モナコGPを振り返る ラルフ・シューマッハー Q+A
●あなたにとってモナコは今でも特別なレースなのでしょうか?
「そうだね。でも今年のわれわれはコース上で非常に厳しい時間を過ごさなければならなかったから、何か楽しい思い出とともに記憶に残るようなレースではなかった。コース以外の点では、モナコはいつもながら滞在するのにいい場所だ。興味深い社交イベントがたくさんあるからね」
●モナコが特別なのはどんな理由からなのでしょう?
「そうだな、はじめの段階から通常より1日多いし、それに数多くのスポンサーがぜひ足を運びたいと思うレースでもある。だから通常よりも多くのさまざまなことがコースの外で行われるわけだ。1日多いということはすなわちレース以外のイベントのためにプログラムにすこしばかり余裕があるということだ。これはいいことだね。特にハードな仕事しているチームスタッフにとってはそうだろう。通常なら土曜日に向けて金曜日の夜にやらなければならないことを今回は金曜日を使ってゆっくりとできる。そのため金曜日の午後には彼らも2~3時間ほどボートを見に行ったり、周辺をすこし散策したりできるわけだ。通常のレーススケジュールの場合、彼らにそういったことはできないんだ」
●どこかいいパーティーには出席できましたか?
「インディアン・エンプレスに招待された。これは全長95メートルもあって、モナコの港で最も印象的な船のひとつだった。私の友人であるビジェイ・マリア氏が所有している船なんだけど、彼はキングフィッシャー・エアラインの会長兼CEOで、また、パナソニック・トヨタ・レーシングのスポンサーでもある」
●富裕層の人たちや有名人たちと一緒だったのですか?
「そうだね、船上にはバーニー(エクレストン)とフラビオ(ブリアトーレ)がいたし、トヨタのシニアマネージメントの人間も数多くいたよ! それからF1界以外の人たちもかなりいたね。アメリカ人のラッパー、ジェイZがいたし、(バイクの)元500cc世界チャンピオン、ミック・ドゥーハンもいた。彼はF1ファンなんだけど、彼に会えたのは良かった。それに加えて、週末の間に日本人の映画スター/歌手の木村拓哉にも会った」
●コース上では何が問題だったのでしょう?
「木曜日の一番はじめからとにかくグリップが得られなかった。モナコでいい走りをするには、このコースの特性ともいえる路面状況の変化を考慮しながら、リズムを作り上げていく必要がある。いつもなら週末を通じてタイヤのゴムが路面に乗っていくにつれてコースが走りやすくなっていくんだけど、今回はそうならなかった。モナコでグリップが得られないとなると、自信を持って走れなくなるし、ハードにプッシュすることも不可能になる。実に単純なことだよ」
●それほどまでにグリップに苦しんだ原因は何だと思いますか?
「クルマがかなり硬いような感じがして、跳ねたり滑ったりすることが多かった。ヤルノはそんななかでもなんとか走れる条件を探って、もうすこしグリップを得ていたようだ。土曜日午前中の雨のセッションではふたりとも遅くて、とにかくタイヤをうまく機能させることができなかった」
●タイヤに十分な熱を入れることができなかったということですか?
「そういう感じだったね」
●そういう場合はどのように対応するのですか? もっとキャンバー角をつけるとか?
「選択肢はいくつかあるけど、でもそれほど単純な話ではない。先週末のわれわれが感じたのは、われわれに適したコースがいくつもあるいっぽうで、モナコはそういったコースのひとつじゃない、ということだ。いつもならわれわれからかなり離されているいくつかのチームが、今回はかなり手強そうだったしね。われわれはさまざまな要素を克服していく必要がある。でもモナコを訪れるのは1年に1度だけだから、それはそんなに簡単なことじゃない。モナコのような場所はどこにもないし、それと同等の条件でテストできるコースもないからね」
●では今回はフラストレーションがたまるレースだったでしょうね?
「そうだね。予選第1セッションを通過できなかった場合、レース戦略の選択はかなり容易になる。長いスティントのために燃料を多めに搭載して最善を願うだけだ。だが私のスタートは最高とはいかず、燃料が重い他車の後ろにつくことになってしまった。スパイカーが1回目のピットストップを行うまで、ずっとその後ろを走らなければならなかった。モナコでは追い越しがほぼ不可能だしね。私は1ストップ戦略の他車よりもさらに多くの周回を重ねて、78周のうち49周目まで引っ張った。この事実からも序盤の周回で私のクルマがどれほど重かったかがわかるだろう。レース全体を通じて自分の前がクリアになることはほとんどなく、最後はヤルノの1秒後方の16位が私の精一杯だった」
●そういったレースにはどのように対処するのですか?
「すでに話した通り、モナコは1回だけの特別なレースだし、こういったレースはそういった形で考えなければならないと思う。チームは開幕からの3戦すべてでポイントを獲得しているし、われわれ全員がさらに進化するためにハードな仕事を続けている。2週間後のカナダGPの舞台となるモントリオールは、モナコとはまったく別のタイプのサーキットだ。今回よりもダウンフォースを大きく減らして走ることになるし、TF107にはあのコースのほうが適しているはずだ。そう願おうじゃないか! モントリオールは私自身、訪れるのが好きな都市だ。レース周辺の雰囲気がいいしね。チームのために好成績を残せるようベストを尽くすよ」