- Round7
- 全日本ラリー選手権 第7戦 北海道
レポート
国内最長距離を誇る手強いグラベル(未舗装路)ラリーを走り切り
JN5クラス2位表彰台、総合5位を獲得
2016年シーズンの全日本ラリー選手権第7戦「ラリー北海道」が、9月23日~25日に開催され、TOYOTA GAZOO RacingチームのTGR Vitz GRMN Turbo(大倉聡/豊田耕司組)が、JN5クラス2位、総合成績では今シーズン最上位となる5位で完走を果たした。
シーズンの天王山ともいえる本戦は、アジア・パシフィックラリー選手権(APRC第4戦)と併催される国内最大規模のラリー。SS(スペシャルステージ・タイムアタック区間でありタイムが計測されるコース)の総走行距離は、150kmを超える。距離や路面状況により加算されるポイント係数は2でポイントは通常の倍となり、優勝者には40点が加算される。そのため、シリーズランキングを争う上で、最も重要なラウンドと言えるだろう。
23日(金)に行われた短い観戦コースに続き、翌24日(土)から本格的なラリーがスタート。レッキ(コース試走)後に激しい降雨があったことから、コースは乾いた路面に湿った箇所が入り混じる、難しい路面状況となった。滑りやすい路面に苦しみ、コースアウトやマシントラブルで戦列を離れるライバルが続出する一方、大倉選手は正確なドライビングを披露。ラリー初日は、クラス2番手につける。「道は思ったほどは荒れていませんでした。まだ明日も長い距離が残っていますし、何があるか分りません。最終日も集中して走りたいと思います」と、冷静にコメントした。
翌25日(日)、ステージは前日より乾いているものの、併催されるアジア・パシフィックラリー選手権参戦車両や上位クラスの走行によって、路面には深い轍が刻まれていた。マシン下部にダメージを与えないためにも、慎重なドライビングが求められる展開となった。大倉選手はミスのないドライビングでコースを攻め、無事に長い戦いを走り切りクラス2位を獲得した。「走行距離が長くて手強いラリーでしたが、コースを思いっきり走れたので楽しかったです。非常に難易度の高いラウンドでしたが、チームがきちんと対応してくれたおかげで、最後まで攻め切ることができました」と、充実の表情を見せる。
チーフメカニックを務める豊岡悟志は、「我々にとって2度目の挑戦となるラリー北海道は、非常に難しいラリーでした。Vitz GRMN Turboも少しずつ改良を加えて、スピードアップしてきています。そして、大倉選手の力も大きいと思います。どんな展開になっても絶対にフィニッシュしてくれるので、信頼しています」と、笑顔で語った。
めざせ凄腕メカニック~「いいクルマづくり」への道~Vol.07
Team TOYOTA GAZOO Racingにおいて、マシンの製作・整備を担当するのは、凄腕技能養成部の社員メカニックたち。厳しいラリー環境で技能を磨く彼らから、毎回1名のスタッフを紹介する。第7回目に登場するのはラリー参戦グループで最年少の坂口卓弥だ。
チームの他のメカニック達はすでに1年の経験を持っていたため、最初はとにかく毎回必死だったと振り返る坂口。「最初の頃は先輩についていくだけで精一杯でした。みんながどんな動きをしているか観察しながら、そして様々なことを教えてもらいながら、少しずつ作業を学んでいきました。最近はほんの少し余裕ができてきましたが、ラリーでは常に臨機応変な対応を求められるので、あらためて難しさを感じています」。
これまで経験してきた仕事とは、まったく異なる環境に置かれることで、気づくことも少なくなかったようだ。「ラリー参戦グループに来て感じるのは、このような厳しい環境に置かれないと見えてこない課題があるということ。それはクルマだけでなく、人間も同じです。“カイゼン”に終わりがないということを、いつも実感しています。一社員としての人間性も成長させていきたいと思います。それが、自分の仕事に戻ったとき、より良いクルマ作りにも繋がるはずです」。
シーズン中屈指の走行距離を誇るラリー北海道で、チームは大きなトラブルなく2位表彰台を獲得した。坂口は手強いラリーを終えて、いくつか課題を感じたという。「多くのチームが完走を諦めるなか、最後までしっかり走り切ったことで、マシン開発に関していくつか課題を見つけることができました。そして、北海道はWRC(世界ラリー選手権)を開催した実績があるからでしょうか、ファンの盛り上がりも嬉しかったですね」。
