手強い酷暑と振動に若き技術者が『冷却魂』で挑む - cci/シーシーアイ株式会社 - | 共に頂点を目指す... ~ Yaris WRCの挑戦を支えるパートナーたち ~
cci/シーシーアイ株式会社

第4回 CCI/シーシーアイ株式会社
「WRCから日々のカーライフまで。機能して当たり前を支える」
2021.2.1 公開

エンジンを回せば走る。ブレーキを踏めば止まる。
クルマの運転では、至極あたり前のことです。

しかし、灼熱の高地や極寒の雪道など
過酷な環境で極限の速さを求めるWRCでは、このあたり前すら厳しいこともあります。

そのためには、どんな環境でも十分に機能する
ケミカル製品、"液体パーツ"が必要になります。

最高峰を戦うヤリスWRCに、そして日々のカーライフにも
その"あたり前のクオリティ"を提供しているのが、シーシーアイなのです。

彼らの秘めたる"技術"と"力"をご紹介します。

SECTION1過酷なWRCでシーシーアイ製品が通用することを証明したい

シーシーアイ株式会社は、岐阜県関市に本拠を置く世界的なケミカルメーカーです。自動車向けにはカーケミカルや、カーケア用品を製造しており、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamとは2017年のWRC復帰初年度からパートナーシップを締結し、現在に至っています。どのような経緯でWRCを共に戦うことになったのか、また、ヤリスWRCには同社のどのような製品が使われているのでしょうか。ご担当者様にお話しをうかがいました。

カーケミカル事業部営業部 部長の北 茂明さんは、パートナーシップを締結した理由を次のように説明します。
「トヨタが18年ぶりにWRCに参戦するというお話を聞いた際、世界に挑戦するという意気込みに、トヨタと同じ中部圏内の企業として共感し、パートナーとなることを決断しました。また、これまでいろいろなジャンルのモータースポーツに製品を提供してきましたが、その一環としてラリーという様々な環境で戦うカテゴリーでも我が社の製品が通用することを証明したいという思いもありました。現在は、ブレーキフルード(ブレーキ液)およびエンジンクーラント(冷却液)を、ヤリスWRCに提供しています」

技術統括・研究開発部 執行役員 堀 道弘さん
技術統括・研究開発部 執行役員 堀 道弘さん

ブレーキフルードとエンジンクーラントは、エンジンオイルと同様、クルマにとって血液のように重要な液体です。通常なかなか目にする機会はありませんが、それは正常に機能しているからこそ。そして、シーシーアイの製品は世界中のトヨタ車に使われ高い信頼性を誇っています。また、WRC以外のF1、インディカー、SUPER GTといったモータースポーツでの使用実績も多く、高い要求に応えてきました。技術統括・研究開発部 執行役員の堀 道弘さんによれば、ヤリスWRCへの製品提供はまずブレーキフルードから始まったそうです。
「我々の主力商品であるブレーキフルードに関しては、既にF1など様々なカテゴリーで実績があったので、ドライバーがペダルを踏んだ時のフィーリングが重要であると理解した上で、実績のある製品を提案しました。ラリーでの使用においては、ブレーキフルードは熱を多く受けて沸騰しやすくなります。そうするとブレーキが効かなくなるので、通常の市販車用は230~260度くらいの温度設定ですが、ラリーやレース用は300度以上で設計しています」

カーケミカル事業部 執行役員 澤木泰浩さん
カーケミカル事業部 執行役員 澤木泰浩さん

カーケミカル事業部 執行役員の澤木泰浩さんによれば、ヤリスWRCに提供しているブレーキフルードは、モータースポーツでの使用に限定された「GC 550AA」という製品で、ただ沸点が高いだけでなく、ペダルを踏んだ時の応答性にも優れているということです。パッド、キャリパー、ローターといった機械的な部品と同様、ブレーキフルードもブレーキフィーリングに大きな影響を及ぼしているのです。

カーケミカル事業部営業部 部長 北 茂明さん
カーケミカル事業部営業部 部長 北 茂明さん

SECTION2目立たない液体パーツがきっちりと機能する重要性

そしてエンジン内部を駆け巡り、温度を最適に保つエンジンクーラントも非常に重要な液体です。純粋にエンジンを冷やすだけなら真水でも十分ですが、真水はエンジンを錆びさせ、0度以下では凍ってしまいます。そのため、市販車にはLLC(ロングライフクーラント)と呼ばれる特殊な液体が冷却液として採用されていますが、ヤリスWRCではさらにスペシャルな設計がなされた同社のエンジンクーラントが使われていると、前出の堀さんは教えてくれました。

