組が今季3勝目をマーク

JN3クラスは初日、SS1は戸塚和幸/木村悟士組(トヨタ・ヴィッツRS)がトップタイムを奪うも、SS2で鷹野健太郎/尼子祥一組(マツダ・デミオ)が逆転する。2ループ目になると岡田孝一/大久保叡組(マツダ・デミオ)がベースを上げ、SS6でトップを奪うと、2日目も首位を譲ることなく今季3勝目を飾った。2日目にはラリータイヤを装着し、SS11、15でベストタイムを奪った鷹野/尼子組が巻き返し、戸塚/木村組を逆転して2位に入った。

JN3クラスは岡田孝一/大久保叡組が優勝。岡田は第2戦以来となる今季3勝目。
JN3クラスは岡田孝一/大久保叡組が優勝。岡田は第2戦以来となる今季3勝目。

[ JN2クラス ] 須藤浩志/新井正和組が今季初優勝

JN2クラスは初日トップの須藤浩志/新井正和組(スズキ・スイフトスポーツ)が、2日目もトップを守り切って優勝。初日を2位で折り返した田中伸幸/藤田めぐみ組(スズキ・スイフトスポーツ)が、SS12のグラベル区間でエンジントラブルに見舞われリタイアを喫し、初日3位の鈴木尚/山岸典将組(スズキ・スイフトスポーツ)が2位に上がり、スマッシュモータースポーツの1−2フィニッシュとなった。また3位には中西昌人/廣島真組(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞し、残り3戦の結果次第では逆転チャンピオンの可能性が出てきた。

JN2クラスは須藤浩志/新井正和組のスズキ・スイフトスポーツが今季初優勝を飾った。
JN2クラスは須藤浩志/新井正和組のスズキ・スイフトスポーツが今季初優勝を飾った。

多くの観客で賑わったモントレーラリーパーク
TOYOTA GAZOO RacingはPIUSキッズラリーチャレンジを開催!

ラリーの拠点となった「パルコールつま恋リゾート」には、恒例の「モントレーラリーパーク」が設置された。地元嬬恋村から来場者に1日2000個のキャベツがプレゼントされたほか、自動車関連企業のブースや地元の特産ブース、飲食ブースなどが立ち並び、2日間ともあいにくの天気だったにもかかわらず、多くのギャラリーがラリーパーク会場に訪れた。

TOYOTA GAZOO Racingブースでは、組立て式電動キットカー「PIUS」の“組み立て”と“走行”の両方が体験できる「キッズラリーチャレンジ」を開催し、子供たちに人気を集めた。この「PIUS」は、D-N-Rのシフトスイッチ、ウインカー、サイドブレーキ、前照灯などを備え、足まわりは前輪にダブルウイッシュボーン、後輪にリジッドアクスルを採用、ステアリングはラックアンドピニオン式という、本格的な「自動車」だ。雨天の場合は走行できなかったものの、組み立てだけでも楽しめるため、子供たちが目をキラキラさせてチャレンジしていた。

またブースではトヨタの新旧ラリー活動の象徴であるセリカ ST165と、昨年の新城ラリーで00カーを務めたトヨタの燃料電池車(FCV)、MIRAIのラリーカーを展示し、ギャラリーの注目を集めた。その他、来場者に「I Love Cars! バッグ」を配布、各日先着250名にフェイスペイントを実施するなど、ラリーイベントを側面から盛り上げた。

  • 全日本ダートトライアルチャンピオンの谷田川敏幸選手らがデモランを行い、イベントを盛り上げた。
    全日本ダートトライアルチャンピオンの谷田川敏幸選手らがデモランを行い、イベントを盛り上げた。
  • 組立て式電動キットカー「PIUS」の組み立てと走行を体験できるキッズラリーチャレンジは子どもたちの人気を集めた。
    組立て式電動キットカー「PIUS」の組み立てと走行を体験できるキッズラリーチャレンジは子どもたちの人気を集めた。
  • かつてWRCで活躍したトヨタ・セリカGT- FOUR(ST165)の展示はギャラリーの注目の的。
    かつてWRCで活躍したトヨタ・セリカGT- FOUR(ST165)の展示はギャラリーの注目の的。

クラス別順位結果(上位3クルー)

class - JN-6
1位 ドライバー/コ・ドライバー
新井 敏弘/田中 直哉
スバルWRX STI
2位 ドライバー/コ・ドライバー
奴田原 文雄/佐藤 忠宜
三菱ランサーエボリューションX
3位 ドライバー/コ・ドライバー
勝田 範彦/石田 裕一
スバルWRX STI
class - JN-5
1位 ドライバー/コ・ドライバー
天野 智之/井上 裕紀子
トヨタ・ヴィッツGRMNターボ
2位 ドライバー/コ・ドライバー
眞貝 知志/漆戸 あゆみ
アバルト500ラリーR3T
3位 ドライバー/コ・ドライバー
石田 雅之/遠山 裕美子
ホンダ・インテグラ
class - JN-4
1位 ドライバー/コ・ドライバー
横尾 芳則/渡邉 晴子
トヨタ86
2位 ドライバー/コ・ドライバー
番場 彬/亀森 隆志
トヨタ86
3位 ドライバー/コ・ドライバー
石川 昌平/石川 恭啓
スバルBRZ
class - JN-3
1位 ドライバー/コ・ドライバー
岡田 孝一/大久保 叡
マツダ・デミオ
2位 ドライバー/コ・ドライバー
鷹野 健太郎/尼子 祥一
マツダ・デミオ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
戸塚 和幸/木村 悟士
トヨタ・ヴィッツ
class - JN-2
1位 ドライバー/コ・ドライバー
須藤 浩志/新井 正和
スズキ・スイフトスポーツ
2位 ドライバー/コ・ドライバー
鈴木 尚/山岸 典将
スズキ・スイフトスポーツ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
中西 昌人/廣島 真
スズキ・スイフトスポーツ

※JN1はクラス不成立。全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。