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ドライバーズチャンピオンを獲得した2人に聞く
〜ル・マンの惜敗から、世界チャンピオンへ〜

WEC 2014年 ドライバーズチャンピオンを獲得したアンソニー・デビッドソンとセバスチャン・ブエミ

バーレーン6時間レースでFIA世界耐久選手権(WEC)の年間ドライバーズチャンピオンを獲得した、トヨタ・レーシングのTS040 HYBRID 8号車ドライバー、アンソニー・デビッドソンとセバスチャン・ブエミの二人に優勝した4レースを含め今シーズンの戦いを振り返ってもらいました。

世界チャンピオンとなって、どんな感じですか?

WEC 2014年 ドライバーズチャンピオンを獲得を喜ぶトヨタ・レーシングの面々 アンソニー・デビッドソン(以下、デビッドソン):  まだあまり実感がありません。私自身、ずっとスポーツカーレースのトップドライバーになりたいとは思っていましたが、やっとそれが叶いました。まだ信じられません。1995年にカートで初優勝して以来、自分の長いドライバー人生の中で、初めて獲得した大きなチャンピオンタイトルです。これまで世界チャンピオンなんて獲ったことがないので、本当に嬉しいです。今年は素晴らしい年になりましたが、まだブラジル(サンパウロ6時間レース)の仕事が残っています。次戦ではチームのマニュファクチャラーズタイトルを獲るためにプッシュしていきます。

セバスチャン・ブエミ(以下、ブエミ): 私のキャリアの中でも最高の瞬間のひとつとなりました。世界チャンピオンという肩書きは誰にも奪われることなく、永遠に私のものです。それだけに本当に素晴らしい気分ですが、あの瞬間は実感が湧きませんでした。世界チャンピオン獲得というのは非常に困難なことであり、素晴らしい偉業です。タイトル獲得にはシーズンを通して真に強いクルマが必要であり、それを与えてくれたチームに感謝しています。タイトル獲得は我々にとって本当に特別なことです。

WECの戦いは非常に厳しいですが、それがタイトルを特別なものにしていますか?

デビッドソン:  何においても、世界チャンピオンになるというのは特別なことです。ましてや、アウディやポルシェと真剣勝負でしたから。誰もがこのライバル達のスポーツカーレースにおける歴史とその偉業を知っています。我々が世界チャンピオンとしてここに立っているというのは、驚くべきことだと思います。これは、我々のチームが、今年最良かつ最速のクルマを作ったという証です。

ブエミ: アウディとポルシェという強力なライバルと競い合ってのタイトル獲得ですから、素晴らしいのは当然です。それが容易でないことは間違いなく、多くの意味を持つ特別なタイトル獲得と言えます。これから我々はブラジルでの最終戦に臨み、マニュファクチャラーズタイトルも勝ち取ることを望んでいます。最終戦でも再び競争力のあるTS040 HYBRIDで戦えると思っています。

バーレーンのレースについて教えてください

デビッドソン: レースには勝ちたかったですね。勝ちたかったですが、それは叶いませんでした。問題が起きたとき、そんなに気にせず、あまり驚きもしなかったです。この類のトラブルのひとつだろう、くらいにしか思っていませんでした。チームとメカニックが我々のTS040 HYBRIDを修復し、コースに送り返してくれることを信じていました。今年一度もなかったトラブルで、トップ争いからは離脱することになりましたが、我々の速さを見せることは出来たと思います。

ブエミ: オルタネーターのトラブルに見舞われるまでは、我々は1-2で走行しており、勝てると考えていました。トラブルの後、何が起こるかわからず不安でした。我々は選手権のライバルであるアウディ2号車だけを見ていました。安泰に見えても、絶対はありません。我々がリタイアに追い込まれ、彼らがタイトル争いを続けるのに必要なポイントを獲得するかもしれないと心配していました。我々は自分の為すべきことをして最後までレースを走り抜き、僅かではありますがポイントも獲得出来ました。

今シーズンの始めはどんな期待をしていましたか?

TS040 HYBRID 8号車と争うポルシェ 20号車 ーズンが進むにつれ、ポルシェはどんどん強さを増していった デビッドソン:  今年クルマに乗るまでは、新たな規則もあって、アウディよりも競争力があることを期待はしていましたが、必ずしも彼らより強いとはと思っていませんでした。最初の数レースでTS040 HYBRIDという今季最速のクルマに乗っているという事実を知って、嬉しい驚きでした。ポルシェについては何もわかりませんでしたが、シーズンが進むにつれ、彼らはどんどん強さを増していきました。

ブエミ: 期待と目標とがありました。目標はもちろんル・マン24時間レースでの勝利と、世界チャンピオン獲得でしたが、期待はその時の自分たちのレベルや状況によって変わるものです。2秒もライバルよりペースが遅い状況で勝利を期待するのは無謀です。TS040 HYBRIDの競争力の高さを目にして、目標が明確に期待に変わりました。我々はその目標が実現出来るTS040 HYBRIDを持っていることがわかったからです。

その頃、世界選手権のタイトルを獲得する戦いを予想しましたか?