サービスパークでメンテナンス中のヤリス WRCラリー・メキシコに挑むヤリス WRC

「気温も標高も高いラリー・メキシコで、ヤリスWRCは2017年、2018年と冷却性能が不足していました。クーラントに関しては、純粋に冷やすためには冷却効率を高く設定したほうがいいのですが、オーバーヒートをさせないためには、クーラントの沸点を高く維持したほうが、ドライバーが自分でコントロールしやすいのではないかという観点で、あえて冷却効率を少し犠牲にした使い方もできる製品を提案しました。
冷却効率と高沸点化は相反するものですが、濃度を自由自在に調整できる、一般的ではない使われ方にも対応できる製品です。どのような状況でも性能をきっちりと出し、何事もなくクルマが走ることが、我々の製品の役割です。本当に目立たない製品ではありますが、どのような環境においても機能をきっちりと発揮するという点で、WRCからはいろいろ学ばせていただいています」

CCIの研究所

シーシーアイはTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムのパートナーでもありますが、その育成ドライバーとしてヤリスWRCをドライブしている勝田貴元選手からコメントが寄せられています。
「フルブレーキングでもしっかり止めるブレーキフルードと、過酷な状況でもしっかり冷やすエンジンクーラントをチームに提供いただき、強いラリーカーに欠かすことのできない部分を、世界最高峰の品質による絶対的な信頼で支えていただいており、まさに世界を相手に一緒にレースを戦っています。」

TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラム 育成ドライバー 勝田貴元選手ヤリス WRCのボンネットに貼られているCCIのロゴTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラム 育成ドライバー 勝田貴元選手

ドライバーの止める意志を正確にブレーキに伝えるブレーキフルード、エンジン温度の最適化を支えるクーラントなど、シーシーアイが供給する製品は、ヤリスWRCを構成する重要な"液体パーツ"なのです。

SECTION3地元・岐阜が舞台のラリー・ジャパンも盛り上げたい

「市販車に1番近いWRCの車両で、もっとも過酷な使用条件で、我々の製品が十分機能しているということが証明され、それが市販車用の製品にフィードバックされていることをお客様にアピールするという点でも、非常によいプロモーションになっています。また、WRCという大舞台にパートナーとして参戦していることが、社員のモチベーションに繋がっているという雰囲気もあります」と、澤木さん。「今後もモータースポーツ活動をサポートすることで、シーシーアイという会社名を広め、ユーザーやファンを増やしていきたいですね」

ヤリス WRCの足回りをメンテナンスするメカニックCCIのロゴが貼られているヤリス WRC

もちろん、ヤリスWRCに限らずシーシーアイには私たちのカーライフを充実させる、身近なクルマ用ケミカル製品を各種開発・市販しています。例えばボディコーティング剤の「スマートミスト」、フロントガラスの撥水コーティング剤「スマートビュー」、タイヤやヘッドライトのコート剤「スマートシャインシリーズ」などなど。あなたもすでに使っている"シーシーアイの液体パーツ"があるかもしれません。そう、シーシーアイはモータースポーツから日常使用まで、カーライフを影から支えるケミカル企業と言えるのです。

シーシーアイ株式会社本社ビルCCIが販売しているクルマ用ケミカル製品

2021年11月にはWRC最終戦ラリー・ジャパンが開催されます。シーシーアイのお膝元、岐阜県もラリーの舞台となっているのです。北さんは、2019年にラリー・ジャパンのテストイベントとして開催された「セントラルラリー愛知・岐阜」を視察し、感銘を受けたと言います。

「多くの一般の方が見に来ているなか、ラリーカーが走っていくのを目の当たりにして、WRCへの期待が高まっていることを強く感じました。個人的にも会社的にも、2021年のラリー・ジャパンにはとても期待しています。我が社も地元企業として、またTOYOTA GAZOO Racingのパートナーとして、ラリー・ジャパンが盛り上がるよう全力で協力をしていきたいと思っています」

2019年に開催されたテストイベント セントラルラリー愛知・岐阜観衆の前で出走するヤリス WRC2019 年に開催されたテストイベント「セントラルラリー愛知・岐阜」