LEXUS RCの進化LEXUS RCの進化

LEXUS RCのニュルブルクリンク24時間レース挑戦「3年目の集大成」

 2014年のニュルブルクリンク24時間レースは、参戦した3台のクルマ全てがクラス優勝と、2007年の初挑戦以来最高のリザルトを残すことができた。翌年2015年は2008年から参戦してきたLEXUS LFA、2012年から参戦してきたTOYOTA 86の参戦に区切りをつけ、新たな挑戦をスタートした。1台は2014年から参戦するLEXUS LFA Code X、そしてLEXUS RCと2台の開発実験車両による参戦。つまり、ニュルブルクリンク24時間レースへの挑戦の原点である「もっといいクルマづくり」に立ち返った年となった。

2015市販車の状態をあえて色濃く残しながらの初参戦

LEXUS RCは2014年当時、V6-3.5Lと直4-2.5Lハイブリッドで販売開始していたが、2015年の参戦車両には新しい過給エンジンとなる「直列4気筒2.0L直噴ターボ」を搭載した(後にRC200tとして販売)。
 当時LEXUS RCのエンジニアチームリーダーであった金森信明(トヨタ自動車社員)は「長期プロジェクトの1年目ということで、市販車の状態をあえて色濃く残しながら、レース参戦のための最低限のモディファイに留め、パワートレインは『クローズドプロダクト』というレギュレーションの範疇でのモディファイのみとし、軽量化もカーボンといった材料置換による軽量化をせず、メカニックが知恵を絞って軽量化を行うなど、“あえて”規制をしながら製作を行った。

 LEXUS RCのエントリーするSP3TクラスはスバルWRX STIやアウディTTSなど上位クラスを脅かすレース車ばかり。その中を市販車+αのLEXUS RCで参戦する意味とは、まさにLEXUS LFAやTOYOTA 86が経験してきた「極限状態での開発テスト」だった。
 決勝は、ルーティンのピット作業以外は順調に走行を続け、一時はクラス3位まで浮上。しかし、ゴールまで残り1時間というタイミングでトラブルが発生。応急処置でコースに復帰させ24時間を走り切ったものの、極限の状態で安定して走らせるためには、課題も数多く見つかった。

2016パワートレインを中心にモディファイするも、トラブルにより惜しくもリタイア2016

 2年目となる2016年は「戦闘力」を引き上げるために、パワートレインを中心にモディファイを施した。エンジンは新型タービンの採用などにより従来比25%の出力アップ、ATも強化し、シャシー側もカーボンパーツを用いることで更なる軽量化を実施。視界性や操作性の部分にもメスを入れた。昨年もLEXUS RCをドライブした蒲生尚弥選手は「今年はエンジンとシャシーのバランスがよくなっているので乗りやすくなっています」と評価。
 しかし、予選から出力が上がったことによる対策に追われた。ナイトセッション時には緊急ピットイン。トラブルシュートを行なうものの、具体的な不具合を特定できず、チームが出した判断は「予備のトランスミッションに交換」だった。クルマはピット裏にあるチームテントに運ばれ、メカニックは夜を徹しての作業が始まった。約12時間の作業を経てコースに復帰させるが、ゴールまで残り1時間半で再びトラブルが発生。メカニックは最後の最後まで修復を試みたが、コースへ復帰させることはできずリタイアを選択。メカニック/エンジニアから悔し涙が溢れた。

2017万全な対策を施し、3年目の挑戦へ。

 そしてLEXUS RCで3年目の挑戦となる2017年、これまでの集大成と言うクルマに仕上げた。
 前年は国内テストが十分に行えなかったことの反省から、車両完成を前年より約1か月早め、12月下旬にシェイクダウン。1-2月にじっくりと走りこみ、満を持して現地入りした。
 エンジンは吸排気系の見直しや新型タービンの採用、更にはエンジン内部の改良などにより、出力を向上。また、過去2年の課題であった熱対策も、万全な対策を行った。また、ATを含めた駆動系は、エンジン出力アップに対応するハードウェア変更に加え、ニュルブルクリンク24時間レースを上回る時間の耐久評価も実施している。

 一方、シャシー側は軽量化や構造、サスペンションそして空力など、将来のスポーツカー開発のための技術蓄積を行なうためのアイテムを多数投入。更にハーネスはイチから引き直し軽量化も行っているほか、ドライバー運転支援のための前方死角改善アイテムなども投入している。また、エンジニアリーダーに若手の茶谷(トヨタ自動車社員)を起用するなど、エンジニアの育成も担っている。

 富士スピードウェイで行なった国内テストでは、昨年のモデルに対して6秒/周のタイムアップ、更に3月に行なわれたVLN1の予選では8分56秒073と9分台を切るLEXUS RC最速タイムを記録。ドライバーからも「クルマは速い上に安定して乗りやすい」と高評価を得た。
 VLNで得たデータや課題を元に改善を重ね、QFレースでも6時間を着実に走りきり、クラス優勝という結果に結びついた。しかしQFレースを終えて課題もまだ残っている。24時間レース決勝のグリッドに立つ瞬間まで、あきらめず更に乗りやすいクルマに仕上げニュルブルクリンク24時間へと挑む。

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