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Features Ralf in Japn
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ラルフ来日密着記
2005.02.25(金) - 28(月)
2月25日、27日、28日と日本でのイベントに参加したラルフは、各会場で大きな歓迎と注目を受けた。

トヨタは日本のF1チームなんだと改めて実感するのは、遠くオーストラリアで開幕戦を迎えようというのに、東京にいてドライバーやチーム関係者の生の声を聞く機会に恵まれる瞬間だ。トヨタはスペイン・バルセロナで開幕戦に向けて新しい空力パッケージを試した。新加入のラルフ・シューマッハーもテストに参加して最新バージョンの感触を確かめている。

最後のテストを終えたら、一路オーストラリア・メルボルンへ! というのがヨーロッパに拠点を置く他チームの日常だろうが、トヨタは違う。いや、今回に関しては“ラルフは違う”と言い換えた方がいいだろうか。「ポイントを獲得していいカタチでシーズンのスタートを切りたい」と意気込む29歳のドイツ人ドライバーは、トヨタの一員として初めて日本の地を踏んだ。

●2月25日(金)
開幕戦の公式プログラムが始まるちょうど1週間前、ラルフは成田空港に降り立った。その足で都内のホテルへ。荷を解いたラルフはくつろぐ間もなく身支度を整え、プロモーション活動に励む。この日は、トヨタ自動車の2005年モータースポーツ活動計画が発表された。

服部哲夫専務取締役のあいさつの後、壇上に立った冨田務TMG会長は、「参戦3年目の昨シーズンは決して満足のいくものではありませんでした」としながらも、風洞実験施設を軸に大規模な改革を断行し、開発力の強化に取り組んできたことを明らかにした。そうした効果が存分に反映されたマシンがTF105。「毎戦手応えを感じるレースをし、結果としてコンスタントに得点を獲得する。そして1戦でも早く表彰台を」と力強く語り、ステージを後にした。

ここからがラルフの出番。日本での初仕事である。デニムパンツにチームウエアを羽織ったラルフは、軽快な足取りでステージの中央に進み出ると、「こんにちは。ラルフ・シューマッハーです」と自己紹介をし、続けて来場者にメッセージを送った。

「覚えている方もいらっしゃると思いますが、僕のキャリアは1996年に日本でレースをすることから始まりました。トヨタのプロジェクトに参加することができて本当にうれしく思っています。力を合わせれば大きな目標を達成できると自信を持っています。時間はかかると思いますが応援よろしくお願いします」。続いて行なわれた質疑応答でもラルフに質問が集中。チームの居心地は? の問い掛けには、「素晴らしいチームだ」と即答。「僕はF1に参戦して9年目になるから、ひと晩で劇的にいいチームが出来上がるとは思っていない。だけど、トヨタチームのみんなはプロフェッショナルだし、テストを順調に進めることができている」と続け、居心地に満足している様子をうかがわせた。
「テストでは他チームの実力が分からないので、早くメルボルンで確かめたい」と開幕戦を待ち望むラルフは、次のように語って日本での初イベントを締めくくった。

「これまでの僕の経験を照らし合わせれば、TF105はいい状態でシーズンに臨めるはず。予定どおりに開発が進めば、シーズン中盤にはライバル勢といい勝負をしているはずだ」

ステージに登場するラルフ。ひときわ大きな歓声と拍手で迎えられた。   服部専務取締役(左)、冨田TMG会長(右)と握手。会場には多くの報道陣が集まった。   海外からの報道陣のインタビューに答えるラルフ。それだけ注目が高いということだ。

●2月27日(日)
翌26日土曜日は終日オフ。トレーニングなどをして過ごしたラルフは、日曜日には都内を精力的に動き回り、ファンとの交流を楽しんだ。

都内のホテルからレインボーブリッジを渡ってお台場にやって来たラルフは「今まで、通り過ぎたことはあったけど、実際に足を踏み入れるのは初めて」と興奮気味。「東京は10年前と変わらず大きな都市だね。以前とはずいぶん変わって、初めて見るビルなんかもあった。居心地がいいから気に入っているよ。今度時間があったらゆっくり散歩したいね」とコメントした。

チームウエアに着替え、気持ちを切り替えたラルフは、ヒストリーガレージに。トヨタF1カーの前後ウイングやエンジンカウルをはじめ、数々レース関連アイテムに囲まれたスペースは、ファンとの親交を深めるにはうってつけの場所。ここでは公式ファンクラブ(team TOYOTA)のミーティングが行なわれたのである。

抽選に当たった幸運なメンバーがステージの間近に座り、ラルフの一挙手一投足に注目。開幕を目前に控えたライブなコメントに耳を傾けた。ファンが直接ラルフに質問をぶつけることができるのは、親密なムードで満たされたイベントならではの趣向だろう。ファンの期待どおりの回答ができない場合は「期待どおりの答えがでなくてごめんなさい」と付け加えて相手を思いやるラルフ。ときには大胆な、ときには難しい質問に、表情やジェスチャーで反応し、たびたび会場を沸かせた。