デビッドソン: いいえ。誰もそんな期待をしていなかったでしょう。世界選手権タイトル獲得を考える前は、我々の最大の目標は、シーズン最大のレース、ル・マン24時間の優勝でしたから。

ブエミ: 我々は上位争いが出来るとは考えていましたが、その時点では、タイトル獲得は厳しい道のりだと思っていました。

今シーズンで最も大変だったのは何ですか?

デビッドソン: 最大の挑戦は、恐らく選手権の首位を守るということでした。カート時代以来、何年もそういう経験はなかったので。セブリング12時間やフォーミュラ・フォードといったビッグレースや、単独開催のレースで勝ったことはありますが、選手権のシリーズで勝つというのは異なる挑戦でした。ずっと先頭を走り続ける必要がありますからね。

ブエミ: 最大の挑戦はいつでも、与えられたパッケージから最大のパフォーマンスを引き出すことです。TS040 HYBRIDのように素晴らしいクルマを与えられることは、同時に最高の結果を得なくてはならないというプレッシャーも受けます。能力を最大限に引き出せなかったという意味で、ル・マン24時間レースでの結果は本当に残念なものでした。今シーズンこれまでの7戦で5勝を挙げているというのは良い結果です。難しいのは、常にクルマの最高性能を確実に引き出し続けていくことです。

ル・マンの後の長い夏季休暇の間、何を考えていましたか?

雨のサルト・サーキットを走行するTS040 HYBRID 8号車 デビッドソン:  アクシデントの後、8号車をコースに復帰させた直後に、私の目標は切り替わりました。あの瞬間から、私は選手権タイトル獲得に集中することにしました。この機会に我々は何をすべきかが明確になり、それから世界選手権で勝つことに専念して来ました。

ブエミ: 正直なところ、難しい期間でした。ずっとル・マンのために準備をしてきて、その目標が達成出来なかった時、どうすれば良いのかわかりませんでした。ル・マンの後だけでなく、レース中、序盤のアクシデントの後ですら、世界選手権のことを考えていました。ル・マンで勝てなかったら、世界選手権を取るしかないと。

スパでの優勝から富士のワン・ツーフィニッシュまで、5か月ありました。
表彰台の頂点に再び立つのは、どんな気分ですか?

2人とも富士での1-2フィニッシュは素晴らしかったと語った デビッドソン:  少し前になりますが、運転するだけでなく、表彰台の真ん中に立つこと、それをトヨタのホームでの大勢のファンやトヨタの仲間達の前で、かつ、ワン・ツーフィニッシュを達成するというのはとても素晴らしいことでした。初めて、自分のチームの圧倒的な強さを感じました。富士は、我々のTS040 HYBRIDの真の速さと、チームの誰もが完璧に仕事をこなすことを示せた最高のレースでした。実に素晴らしいレースウイークでした。

ブエミ: まず、富士での勝利は格別でした。ホームの観客の前で1-2フィニッシュを果たせたことは素晴らしく、チームにとっての3連覇も本当に最高でした。オースティンでは雨が降るまでレースをリードし、最速だったのに勝てませんでした。それだけに、富士では我々が勝てるということを確実に証明したかったのです。富士での勝利は我々に自信を取り戻させてくれました。

シーズンを通じて、チームはどのようにTS040 HYBRIDを開発してきましたか?

デビッドソン: 長い話になります。最初のテストで覚えているのは、選手権を戦えるようなクルマになるのかと、心配していたことです。しかしチームは、大変なパフォーマンスを引き出してくれました。シルバーストーンの後ですら、性能向上が進んでいったのに驚いたほどです。我々は規則をしっかり理解し、コース上ではいつもクルマを理解することに努めてきました。今我々が持っている戦闘力は、我々がどれだけクルマを掌握しているかの証です。

ブエミ: 今年はル・マン24時間レースとWECの世界タイトル両方を目標として2台体制でフルに臨んだ最初の年でした。2台での参戦は目標達成への大きな変化をもたらしました。あらゆる面で少しずつ改良が進みました。我々自身は大きな変化はありませんが、間違いなく進歩を遂げました。