スペシャル
レーシングドライバー木下隆之の
ニュルブルクリンクスペシャルコラム
片岡龍也。その風貌からして、TOYOTA GAZOO Racingに新・癒し系の加入である。そもそもトヨタ育成ドライバーの一期生であり、数々の成績を残してきた。TDP(トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム)ドライバーらしく抜群の速さと安定感がある。
チームの笑いの中心である。すべらない話の宝庫であり、常に彼の周りは笑いで溢れている。彼とはクルマ以外の話しかした記憶がない。
あそこのあいつが酒で記憶を失っただとか、どこの誰それがサーキットまで迷子になっただとか、あいつのかみさんがアホで笑っただとかのネタには事欠かない。たえずレース界で巻き起こったグダ話で盛り上がっているのだ。レース界の「ケンドー・コバヤシ」なのである。
彼が武闘派のレーシングドライバーであるのは有名だろう。プライベートでは数百馬力にチューニングされたスープラを所有していたし、いまでも華やかな愛車遍歴を持つ。D1にも挑んだ実績がある。エリート街道を突き進んでいながら、魂はヤンチャなひとりのクルマ好きなのである。
いわばサラブレッドの片岡なのだが、風貌は「柔和な森のクマさん」である。
木下「ファンが知らない意外性を教えて?」
そんな僕の質問に彼は即答した。
片岡「こう見えても、体重を気にしてるんですよ…(笑)」
木下「そうはまったく思えないけれど?」
片岡「これでも痩せたこともありましたが、、、
小学校のあだ名は「ジャイアン」でした(笑)」
木下「いじめっ子だった?」
片岡「いや、体型が…」
そんな片岡のプライベートはおぞましい。レース日以外では酒も飲む。そしてカラオケに行っては、噂の美声を響かせてしまうというのだ。
木下「何を唄うの?」
片岡「コブクロだとか河村隆一ですね」
木下「♪消えそう云々、咲きそうフニャフニャ♪なんて、コブクロ唄っちゃうの?」
片岡「めっちゃ、感情、込めちゃいますよ」
木下「♪you are my なんとかなんとか♪なんて河村隆一唄っちゃうの?」
片岡「ビブラートをビンビンに効かせて。唄っちゃいます」
森のクマさんを輪唱している姿なら想像がつくのだけれど、コブクロを熱唱し、河村隆一でファルセット使っちゃうなんて、ちょっとおぞましい。
一方でキモいほどの愛犬家である。ワンちゃんとのツーショット写真を要求したら、BBQを楽しむカットが送られてきた。愛犬ラブなのは伝わってきたけれど、その場で焼いて喰っちゃいそうな危険な写真だったのには笑った。
Facebookでもたいがいが鎌倉の自宅でくつろぐ愛犬とのツーショットだし、バカ親ぶりが恐怖である。まるでクマさんが子犬を襲おうとしている姿にしか見えないのだが、それが片岡の本当の姿なのだ。
片岡「いや、本当に可愛いんですよ」
木下「そりゃそうだろうね」
片岡「彼が自由に出入りができるように、自宅を改装しました」
木下「小さな小窓のようなドアでも作ったの?」
片岡「でも、一度もくぐってくれません」
木下「太ってるから?」
片岡「うちの子は、痩せてます(怒)」
木下「トイプードル?」
片岡「いえ、トイプーとウェスティの混血です」
ネットによるとウエスティ(ウェスト・ハイランド・ホワイトテリア)の性格は、好奇心旺盛のようだ。さらにこうある。「愛情が深く親しめるテリア種ですが、少しわがままなところがあります。独立心が強く、やや頑固です。時々吠えたり、地面に穴を掘ったりする傾向があります。小動物に対しては、あまり友好的とはいえません」
「動物は飼い主に似る」とはいうけれど、むしろ「類は友を呼ぶ」のほうが相応しいと思う。
木下「愛犬の名前は?」
片岡「ミートです」
木下「'肉'(meat)って意味?」
片岡「'出会う'(meet)って意味のミートです」
木下「肉だから食べちゃうの?」
片岡「みんなそう言いますけど、'出会う'(meet)って意味のミートです(怒)」