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Rd.17 Grand Prix of Brazil
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新居章年リポート
2007年10月22日(月)

いつもご声援ありがとうございます。3月にメルボルンで開幕したF1も、早いもので最終戦となりました。最終戦の舞台は、17戦中、もっとも標高が高いインテルラゴス・サーキット。反時計回りでドライバーの肉体的負担の高いサーキットとしても有名です。それでは、第17戦ブラジルGPの模様を報告しましょう。

日本GPで投入した新タイプのリアウイング翼端板をダウンフォースの異なる仕様に合わせて、ここブラジルでも採用。

●進化を目指し、最終戦でも新パーツを投入
最終戦とはなりましたが、少しでもいい結果を残すために、われわれはこのサンパウロにも、新しい空力パーツを持ち込んできました。ひとつは富士スペシャル用に開発されたリアウイングの新しい翼端板(エンドプレート)を、ミドルからミドルハイダウンフォース仕様のウイングにも採用してきました。また、日本GPには間に合わず、中国GPでの投入予定しながら、輸送の都合上、その使用を見送らなければならなかった新フロントウイングは、今回ブラジルで登場となりました。

●順調なラルフとセットに悩むヤルノ、対照的となった金曜日
バンピーで悪名高かったインテルラゴスの路面は、今年全面改装されて、かなりスムーズとなりました。初日を走った両ドライバーのコメントも概ね良好で、「若干パンプが残ってはいるものの、ブレーキングポイントなど重要な箇所ではないため、問題はない」というものでした。

ラルフにとってはトヨタでの最後のGPとなった、苦しい状況の中で頑張り抜き、完走という形を残してくれた。

セッションはウエットコンディションでスタートしました。しかし、それも午後には天候が回復すると聞いていたので、フリー走行2回目では路面が乾くまで、約30分間ガレージで待機することにしました。そのため、90分間の走行は60分間に限られましたが、ラルフ(シューマッハー)はリアウイングのダウンフォースレベルを調整したぐらいで、順調に周回を重ねていました。

反対に初日セットアップに苦しんだのは、ヤルノ(トゥルーリ)でした。朝のウエットコンディション時から“スナッピー”(コーナーへの進入でリアのグリップが突然失われてクルマが暴れるという症状)になり、ハンドリングに不満を抱えていたのです。路面が乾いた午後に入ると、オーバーステア傾向に悩まされていました。リアサスペンションを調整したり、スムーズになった路面に合わせて車高を下げ気味にしたり、タイヤの空気圧が今朝はやや低めだったので上げたりと、いろいろ試しデータを吟味した上で土曜日の走行に備えました。

●Tカーのヤルノは復調、ラルフは不調と前日と正反対となった予選
金曜日のフリー走行でヤルノに降りかかった問題は、その後にデータをいろいろと検証してみたのですが、原因が不明のままだったので、土曜日は思い切って朝からTカーにスイッチして打開することにしました。それが功を奏して、2日目のヤルノは見違えるような走りを披露してくれました。土曜日になって気温が上昇して、タイヤを温めやすくなったことも、ヤルノには幸いしました。

Tカーに変更し、調子を取り戻したヤルノ。フロントウイングは2戦越しで投入することができた新仕様。

ただ、気温の上昇と共に、路面温度も50℃近くまで上がったため、2種類あるうちの軟らかい方のスーパーソフトタイヤのフロントにグレイニング(めくれ摩耗)、リアにはブリスター(タイヤの発熱により表面にできる気泡)が発生するという症状に悩まされました。グレイニングはロールバランスを変更してなんとか対処できましたが、日曜日はもっと暑くなるという予報なのでブリスターが心配。どのタイミングでどれだけの距離を走るのかが、レースではポイントになると思います。

一方、ラルフは対照的に気温の上昇と共に、リアタイヤにムーブメント(コーナーリング中にタイヤ表面のゴムが動くような感覚)の問題を抱えて、セットアップに苦しみました。ラルフはレースは15番手からのスタートとなりましが、彼がこのチームでレースに臨むのは、今回が最後。日曜日のレースではクルマにトラブルを出さないように、細心の注意を払い、最後までしぶとく戦い抜いて欲しいと思っていました。

●ヤルノがシーズンを締めくくる8位ポイント獲得、しかし課題もあり
今年最後のレースで1点でもポイントを獲得できたことを、素直に喜びたいと思います。0と1では雲泥の差があるので、ヤルノがしっかりポイント獲得してくれたことには感謝しています。ただ、今日のレースで課題が見えたことも確かです。

それはせっかく3ストップ作戦を採用したにも関わらず、そのアドバンテージを活用できませんでした。ヤルノの第2スティントに使用したリアタイヤにブリスターが発生し、ペースが思いのほか、上がらなかったからです。また、フロントタイヤにもグレイニングが発生したため、一度ペースを抑えてグレイニングが悪化するのを抑える必要があつたこともペースを上げられなかった原因です。

ヤルノは3ストップ、ラルフは2ストップ作戦を採用。結果から判断すると3ストップのスピードが活かせず、2回ピットが正解だった。

そしてレース中盤からは路面にラバーが乗り、最後に装着したスーパーソフトでは、予想外にいいラップが刻めたので、結果的には2ストップでも行けました。少し慎重になりすぎたようです。

トヨタでの最後のレースとなったラルフは、1コーナーで軽く他車と接触していましたが、タフなレースで見事完走を果たしてくれました。新天地での彼の新しいチャレンジを期待しています。

最後になりましたが、今年一年間、本当にご声援ありがとうございました。来年こそ、皆さんの期待に応えられような強くて速いクルマで戦います。ご声援よろしくお願いします。


インテルラゴスでの新居章年。最終戦で1ポイントを獲得! 冬のテストでは新車開発に全力を注ぎ、来シーズンの飛躍を目指す。