質問コーナーの後は、ファンクラブのメンバーとグループで記念撮影。撮影を終えたメンバーは、同席した木下美明モータースポーツ部部長兼TMG副社長、高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)を交えた談笑に花を咲かせた。最後にラルフは、「日本に帰ってきて多くのファンに会えてうれしい。結果を期待してくれていると思うけど、今年はドライバーがふたりとも新しくなったし、クルマも新しい。F1はすぐに勝てるほど甘い世界でないことは分かってくれていると思う。でも、僕らはチーム一丸となってがんばる。今度は鈴鹿で会えることを楽しみにしているよ。応援よろしく」と語り、メンバーに手を振った。

ランチ(寿司だったというウワサ)を済ませたラルフは、トヨタ・シティ・ショウケース1階MEGAステージで行なわれたトークショーに出演。ステージの周囲はトークショーの始まる何時間も前から十重二十重の人垣が巡っていた。関係者によれば、トークショーの始まりは午後1時だというのに、朝7時の時点で30人の熱心なファンが詰めかけていたそう。500枚用意した整理券は配布開始から10分でなくなったため、急きょ追加で250枚ほどを用意したとか。

というような盛況ぶりだったから、会場後方の2階に現れたラルフがエスカレーターを使ってゆっくり降りてくると、歓声がどっと沸いたのもうなずける。

数多くの質問に答えたラルフだったが、耳より情報をひとつ紹介しておこう。今シーズンから使用できるタイヤが1セットだけになるが、この点について「温存しなければならないからタイヤは重要。スタート直後は燃料を積んでいるので、タイヤを労らなければいけない。もし、タイヤメーカーが用意したコンパウンドが柔らかければ、ブリスターが発生するし、スピンするシーンも多くなるだろう。見ている人にとっては面白いだろうね」と、自らの考えを語った。

MEGA WEBでのトークショーを終えたラルフは、池袋のアムラックス東京に移動。メガウェブでの演出と同様にエスカレーターを使ってドラマチックに現れると、大歓声が揚がった(『らるふ~っ』という黄色い歓声を多数確認)。自分の腰ほどの背丈しかない女の子からプレゼントを受け取ると、「僕のファンの年齢層もずいぶん低くなってきたみたい」とジョークを飛ばし、会場の笑いを誘った。

チームの印象や今シーズンの抱負などを語ったラルフは最後に、「温かい歓迎をありがとう。決して楽ではないシーズンが始まるが、いい成績が期待できそう。ぜひ鈴鹿で会いましょう」と語って、700名のファンに別れを告げた。

オフサイトミーティングではラルフと緊密な時間をすごすことができた。   メガウェブではご覧のとおり、本当に多くのファンが押し寄せた。   熱気はメガウェブ以上だったアムラックスでのトークショー。
 

●2月28日(月)
この日はリニューアルの済んだ富士スピードウェイで落成披露が行なわれた。ラルフの役目はトヨタF1カーで新生富士スピードウェイの走り初めをすること。東京・新木場のヘリポートから空路サーキット入りしたラルフは、午前中に練習走行を1周済ませ、午後には無事に5ラップのデモ走行を行なった。

プログラムはスムーズに消化されたが、前々日に富士スピードウェイ周辺を襲った大雪のことを考えれば、奇蹟のような出来事だった。走行準備のためにヨーロッパからやって来たメカニックが言う。「土曜日には積雪が27?もあったんだ。コースはどこもかしこも真っ白だったよ。でも、富士スピードウェイが素晴らしい仕事をしてくれ、雪をどかしてくれた。おかげで準備は万端だよ」

F1特有の甲高いエキゾーストノートを真新しいグランドスタンドに響かせて、ラルフは1周4563mのレースコースを疾走した。目にも止まらぬ速さに見えたが、ピットで成り行きを見守っていた高橋DTCによれば、「クルージングですね。エンジン回転もリミットまで上げていません。新しいコースを楽しみながら走っているのでしょう」とのこと。

走行後、スタート/フィニッシュラインで行なわれた記念撮影を済ませたラルフは、高橋DTCと一緒に再びヘリコプターに乗り、成田空港に直行した。もちろん、開幕戦の行なわれるメルボルンに向かうためである。

貴重なオフショット。ラルフはゲストからパナソニックのデジカメを贈られてうれしそう。   イベント当日はプロモーションビデオの撮影など予定がいっぱい。   新生富士スピードウェイの走り初め。「いいコースだね」とラルフ。
 
※この記事はF1derオーストラリアGP号に掲載されたものです。

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