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Rd.12 Grand Prix of Turkey
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新居章年リポート
2007年8月28日(火)

いつもご声援ありがとうございます。前戦ハンガリーGPの後、F1は約3週間の夏休み期間に入りました。この期間、F1はレースばかりでなく合同テストも禁止となり、サーキットでの本格的な走行はありませんでした。しかし開発作業に休みはなく、TMGでは後半戦に向けた開発を日々行っていました。そして、今回持ち込んだクルマにも、いくつか新しいパーツを投入しています。それでは、さっそく休み明けの緒戦となったトルコGPの模様を報告しましょう。

●夏休み明けに新しい空力パッケージを投入
前戦ハンガリーGPではラルフ(シューマッハー)が予選6番手を獲得し、レースでも6位に入賞して、ようやく我々の実力が出せるようになりました。今シーズンまだ2台そろってポイントを獲得できていないので、目標は2台ともに入賞、できれば5位と6位に入り、マクラーレンとフェラーリを追う集団のトップに立ちたい。

夏休み期間に開発してきた新パッケージ。フロア、ノーズ、フロントウイングが一新され、体感できるほどダウンフォースが増加した
エンジンは今回が2レース目となるため、新しい変更点は空力パーツのみ。わかりづらいかもしれませんが、フロアを改良してきました。それからノーズを新しい形状にして、それに合わせてフロントウイングのアッパーフラップのデザインも一新しました。ただし、この部分はクラッシャブルストラクチャーを兼ねているので、変更したものを使用する場合はFIAが定めているクラッシュテストに合格しなければなりません。クラッシュテストの日程は限られており、実施されたのはトルコGP初日の金曜日夕方。そのため、金曜日のフリー走行は従来型のノーズとフロントウイングを使用し、テストに合格してから、土曜日午前中のフリー走行でデータ取りのためのチェック走行に時間を割くことになりました。

●初日フリー走行3、4番手で発進も手綱はゆるめず
金曜日午後のフリー走行2回目は、コース脇の排水溝のフタが外れて赤旗中断となり、走行時間が28分間短縮されたため、慌ただしいセッションとなりました。さらに風が強かったせいもあって、多くのドライバーがコースアウトを喫していました。特に、イスタンブール・パーク・サーキット名物の8コーナーは180度回り込んでいるので、入口が向かい風で出口が追い風となり、我々のドライバーもかなり手こずっていました。

イスタンブール・パーク・サーキット攻略は名物の8コーナーがポイント。ここで底付きしない程度にギリギリまで車高を落としたい
難しかったのは車高の調整です。イスタンブール・パーク・サーキットは非常にフラットで縁石も低く、車高をできるだけ下げて走りたいのですが、高速の第8コーナーで車高を下げすぎるとボトミング(車体底部が地面に接触)してしまうんです。そのあたりの調整を金曜午後のフリー走行で行いたかったのですが、2回目のセッション序盤に赤旗が出されて28分間中断したため、決勝に向けてタイヤの比較とロングランでのデータ取りを優先することになりました。 そんな状況のなか、フリー走行2回目でラルフが3番手、ヤルノ(トゥルーリ)が4番手となったことは、結果だけを見れば悪くない滑り出しです。しかし我々としては決してクルマのセットアップに満足していたわけではなく、まだまだやらなければならないことがあったので、手放しに喜ぶわけにはいかないというのが正直な感想でした。とにかく土曜日の予選で、しっかりこのようなポジションにつけるということが大切ですからね。

●無事クラッシュテストを通過、予選はヤルノ予選9位と不発に
金曜日の夕方にドイツ・ケルンにある工業試験場でFIAのスタッフ立ち会いのもとに行われたクラッシュテストで、新しいノーズに新しいフロントウイングを組み合わせた新パッケージが試験に合格。我々は予定通り、土曜日午前中のフリー走行で2台に新パッケージを装着して走行を開始しました。そして従来型のパッケージと比較を行った結果、データ上だけでなく、ドライバーが体感できるほどダウンフォースが増加しているという効果を確認することができました。これで予選と決勝に向けて、新パッケージを採用することが決定。ところが、ここで予想外の事態が起きました。
土曜日午前中のフリー走行終盤、軟らかいほうのオプションタイヤを装着しても、期待していたほどのスピードアップが果たせなかったのです。そして、不安を残したまま臨んだ予選では、それが的中する結果となってしまいました。

予選では軟らかいタイヤを装着した状態で期待通りタイムが伸びず、ヤルノは最終ピリオドに進出するも9位、ラルフは18位と大苦戦
1回目は硬いほうのプライムタイヤを履いてのチェックラン。そこで、ラルフが9コーナーでリアタイヤをロックさせ、危うくスピンという状況に陥りました。ピットインして、タイヤをオプションに履き替えるとともにフロントウイングを調整しましたが、それが裏目に出ました。アタック本番でオーバーステア気味となり、思うようなタイムを出せないまま18番手に終わったのです。
ヤルノもブレーキングでクルマがナーバスになるという不安を抱えていましたが、なんとかトップ10内をキープ。7戦連続で最終ピリオドに進出してくれましたが、最後のアタックでは本来のキレのある走りができず予選9位に終わりました。トップ6に2台を送り込むことが今回のターゲットだったので、この結果は本当に残念です。しかし、ここまで酷暑の中でもTF107の熱対策は万全。暑いレースが予想される決勝では、粘り強く走ることでハンガリーGPに続くポイント獲得を狙っていくつもりでした。

●ペースは悪くなかったが、不運が重なった決勝レース
9番手グリッドにつけたヤルノは、これまで課題だったスタートもうまく行き、ひとつ前のイン側グリッドからスタートしたニコ・ロズベルグ(ウイリアムズ)に並ぶ勢いで1コーナーへと進入していきました。ところが、ここで後方10番手グリッドのジャンカルロ・フィジケラ(ルノー)に追突されてしまい、スピン。幸い後続のクルマとの接触は避けられ、ヤルノはレースに復帰することができましたが、いきなり最後尾となってしまいました。その後、ヤルノは何度もオーバーテイクシーンを見せ、最後まで積極的な走りを披露してくれましたが、16位でフィニッシュするのが精一杯でした。

1ストップ作戦でポジションを上げていたラルフだが、渋滞に引っかかり12位でゴール。予選結果の重要さを痛感する結果となった
また、ラルフは予選上位だったドライバー2人が予選後にエンジン交換したため、16番手グリッドからスタート。こちらは1ストップ作戦で粘り強く走る作戦を採りました。その選択自体は悪くなく、レース中盤には11番手までポジションを上げたのですが、前半のそこでペースの遅いクルマに押さえられた影響で、1ストップ作戦のアドバンテージを活かしきれずに12位でチェッカーフラッグとなりました。
ラルフは1ストップ作戦ながら2ストップ勢と遜色ないペースで走行していたので、渋滞に引っかからなければポイントを獲得できたと思います。それだけに、予選ポジションの大切さをあらためて感じたグランプリとなりました。 残念ながらポイント獲得はなりませんでしたが、土曜日から投入した新空力パッケージの手ごたえは収穫でした。次戦、高速モンツァで行われるイタリアGPでは富士スピードウェイに向けて弾みをつける戦いをしたいと思いますので、ご声援よろしくお願いします。


イスタンブールパークでの新居章年。新パーツを投入したものの歯車が合わず実力発揮ならず。次戦の高速バトルで巻き返しを狙う。