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Rd.16 Grand Prix of China
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新居章年リポート
2007年10月9日(火)

いつもご声援ありがとうございます。2週連続開催となった極東ラウンド。その緒戦である富士スピードウェイでの日本GPを終えた我々は、極東決戦2戦目の中国GPを迎えました。それでは、今年で4回目の開催となった中国GPの模様を報告しましょう。

●不発に終わった富士スペシャル仕様で雪辱を期す

日本GP後も休まず開発してきた新型フロントウイングは惜しくも中国GPには間に合わず。最終戦ブラジルGPにて投入される予定だ

今回は富士スピードウェイから2週連続の開催でしたが、トップチームに追いつくためには開発を止めるわけにはいきません。ですから日本GPから1週間後となる中国GPにも、我々は新しい空力パーツを導入するべく準備を進めていました。しかしながら、直前になってどうしても2台そろって投入することができず、最新の空力パッケージで臨むことはできませんでした。そこで基本的には、富士スピードウェイで投入した空力パッケージを中心に、上海インターナショナルサーキットで必要とされるダウンフォース量に合わせたエアロパッケージで臨むことになりました。富士スピードウェイでは、富士スペシャルのポテンシャルを十分に披露することができなかったので、今回はぜひとも雪辱を果たしたいと思っていました。

●金曜フリー走行は順調、2台そろってトップ10内につける

初日フリー走行ではセットアップの大がかりな変更が的中。ロングランのデータを取りつつ、2台ともトップ10という順調な滑り出し

初日のフリー走行を終えての結果は、ヤルノ(トゥルーリ)が5番手、ラルフ(シューマッハー)が7番手という順位だけを見れば、喜んでもいいものでした。ですが、モータースポーツは決勝レースの最終ラップを何位でフィニッシュするかという勝負。フリー走行の順位で喜んでいるわけにはいきません。特に金曜はセットアップで苦しみ、午前中のフリー走行1回目終了後にフロアを交換するなど、大がかりな変更を2台のクルマに施しました。ただし、このセッティングの変更が功を奏して、午後のセッションでは2台とも順調にプログラムを消化できました。したがってセットアップだけでなく、ロングラン走行時のデータもしっかり取れました。その上で一発のタイムでも悪くないポジションにつけたことは、素直に喜びたいと思います。あとは「フライデーチーム」と呼ばれないように、このスピードを土曜と日曜にも披露できるようにしたいですね。

●セッティング変更したラルフが今季ベストグリッドの6番手に
ラルフが予選でハンガリーGP以来となる今シーズンのベストグリッドを獲得したことは素直に喜びたいと思います。ラルフは金曜のフリー走行で7番手のタイムをマークしていましたが、セッティングに関しては満足していなかったので、フロントとリアのサスペンションセッティングを変更してメカニカル面でのグリップ向上を狙いました。それがうまくいき、土曜午前中のフリー走行3回目では1分36秒959を記録して5位と、順調な仕上がりで午後の予選に臨むことになりました。予選では決してトラブルがあったわけではないのですが、午前中の様子から考えれば、午後の予選ではもう少しタイムが向上するものと考えていただけに、第2ピリオドで記録した1分36秒709というベストタイムは、正直残念でした。

ラルフはメカニカルグリップ向上を狙ったファインチューニングにより今季ベストグリッド6番手。決勝は雨でスピンを喫してしまう

予選ポジションだけを考えるなら、もう少しダウンフォースを削れば、あとコンマ2,3秒タイムを刻むことができたと思います。ただし日曜が雨という予報が出ていたので、あまりダウンフォースを削ることは賢明ではなく、その点では良い判断だったと思います。

一方、ヤルノは金曜の状態が非常に良かったので、セッティングはまったくいじらずに土曜の走行をスタートしたのですが、セッションが開始されると路面コンディションが変化していたためか、クルマのバランスが前日とは大きく変わり、かなり苦労していました。フロントサスペンションのセンターエレメントやトーションバーなどを交換するなど、さまざまなトライを行ったのですが、思い通りのセットアップを施すことができず、予選では本来のキレのある走りを披露することができませんでした。

あとはウエットレースで燃料搭載量が自由に決められるという点を有効に使い、2台ともに上位進出を期待して決勝に臨みました。

●タイヤ選択で逆転を狙うも、不安定な天候に翻弄される
決勝レースを6番手からスタートしたラルフは、2コーナーで後続のクルマに軽く追突され、スピンしてしまいました。クルマに大きなダメージはなく、すぐにレースに復帰することができたのですが、最後尾まで落ちてしまい、いきなり苦しい展開となってしまいました。ただしラルフはモチベーションを失わず、周回を重ねるごとにポジションを回復し、12番手で1回目のピットストップを行いました。ちょうど、その直前にスタンダードウエット(浅溝)タイヤからドライタイヤに交換したドライバーがコース上で速いタイムを刻んでいたので、われわれもここで1ストップ作戦に切り替え、ドライタイヤをラルフに装着させてコースに復帰させました。ところが、その直後に雨が降り出してラルフはスピン。クルマが決まっていただけに、残念な結果となってしまいました。

スタート直後の混乱をうまくくぐり抜けたヤルノは、もともと1ストップ作戦を採用していました。24周目には入賞目前の9番手までポジションを上げており、順調なレース展開だったと思います。しだいに路面が乾きはじめ、ドライタイヤのほうがペースが速くなっていた25周目にピットイン。もう少し燃料は残っていたのですが、ここでスタンダードウエット(浅溝)からドライタイヤに交換、最後まで走りきれる燃料を給油してコースへと復帰させました。

12番手からスタートしたヤルノは1ストップ作戦で入賞を狙ったが、運悪くドライタイヤに交換した直後に雨が強くなりペースダウン

しかし、その直後に雨が降り出し、ドライタイヤに変更したばかりのヤルノには苦しい展開に。数名のドライバーは再びウエットタイヤに交換するためピットインしていましたが、雨は長く降らないことがわかっていたので、我々はヤルノをコース上にとどめておくことにしました。結果的には数周で雨は上がり、その判断は間違っていなかったと思いますが、ハーフウエット路面になったときのヤルノのペースが予想以上に落ち込んでしまい、大きくポジションダウン。目標としていたポイント獲得は果たせませんでした。

日本GPに続いて中国GPも残念な結果に終わりましたが、あと1戦残っています。次の最終戦ブラジルGPでは、今回投入できなかった新しいフロントウイングを試す予定です。最後までパナソニック・トヨタ・レーシングへのご声援よろしくお願いします。


上海国際サーキットでの新居章年。2戦連続のウエットレースで実力を発揮できず悔しさが募る。最終戦のブラジルGPに全てをぶつける。