フランスGP テクニカル・プレビュー パスカル・バセロン Q+A
●インディアナポリスではヤルノが今シーズン最高となる6位入賞をチームにもたらしました。満足でしたか?
「ヤルノは素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。ヤルノはモントリオールで起こったロバート・クビサとのアクシデントの後、とても誠実な気持ちで彼を心配していた。その後のクビサの状況に関してヤルノはホッとした気持ちだったと思うし、それからは頭の中をクリアにしてインディアナポリスに入ることができ、また、アメリカでのレースウィークに完全に集中していた。その上彼は、毎日ハーレー・ダビッドソンに乗ってサーキット入りし、アメリカ文化の精神にも足を踏み入れていたくらいだ! 8番グリッドを獲得した予選でのパフォーマンスは非常に満足がいくものだったし、特にあの燃料搭載量を考慮すれば尚更だ。また、レースでも最後までずっと全開で走ってくれた。ヤルノはマーク・ウェバーの執拗な追撃をかわし、われわれに6位という素晴らしい結果をもたらしてくれた。今回も4位までトップの2チームが独占してしまっただけに、ヤルノのパフォーマンスは特に力強いものだったと言える。とはいえ、6位という結果に心から満足してなどいられないのだが……」
●いっぽう、ラルフのほうはインディアナポリスでもまた困難に見舞われましたよね?
「不運を止める方法なんてないからね。インディアナポリスでのラルフは明らかに運に見放されている。ターン1に向かってかなり激しい順位争いがあり、ラルフはタイヤをロックさせてしまった。その直後にデビッド・クルサードと接触し、そこで彼の午後は終わってしまったんだ。スタート直後のあのターン1でね」
●ラルフは予選第1セッションでかなり速いタイムを出しましたが、第2セッションではわずかな差で脱落してしまいました。何が起こったのですか?
「実際のところ、ラルフはとてもいい仕事をしていた。第1セッションでの彼のタイムは非常に良く、全体の7番手だったし、第2セッションでヤルノが出したタイムとほぼ同じくらい速かった。ラルフはインフィールドのタイムがとても良かったのだが、見てわかる通り大勢のドライバーが一度に走るため、ラップ全体をうまくまとめるのが非常に難しかった。もしラルフが第2セッションのセクター2で同じくらい速いタイムを出していれば、彼もトップ10に残れたはずだ」
●チームのオペレーションに関して、インディアナポリスでのレースはいかがでしたか?
「かなり難しかったね。その理由は全チームに共通する例の問題のためだ。つまりインディアナポリスではふたつの要素に対処しなければならないわけでね。ひとつ目の要素は長いストレートに対応するために低ダウンフォース仕様にしなければならない、という点。もうひとつはインフィールドのアスファルトのグリップが低いため、非常にドライビングしずらいという点だ。インディアナポリスで多くのクルマが悪戦苦闘しているのを目にするのはこれが理由だ」
●ブリヂストンはモナコとモントリオールにスーパーソフトとソフトを持ち込みましたが、インディアナポリスではソフトとミディアムが用意されました。タイヤのパフォーマンスはいかがでしたか?
「今回のタイヤは、モナコとモントリオールでスーパーソフトを使ったときに見られた極端な状況は皆無で、しっかりと機能してくれた。両方のタイプともに無理なくレースで使うことができたが、それでもコンパウンドの特性の違いは週末を通じて顕著になっていった。いつもの通り、硬いほうのタイヤは滑り出しからとても良かった。通常は金曜日に一番安定していて、その後、路面のグリップが向上するとその特異性が失われていく傾向がある。今回のレースでは間違いなくソフトのほうが速かった」
●ドライバーの何人かは、「インディアナポリスでは週末が進んでもそれほどグリップが改善されなかった」と言っていましたが、これはそのアスファルトの影響だったのでしょうか?
「実際のところ、われわれの場合、路面状況の変化は予想通りだったよ。2種類のタイヤのパフォーマンスの違いがどのように変わっていくかという点が路面変化の指標になるのだが、グリップと安定性の相関関係はかなり典型的なものだった。これはつまり、路面にタイヤのラバーがどんどん乗っていっている、ということを示していたわけだ」
●マニクールに向けて、TF107に何か空力パッケージのアップデートはあるのでしょうか?
「空力面に関してマニクールはひとつの基準になるサーキットと言えるが、今回そういったサーキットに戻るにあたってわれわれはいくつかアップデートを用意している。モナコ以降、われわれはずっと特別な空力パッケージで走ってきた。基本的なパッケージというよりも、もっとそのレース専用のパッケージと言えるものを使っていたからね。モナコは言うまでもなく高ダウンフォース仕様で、またカナダとインディアナポリスではともに低ダウンフォースの方向に偏った仕様だった。マニクールでは、バルセロナや、あるいはバーレーンとセパンのときのパッケージに近い空力に戻る。もちろん開発は続けているし、アップグレードしたパッケージを持ち込む予定だ」
●マニクールに関してどう思いますか?
「そうだな、とにかく私は、イギリスの友人たちが今回で最後になるかもしれないマニクールでのレースをどのようにお祝いするのか、興味津々だね。彼らはあの場所が大好きだということをわれわれは知っているからね!」
●あそこのコースの路面はちょっと独特なのでしょうか?
「マニクールで特別なのは、コースのアスファルトが非常に黒々としていることだ。すこしでも日射しがあると、路面温度があっという間に上昇してしまう。たとえ気温が25~30度程度の場合でも、路面温度は50度に達してしまうことがあるんだ」
●それはつまりどういう意味なのですか?
「タイヤの挙動とクルマのバランスに大きな影響をもたらす、ということだ」
●今年はタイヤのグリップが低下したことと、各車から生じる空気の乱れの影響で、追い越しがさらに難しくなったと言われています。これについてはどう思いますか?
「その空力の説明が大きな要因になっているのかどうか、私にはよくわからない。それよりもタイヤの影響のほうが大きいだろう。というのは、間違いなく今年のタイヤはスライドする許容量が小さいからね。そのため簡単にミスを冒してしまいがちだ。タイヤのグリップが低下し、またそのせいでタイヤが適切に機能する守備範囲を簡単に超えてしまう。このためドライバーたちは“すこしくらいスライドしてもグラベルに飛び出すことはないだろう”という自信を持てなくなっているし、そのせいでコーナーへとアタックするのが以前よりも難しくなっている。実際、今年のタイヤでアタックするのはとても難しいことなんだ。とにかく相当スムーズにコーナーに進入しなければならない。特に今までリアをスライドさせることに慣れていたドライバーたちが苦しんでいるのはこれが理由だ。今シーズンはそういったアプローチではあまりうまくいかないからね」
●マニクールでトヨタが中団グループのトップに戻れる自信はありますか?
「ヤルノが非常にいいレースをしてくれたとはいえ、インディアナポリスのように低グリップ/低ダウンフォースの場所では、バルセロナのときと比較してそれほど力強さを発揮できなかった。次回は、われわれの努力のほとんどを注ぎ込んできた基本パッケージに戻れることを楽しみにしている。ポイントにつながるパフォーマンスをまた発揮できることを期待しているよ」