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Rd.2 Grand Prix of Malaysia
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マレーシアGP テクニカルインサイト パスカル・バセロン Q+A

●2008年シーズンの新レギュレーションで難しいのはどんな点でしょう?
「2007年の終わりに暫定型のクルマを導入したことで、我々の準備はかなりスピードアップした。最初に集中したのは4レース使用するギアボックスで、とにかくできるだけ長い距離を走らせたかった。最初のギアボックスでは2500キロ走破を目標にしたが、これはスムーズに進んだ。2つ目は新しく導入される標準電子コントロールユニット(ECU)だ。4レース仕様のギアボックスを使うことから生じる要求を満たすため、様々なパーツの設計の準備期間が長くなった。つまり、もし何か問題に直面した場合、シーズン開幕に新しい部品を間に合わせるためには早めにそれを解決しておかなければならない、といった状況だった。標準ECUに関しても、早めに走行を始めてシステムを理解し、バグを解消しておきたかった。今でもバグの修正は続いているけどね。また、当然のことながらドライバーエイドについても取り組む必要があった。信頼性を確保しつつ、新しいシステムを学んでいくのは大変な作業だったよ」

●メルボルンでティモ・グロックが5グリッド降格することになったギアボックスの問題とは何だったのですか?
「ハードウエアに関する問題ではない。標準ECUに変わったことによる問題で、そのコントロールシステムに関することだった。セッティングがかなり複雑で、我々は現在も学習段階にある。恐らく我々と似たような問題を抱えているチームは複数あるはずだ。それぞれシステムが違うしね。こうした問題は昨年までの自分たちのシステムでは起こり得なかった。自前のシステムについては熟知していたからね」

●メルボルンではティモを含め多くのドライバーがコースアウトしていました。これはドライバーエイドがなくなったためでしょうか?
「恐らくその理由のひとつはメルボルンのコースの特性だろうね。かつてのオーストリアのツェルトヴェグもちょっとそんな感じだった。あそこではスピンするクルマを頻繁に目にしたものだ。最大の要因は、アルバートパークの特性として、路面のグリップが低いからだと思う。もちろん、(ドライバーエイドがなくなったため)アクセル操作をもっと繊細にしなければならなくなったことが、更にそういった状態に拍車をかけたのだろう」

●例年のメルボルンであれば金曜日にはコースアウトが多いものの、路面にラバーが乗ってくるとそうした状況は改善されます。ですが今回は週末を通して同じ状況が続いたように見えました。
「確かにミスをする確率は今の方が高くなっている。1周の走りに限れば、ドライバーエイドなしによるパフォーマンスの低下はそれほどでもないが、長い距離を走れば走る程、ミスを犯す危険は大きくなる」

●ドライバーエイドがない方が、コース上でのクルマのアクションが激しくなると思いますか?
「セッション中はデータの確認をしているためテレビ画面をずっと見ている時間はないが、私が受け取ったフィードバックによれば確かにクルマのアクションが派手になったようだ。我々が求めていたのはまさにそれだし、恐らく今後の評判もいいだろう」

●メルボルンでのTF108のペースには満足でしたか?
「他車のパフォーマンスと比較すると幾つか意外な面もあったが、ただし、全体的に見て予選の自分たちの順位とレースでの速さに関しては予想通りの状況だった。ただし、シーズンの初戦で2台ともリタイヤに終わったのはまったくうれしくなかったけどね。予選ではトップを行く各車のタイムに近づけず幾分落胆したが、レースでは2台ともかなりの競争力を見せてくれた。ヤルノは間違いなく表彰台に近い位置でフィニッシュできると思われただけに、彼のクルマのバッテリーに問題が起きたのは残念だった。ティモは1コーナーで2度他車と接触したが、その後のレースではいいパフォーマンスを見せてくれた。最後のアクシデントまで彼のレースペースは良好だったしね。ただしスタートの接触でどの程度クルマにダメージを負ったのかはわからなくなった。全体的に見てティモはいい仕事をしたと言える。2004年に数戦走って以来、彼はF1でレースしていなかったわけだが、予選9番手はかなり見事な結果だったし、レースでも安定していた」

●ドライバーエイドがなくなったことによって、各サーキットの様々な特性の違いが顕著になるのでしょうか? 例えば、マレーシアと比べてメルボルンのコースはブレーキングゾーンと低グリップの部分が多いんですよね?
「そう。メルボルンではブレーキングの安定性とシフトダウンの際に幾つか課題が見つかったが、これはこれまでのテストでは確認できていなかった症状だ。これはアルバートパークの路面のグリップが低いために生じた問題で、全体的にクルマのバランスが安定しなくなってしまった。だがマレーシアはグリップとタイヤの熱入れの特性が全く異なるサーキットだから、楽しみにしている。通常、マレーシアでグリップの問題に悩まされることはないし、タイヤもすぐに温まる。従って、クルマの性能そのものに集中して作業できるんだ。一方メルボルンでは考慮すべき要因がもっと多岐に渡っていた。マレーシアではクルマのパフォーマンスがより明確に表れるだろう」

●マレーシアではクルマのどこかが新しくなるのでしょうか?
「いや、時間の制約があるからね。レースの間隔が1週間しかないし、地球の反対側へ移動するというスケジュールの問題もあるから、それは無理だ」