Vol06:アルテッツァオーナーとの交流で蘇る 今語る、味づくりの日々

富士スピードウェイで開催されたアルテッツァオーナーによる交流イベントを、トヨタのマスターテストドライバー・成瀬弘が訪れた。曇り空の下、パドックへ到着すると、そこにはピカピカに磨きあがられた200台近いアルテッツァの晴れやかな姿があった。開発ドライバーとして産みの苦しみを味わった成瀬の、我が子たちとの再会に密着した。

アルテッツァの日



オーナーズクラブとは、同じメーカーあるいは車種を所有する愛好家たちによる集まりで、世界中に多種多様なスタイルで存在する。クラブのウェブサイトで愛車の写真やカスタマイズのポイントを自慢する、ブログやBBSで情報を交換する、あるいはオリジナルステッカーを貼って一体感を味わうなど楽しみ方はいろいろあるが、一堂に会してクルマを見せ合い、語り合うことが一番の楽しみと言う声が多い。その会場がクルマ好きの聖地であるサーキットとなれば、その喜びは容易に想像ができる。2007年、アルテッツァを駆ってドイツの伝統的な耐久レース「ニュルブルクリンク24時間レース」に挑戦したGAZOO Racingは、アルテッツァの開発テストを担当したマスターテストドライバーの成瀬弘と共に、初めてアルテッツァオーナーたちの交流イベントを訪れた。
A.O.C(アルテッツァ・オーナーズ・クラブ)が主催する「Day Of Altezza」は昨年に続いて2回目の開催。関東、中部、関西を中心に各地から200台近くが参加、早朝から富士スピードウェイのパドックを埋め尽くした。愛車でのサーキット走行やレーサーによるデモンストレーション走行、ドレスアップコンテストはもちろんのこと、参加者同士の語り合いが夕方5時の閉幕までそこかしこで行われ、GAZOO Racingが目指す「持つ楽しさ」、「走る楽しさ」、「語り合う楽しさ」の全てが見事に融合した素敵なムードのイベントだった。
トヨタテストドライバー総勢300人の頂点に立つマスターテストドライバー・成瀬弘は、トヨタ2000GT、AE86、スープラを始め、歴史に残る数々のスポーツカーの開発を担当してきたが、アルテッツァは中でも思い入れの厚いクルマであると言う。そんな成瀬にとって、今回のイベント訪問は、苦楽を共にした我が子たちとの久しぶりの再会。到着後、パドックにずらりと整列したアルテッツァを感慨深げに眺め、開会式では少し照れくさそうに挨拶した。「随分前に販売が終了したアルテッツァをこんなにもたくさんの皆さんが大事に乗られていることを、開発を担当したドライバーとして驚き、本当に嬉しく思います。ありがとう」。そして、ピカピカに磨きこまれたアルテッツァとオーナーの笑顔に触れた成瀬は、開発当時の思い出を堰を切ったかのように語り始めた。
[2009年2月 取材]