新居章年リポート
2008年3月24日(月)
いつも応援ありがとうございます。開幕戦から2週間連続での開催となったマレーシアGPの報告をいたしましょう。
今回はオーストラリアのTカーを使用したティモ。結果はリタイアとなってしまったが、予選は2戦連続でトップ10入りと内容的には納得できるものだった。
●電気系を一新するとともにクラッシュしたティモにはTカーで対処
まず今回のグランプリの展望を語る前に、不甲斐ない結果に終わったオーストラリアGPで我々の足元をすくったさまざまなトラブルについて、もう一度説明しなければなりません。ヤルノ(トゥルーリ)のクルマに発生した電気系のトラブルはある程度、原因を突き止め、その点を対処することができました。ただ、100%究明できたわけではないので、今回は電気系の部品に関しては信頼性を確認しながら異なった仕様を投入することにしました。
ランオフエリアにあったグラベルと芝生の段差によって大破したティモ(グロック)のクルマは、見た目ほどダメージはひどくなかったので、そのまま使うことも考えたのですが、サスペンション取り付け部となるブラケット類など、細かいところにダメージがあったため、万全を期してモノコックをオーストラリアGPでTカーにしていたものと交換しました。またFIAから、ティモの健康状態を再度チェックしたいとの要請がありました。それで木曜日の夕方にサーキットでメディカルチェックを受けましたが、問題なかったことをお知らせしておきます。
2005年には2位を獲得するなど、マレーシアは相性のいいヤルノ。今回のGPでも強豪相手に一歩も譲らないバトルを展開した。
●フリー走行で有意義なデータを収集。ヤルノのロングランに期待大
オーストラリアGPから2週連続開催ということで、今回マレーシアGPに持ち込んだクルマの空力は、前戦オーストラリアGPと同じものです。さらに、セパンのコースのダウンフォースレベルがメルボルンと似たような値だということもあり、メルボルンと同じレベルからスタートしました。前回のオーストラリアGPでは金曜日からトラブルに見舞われて、思うような走り込みができなかったのですが、今回はまったくトラブルがなかったので、予定していたプログラムを順調にこなすことができました。2種類のタイヤを履き比べてそれぞれの走行データを取ったり、メカニカルなセットアップをいくつか試したり、異なるダウンフォースレベルを比較するというものです。
その結果、午後のフリー走行2回目でヤルノは6番手のタイムをマークするのですが、これはニュータイヤを履いての走行ではなく、14周のロングラン走行の最後に叩き出したもので、週末を戦う上で非常に勇気づけられるタイム。ティモは17番手に終わりましたが、こちらはヤルノと異なったプログラムを組んだことによるもので、そんなに心配はしませんでした。
オーストラリアの翌週というハードな状況にも関わらず、チームも2人のドライバーを見事にサポート。今回の4位はチーム全体で得た成績だ。
●上位陣にトラブルがない中、2戦連続で2台揃って予選トップ10入り
2台揃って、いい予選ができたと思います。金曜日はロングランでいい走りを披露していたヤルノですが、まだ若干グリップが足りずにクルマがスライドという症状を抱えていました。この症状はティモにもあったのですが、午前中のフリー走行3回目で予選を想定して燃料を軽くしたら、2人とも「タイヤがバイトする(路面に食いつく)」ようになって、一発のスピードも上げられるようになりました。
さらに予選の第1ピリオドでヤルノがトップタイムを記録し、11番手で第1ピリオドを通過したティモのタイムを見て、「今日は行ける」と確信しました。ライバル勢にトラブルがない中でヤルノがもぎ取った予選5番手という成績は、上出来といっても良いでしょう。
厳しい予選を戦い抜いて、開幕戦から2戦続けて最終ピリオドへ進出を決めたティモのアタックも素晴らしいものでした。最終ピリオドで1分39秒台にとどまったのは、柔らかい方のコンパウンドであるミディアムタイヤ(セパンでの“オプション”タイヤ)を第1ピリオドと第2ピリオドでそれぞれ2セットずつ使用して、最終ピリオドには残っていなかったためです。
「レースでは両者とも予選ポジションより1つでも上でフィニッシュしてほしい」という心境でした。
レース終盤、後方からプレッシャーをかけながら、追い上げるマクラーレンのハミルトンの追撃を見事に振り切り、ゴールしたヤルノ。次は更なる上位を目指す。
●チーム全員で勝ち取った4位。これからが本当のスタート
ここマレーシアで勝ち取った4位はドライバーの頑張りだけでなく、ピットストップ作業をしたメカニックたちの迅速な対応、そして的確なピットストップ戦略を立てたエンジニアたちと、チーム全員の努力によるものだと思います。スタートでポジションを落としたものの、難しいセパンの1コーナーを無事にクリアしたヤルノのドライビングは決して責められるものではありません。むしろ、その後マクラーレン勢を追いかけていった走りを評価したいと思います。今日のヤルノはミディアムタイヤをうまく使いこなして、安定して速いラップを刻んでいました。ただ、我々のクルマは少しダウンフォースをつけすぎていて、ストレートでの空気抵抗が強く、前車をオーバーテイクするまでには至りませんでした。もっともっと空力を進化させる必要があることを認識しました。
ティモに関しては、不運としか言いようがありません。スタート直後に他車に軽く追突された後、1周目の14コーナーでは(ニコ)ロズベルグと接触。リアサスペンションの一部が折れたためにリタイアせざるを得ませんでした。予選まではいい流れだっただけに、本当に残念です。
シーズン初ポイントを獲得することができました。でも、これは頂点を目指すためのスタートラインに立っただけにすぎません。フェラーリとのギャップはまだありますし、マクラーレンだって今日は実力を出し切れていない部分もあり、いつも同じようにバトルできるとは限りません。
次戦バーレーンGPは、2月にテストで走り込んだコース。今回つかんだ良い流れを失うことなく、次戦も頑張りますのでご声援をよろしくお願いします。
セパンでの新居章年。狙い通り今季初ポイントを獲得し、チームのムードも高まる。次に狙うはダブル入賞だ。