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Rd.7 United States Grand Prix
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新居章年リポート
2007年6月18日(月)

いつもご声援ありがとうございます。2週間連続で開催される北米ラウンドの2戦目、アメリカンモータースポーツの聖地、インディアナポリス・モータースピードウェイで行われたアメリカGPの報告をいたしましょう。

前戦カナダで右フロントサスペンションアップライト部にトラブルが起きたものの、ここインディアナポリスはモントリオールとはコースの性格が違うため、カナダと同仕様で投入となった。この2連戦ではクルマに大きな変更点はない。

●昨年、よい走りを見せたインディアナポリスへの期待
前回のカナダGPでは金曜日にヤルノ(トゥルーリ)車のアップライトにトラブルが出たため、予選までにセットアップを充分行うことができませんでした。それがレースペースにも影響してしまいました。また、表彰台を獲得したチームには、1ストップ作戦を採ったところもありますが、われわれは金曜日に2種類のタイヤでのロングラン走行もしっかりできていなかったため、軟らかい方のスーパーソフトタイヤがレースでどれくらい安定したパフォーマンスを発揮するのか、判断するのが難しかったこともギャンブルに出られなかった一因でした。いろいろな不運が重なって、残念な結果に終わったカナダGPですが、インディアナポリスは、昨年ヤルノがピットスタートから1ストップ作戦で4位を獲得したサーキット。チームメイトのラルフ(シューマッハー)も終盤ベアリングのトラブルに見舞われるまでは5位を走行しており、彼らが高パフォーマンスを発揮してくれることを楽しみに乗り込みました。


●2台そろって金曜日のプログラムを消化できたことが最大の収穫
久しぶりにトラブルのない金曜日となり、初日に行う予定だったプログラムをすべてこなすことができました。本来なら、これが当然なのでしょうが、モナコGPではガレージ2階の配水管にトラブルが出て1階が水浸しとなり、フリー走行でテレメトリーが使えないという不具合がありました。また、前回のカナダGPではアップライトが破損するという問題が出たために、セットアップが充分煮詰まらないまま予選とレースに臨まなければなりませんでした。そういう意味では、金曜日にしっかりとプログラムをこなせた今回は、すでにロングランのデータが収集できているので、土曜日の午前中に予選に向けたセッティングに集中できます。

カナダで問題が発生したアップライトは、カナダと同じ設計仕様で新品のものと、バックアップ用として設計をより強化した仕様の2種類を持って来ました。インディアナポリスにはモントリオールのような縁石の奥に高い枕木状のものはなく、走行開始と同時にアップライトにかかる荷重をチェック、問題ないことを確認し、カナダと同じ仕様のものを使用しています。

走行タイムは下位に沈んだ形となっていますが、これはニュータイヤを早めに使用したことも影響しているので、そんなに心配はしていませんでした。もちろん、両ドライバーとも初日はかなりグリップ不足に悩まされたので、土曜日以降はそこを改善したのですが、全体としては順調なグランプリ初日だったと言っていいでしょう。

●2台そろって最終ピリオドに進めなかったのは残念だが、ラルフの復調に期待

予選第2セッションでのラルフのタイムは、セッション10番手のヤルノから0.1秒も遅れていなかったものの、ちょうどそこが第1セッションへの通過のボーダーラインとなり、ラルフは12位となった。しかし、走りには復調の兆しが見えていた。
昨日に続いて、土曜日もトラブルなくフリー走行を進め、落ち着いて予選を戦うことができた点は評価したいと思います。さらに非常にタイムが接近した激しい争いとなった予選で、ヤルノが最終ピリオドに進出したことは素直に喜んでいいと思います。

ただ、今日は2人そろってトップ10に入ると期待していただけに、ラルフが最終ピリオドに進出できなかったことは残念です。特にタイムアタックでミスしたとか、渋滞に巻き込まれたわけでもないのですが、今回の予選はタイムが接近していたので、わずかなタイムロスが順位に大きく響いたのではないかと思います。第2ピリオドで脱落したといっても、ラルフの走り自体は決して悪くなく、むしろ午前中のフリー走行3回目の状態ではヤルノよりラルフのほうが調子は良く、予選ではヤルノよりも上を行くのではないかと予想していたくらいですから、彼も一時の不振からは脱出し、手応えはつかんでいると思います。予選12番手に終わりましたが、日曜日のレースでは盛り返してくれるのではないかと思っていました。

●ヤルノの6位入賞はヨーロッパラウンド後半戦へ向けて、
いい起爆剤に

2ストップを採用したチームの中では、比較的遅いタイミングとなる31周目にピットインを行った作戦はうまく機能し、スタートポジションより2つ順位を上げて3ポイントを獲得。北米ラウンドをヤルノ、ラルフともに1回ずつポイントを獲得して終えた。
暑さにも関わらず、17台が完走するというタフなレースとなった今回のアメリカGPですが、その中でヤルノが粘り強い走りを披露してくれました。スタートして12周したあたりから、タイヤにグレイニング(めくれ摩耗)が出て、グリップ不足に苦しみましたが、それはライバル勢も同様だったので、「問題ないから、ここを踏ん張れ」と担当エンジニアが檄を飛ばしてからは、落ち着いてレースを進めてくれました。われわれが選択した1回目のピットストップまでを少し長めにとる2ストップ作戦も功を奏して、ポイントを争うライバル勢との戦いを制することができました。レース終盤はテール・トゥ・ノーズのバトルとなりましたが、後方から追い上げてくるライバルたちをヤルノがよく凌いでくれたと思います。今回は、上位陣にトラブルが出るなど、運が味方したことも確かですが、スペインGP、モナコGPと無得点に終わり、チームのモチベーションを上げることができたという意味で、いいレースになったと思います。

気温35度、路面温度50度というコンディションでタイヤのグレイニングとも戦いながらの走行となったヤルノ。ソフト → ソフト → ミディアムという順にタイヤを使用し、ライバル勢を抑えてポイント圏内の順位を守りきってゴールした。

一方、ラルフはスタート直後の1コーナーでブレーキがロックしてしまい、他車と接触。左フロントサスペンションにダメージを負って、1コーナーでリタイアに終わりました。前日の予選では4戦ぶりに第2ピリオドに進出し、惜しくも最終ピリオド進出はならなかったものの、本来の速さが戻って来ており、レースに期待していただけに残念です。しかし 次につながるグランプリとなったのではないでしょうか。

まだトップチームと差はありますが、北米ラウンドで得た4ポイントをいいお土産にして、ヨーロッパラウンドに向けて、さらなる開発を続けたいと思いますので、ご声援よろしくお願いします。


インディアナポリスで今季のベストリザルトを手にした新居章年。シルバーストーンでのテストを経て、フランスGPではダブル入賞を狙う。