新井選手、奴田原選手を逆転し今季3勝目!(JN6クラス)
全日本ラリー選手権のトップカテゴリー、JN6クラスは、スバルWRX STIをドライブする新井敏弘/田中直哉組が、第6戦モントレーに続き、シーズン3勝目を記録した。
ラリー序盤、SS(スペシャルステージ・タイムアタック区間)2でランキングトップの勝田範彦/石田裕一組(スバルWRX STI)がコースオフによりストップ。優勝候補の一角がいきなり戦列を去ってしまう。波乱の展開となった1日目を制したのは、地元の奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)だった。2位には6.2秒差で新井敏弘/田中直哉組がつける。
そしてラリー最終日、前日の最終サービスでサスペンションのセッティングを変更した新井選手が快走。今回最長の29.11kmを走行するSS14で奴田原選手を逆転し、そのままトップでフィニッシュを果たした。「前日はマシンに若干の違和感を感じていたんですが、サスペンションのセッティングを変更して違和感が解消されたことで、奴田原選手に勝つことができました」と、勝因を語った。2位は「今日は新井選手のスピードの前に完敗でした」と、振り返った奴田原選手。3位には駆動系にトラブルを抱えながらも走り切った鎌田卓麻/市野諮組(スバルWRX STI)が入っている。
アジア・パシフィック地域を転戦するアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)(注目のチーム)
アジア・パシフィックラリー選手権は開幕戦のニュージーランドを皮切りにオーストラリア、中国、日本(北海道)、マレーシア、インドを転戦する全6戦のFIA(国際自動車連盟)地域選手権。これまで、篠塚建次郎選手、藤本吉郎選手、田口勝彦選手が年間チャンピオンに輝いている。2016年シーズンの第4戦として開催されたラリー北海道は、2002年からAPRCの一戦として開催されてきた実績を持つ。
現在、アジア・パシフィックラリー選手権で圧倒的な強さを見せているのが、インドを拠点に戦う「チームMRF」。2012年から2014年まで選手権3連覇中。今シーズンも最新鋭のシュコダ・ファビアR5を投入し、エースのガウラブ・ギル/ステファン・プレボ組が開幕から3連勝と好調をキープしている。
今回の北海道でも序盤からガウラブ・ギル/ステファン・プレボ組がラリーをリード。一度も首位を譲ることなくアジア・パシフィックラリー選手権シーズン4連勝を達成した。「北海道は何度も来ているけれど、ステージも楽しいし、何より日本のファンが素晴らしいね」と、フィニッシュ後に笑顔を見せた。2位にもチームメイトのファビアン・クレイム/フランク・クリスチャン組が入り、チームMRFが1-2フィニッシュを達成している。
もっとラリーを楽しもう
全日本ラリー選手権最大のイベントであるラリー北海道では、スタート前に全選手が参加するラリーショーが開催されました。ステージ走行前にリラックスした表情のドライバーからサインを貰ったり、一緒に記念撮影をしたりと、多くの観客がラリードライバーとの交流を楽しんでいました。
また、ラリー北海道には「TOYOTA GAZOO Racing PARK」が、前回のモントレーに続いて登場。タイヤ交換を体験できる「ラッキータイヤチャレンジ」や、G'sアクアを使った「フルブレーキ/スラロームエクスペリエンス」などが行われ、多くの家族連れで賑わいました。
次戦予告
- 10月14~10月16日 全日本ラリー選手権 第8戦
- 「M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2016 Supported by Sammy」
10月14日~16日に開催される第8戦「M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2016 Supported by Sammy」は、今年で44年目と全日本ラリー選手権で最も古い歴史を持つ伝統の一戦。岐阜県高山市郊外の道の駅・モンデウス飛騨位山を拠点に、約90kmのSSを走行するターマック(舗装)ラリーです。TOYOTA GAZOO Racingブースでは車両の展示を行う他、GAZOO Lady2名も登場予定しラリーを盛り上げます。
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高い信頼性を示し、価値あるJN5クラス4位を獲得