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Rd.14 Grand Prix of Italy
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新居章年リポート
2008年9月15日(月)

先週に引き続き、ベルギーGPから連戦となったイタリアGP。その舞台となるアウトドローモ・ナツィオナーレ・ディ・モンツァは1922年に建設された歴史あるサーキットです。平均スピードは18戦中もっとも高く時速250kmを超え、迫力あるオーバーテイクが見られる超高速サーキットです。ここ何十年も晴天に恵まれてきましたが、今年は3日間とも雨に見舞われるという、珍しい週末となりました。それでは、さっそくヨーロッパラウンド最終戦となったイタリアGPの模様を報告しましょう。

最高速度が時速350kmにも達する超高速サーキット、モンツァ。大きなエアロパーツの変更点は前後ウイングにある。フロントからはブリッジウイングがなくなり、それまで隠れていたノーズの先端が見て取れる。

●超高速サーキット用の特別なエアロダイナミクスパッケージを用意
超高速コースのモンツァは、ダウンフォースよりも直線スピードが重要なサーキットなので、ほかのサーキットとは異なる空力パッケージを準備しました。もっとも大きな違いは前後のウイングです。フロントウイングからはブリッジウイングがなくなり、リアウイングも空気抵抗を軽減させるタイプのものを採用しました。そのほかサイドポンツーンやチムニーの周辺に装着していた細かい空力パーツが、モンツァでは姿を消しました。これらのエアロパッケージはベルギーGP前のモンツァ合同テストで試しているので、テストをせず臨んだ前戦ベルギーGPよりは混乱することなく、クルマのセットアップを進められると予想していました。
またベルギーGPでは、ブリヂストンが持ち込んできたハードとミディアム、2種類のタイヤをうまく使いこなすことができなかったので、それと同じスペックとなったイタリアGPでは前回得たデータをしっかり分析してグランプリに備えました。具体的に言うとスパではうまくタイヤをウォームアップさせることができなかったので、その改善に努めました。特にイタリアGPの週末は天気が下り坂で気温もそれほど上がらないと予報されていたので、しっかりとした対策を施さなければなりませんでした。同じことをやっても同じように失敗するだけなので、前戦とは異なるアプローチでイタリアGPに臨んだわけです。

クルマのサイドには複雑な形をしたパーツが取り付けられていたが、モンツァではすっきりとした印象になっている。これもストレートでのトップスピードを伸ばすために、空気抵抗を軽減するための処置。

●赤旗と雨の影響で予定していたフリー走行プログラムを十分に消化できず
週末の天気が下り坂だという予報でしたが、まさか金曜日の初日から雨に見舞われるとは想定外でした。午後になって雨は上がりましたが、セッションの序盤は路面がまだウエットだったため、限られた走行となりました。高速サーキットのモンツァでは、ハーフウエット路面でウエットタイヤを装着して走行すると、すぐにタイヤが傷むので、いつものようにスタンダードウエット(浅溝)タイヤでの走行を控えたわけです。今週末は金曜日だけでなく、土曜日と日曜日も雨が降る確率が高かったため、ウエットタイヤのやりくりが必要になりました。よって予定していたプログラムを十分消化することができず、フラストレーションの溜まる一日となりました。特に前戦ベルギーGPで課題となっていたタイヤの温まりを改善するために、いくつか試したいことがあったのですが、路面コンディションが大きく変化した金曜日はそれができませんでした。
タイムもティモが17番手、ヤルノは19番手と奮いませんでしたが、それ以上に走り込みを十分に行えなかったことが痛手でした。現在のレギュレーションでは金曜日の夜のうちにギアレシオを決めておかなければなりませんので、セッション後はTMGと連絡を取り合う必要もあって、本当に忙しいすべり出しとなりました。

本当に久しぶりに雨の週末となったイタリアGP。予選では上位チームが激しい雨に苦戦をしいられた中、チーム全体で懸命に取り組み、2台そろってトップ10へ進出することに成功した。

●激しい雨の中、チーム全体が力を出し切っての予選トップ10確保
今回のイタリアGPの公式予選は、時折、雨が強く降るという難しいコンディションとなりました。そんな中、各ポジションのスタッフがミスなく仕事をこなしてくれました。もちろん、悪コンディションの中で奮闘してくれたふたりのドライバーの頑張りが大きかったことは言うまでもありません。とにかく、みんながやるべきことをしっかりとやってくれたことが、2台そろってトップ10内に入ることができた最大の要因だと考えています。
ウエットコンディションではドライバーをタイムアタックに出すタイミングが、非常に重要となります。予選の第1ピリオドと第2ピリオドで、我々は積極的にドライバーをコースインさせました。それによって、自分のペースでアウトラップを走行することができ、いい状態でタイムアタックができたのではないかと思います。それと装着したタイヤの空気圧の調整なども、スタッフが細かく行っていました。タイヤの温めがドライの時よりも難しくなるウエットコンディションでは、タイヤの空気圧はいつも以上に重要となりますから、この辺りの管理もイタリアGPではうまくいったと思います。
もちろん、最終ピリオドでヤルノ(トゥルーリ)がシケインでミスしていなければ、もう少し順位は上がっていたでしょうし、ティモ(グロック)にももう少し上のポジションを期待していたことは確かです。しかし、あのような難しいコンディションで2台そろってトップ10に入ることができたことは評価したいです。

天候に翻弄され、1ストップ作戦も活かせずポイント獲得にはいたらなかった。しかしウエットの難しいコンディションの中ヤルノ、ティモともに追い越しをしかけるなど終始アグレッシブな走りをみせていた。

●ピットストップのタイミングと路面状況の変化が明暗を分けたレース
セーフティカーが外れた後、スタート直後の混乱もうまくくぐり抜け、ウエットコンディションでスタートしたレース序盤のペースは悪くありませんでした。我々が立てた1ストップ作戦も間違っていなかったと思っています。ただ悔やまれるのは、1回目のピットストップを終えた直後に、路面コンディションが変化し始めたことでした。それにより、搭載している燃料は十分だったものの、タイヤを乾きつつある路面に適したスタンダードウエットへ交換するため、2台とももう一度ピットに呼び戻さなければならなくなってしまいました。
もちろん、我々もピットインのタイミングが近づく直前にドライバーと無線で路面状況を確認し、さらに最新の天気予報をチェックしました。その結果下した判断でした。前後にピットインしたライバル勢のドライバーも、同様にエクストリームウェット(深溝)タイヤに交換していたことを考えれば、あの状況では仕方のない結果だったのかもしれません。
ヨーロッパラウンド最終戦となったベルギーとイタリアの2連戦は、どちらもあと一歩というところでポイント獲得を逃してしまっただけに残念です。しかし、どちらも厳しい戦いになると予想していましたので、収穫があったことも確かです。次戦シンガポールGPは、F1で初めてとなるナイトレース。しっかりと準備をして、日本GPにつながるように戦っていきたいと思っていますので、ご声援よろしくお願いします。


モンツァでの新居章年。タイヤ交換のタイミングが合わず、ポイント獲得ならず。悔しいレースとなったが、次回、初開催のシンガポールでは上位進出を狙っていく。日本GPまで残るは1戦!