ラリーを通じて森林の国の
NISULA FOREST OY/ニスラ・フォレスト

第5回 NISULA FOREST OY/ニスラ・フォレスト
ラリーを通じて森林の国の"林業技術"を発信する
2021.5.26 公開

うっそうとした木々の間を、疾走するラリーカー。
モータースポーツの写真・動画の定番ともいえるシーンです。

世界のあらゆる道を駆けるWRCですが、
北欧でのラリーでは美しい森林の道が主な舞台となります。

ことにWRCの主要な開催国で、
TOYOTA GAZOO Racing WRCチームの拠点もある
フィンランドは別名"森と湖の国"と呼ばれるほど自然が豊か。

この森を大切にする国で林業を支える企業が、
私たちのパートナーなのです。

NISULAは、今、変わりつつある日本の林業にも、
影響を及ぼす企業かもしれません。

彼らの秘めたる"技術"と"力"をご紹介します。

SECTION1ラリーと自然を共存させる国が育んだ林業技術

フィンランドに開発拠点を置くTOYOTA GAZOO racing World Rally Teamにとって、フィンランドは日本に次ぐ第2の「ホームカントリー」です。そのフィンランドでは昔からラリーの人気がとても高く、国民的なスポーツといえます。また、フィンランドは「森と湖の国」と呼ばれていますが、森は人々の生活の一部であり、林業も非常に盛んです。
そのフィンランドの林業において重要な役割を担っているのが、TOYOTA GAZOO racing World Rally Teamのパートナーである「NISULA」ことニスラ・フォレスト社の林業機械です。特に、主力製品である「ハーベスタヘッド」と呼ばれる機械は、立っている木をつかんで伐木し、そのまま枝を払って切断するなど造材し、積み込みまで行なう高性能な機械なのです。北欧では林業の機械化が進んでおり、「ハーベスタヘッド」のような機械は世界中の林業で使用され、北欧各国の重要な輸出産業になっている程です。

WRC 2019年 ラリー・フィンランド
WRC 2019年 ラリー・フィンランド

NISULAのカッレ・マットソンさん(社長兼営業部部長)は、フィンランドの人々にとっての森の重要性を次のように説明します。

「フィンランドは総土地面積の約75%が森林に覆われています。森には魔法のような雰囲気があり、フィンランドの人々の魂は常に森と結びついているのです。グリーンは落ち着きますし、木の葉のやさしいざわめきは音楽のようです。夏はハイキング、冬はクロスカントリースキー、ベリーやマッシュルームの収集、森の中の散歩など、森はフィンランド人の日常生活の一部なのです」

カッレ・マットソンさん(ニスラ・フォレスト 社長兼営業部部長)[photo by NISULA]
カッレ・マットソンさん(ニスラ・フォレスト 社長兼営業部部長)[photo by NISULA]

言うまでもなく、ラリーも森の中の道が舞台となります。森は計画的に伐採を行うことで良い状態が保たれますが、木を1本1本チェンソーで切るのはあまり効率的ではなく、危険も伴います。また、それを丸太に整えて並べる作業も大変な労力を要しますが、その一連の作業をハーベスタヘッドが担うことで、大幅な省力化をはかることができます。そのため、北欧の国々ではハーベスタヘッドなど高性能な林業機械が重宝されており、多くの会社が性能とシェアを競っていますが、NISULA社も高い評価を受けている会社のひとつです。

  • photo by NISULA

    [photo by NISULA]

  • photo by NISULA

    [photo by NISULA]

「林業機械もラリーカーも、設計と製造に特別な専門知識が求められるハイテク製品です。ビジネスの世界で前進したいのであれば、高品質な製品を送り出すだけでなく、ブランドの構築にも力を入れる必要があります。我々はまず、2016年にフィンランド人ドライバー、ユホ・ハンニネン選手のサポートを開始し、彼が2017年の終わりにチームのテストドライバーとなった時にTOYOTA GAZOO racing World Rally Teamとのパートナーシップを締結しました。NISULAのブランドを世界的に前進させるための、最も重要な方法の1つだと考えたからです」

  • WRC 2017年 ラリー・フィンランドでのユホ・ハンニネン選手

    WRC 2017年 ラリー・フィンランドでのユホ・ハンニネン選手

  • [photo by NISULA]

    [photo by NISULA]

SECTION2TGR WRCチームが取り持つフィンランドとの絆

ちなみに、NISULA社はチームの本拠地があるフィンランド中部のユバスキュラから、南西に約80km離れたヤムサ市に本社があります。ヤムサ周辺にはWRCラリー・フィンランドのステージが数多くあり、特に50mクラスのビッグジャンプで知られる「オウニンポウヤ」のステージは、ラリー・フィンランドの象徴ともいえるものです。森の中をハイスピードで駆け巡るヤリスWRCのボディに輝く「NISULA」のロゴマークを見て、NISULA社に親近感を抱いたり、信頼感を高める人もきっと少なくないでしょう。

  • WRC 2017年 ラリー・フィンランド

    WRC 2017年 ラリー・フィンランド

  • 今シーズンのヤリスWRC

    今シーズンのヤリスWRC

「トミ・マキネンさんが率いてきたチームとの協力関係は、ここ数年非常に素晴らしいものでしたし、彼にはとても感謝しています。そして、マキネンさんの後を引き継いだヤリ・マティ・ラトバラ新チーム代表が率いるチームとも、今後も良好でオープンな協力関係が続くと確信しています。最近では才能のあるフィンランド人、ミッコ・ヘイッキッラ選手のサポートも開始しましたが、彼はヤリスWRCの開発テスト時にはハンニネン選手のコ・ドライバーを務めていますので、TGRファミリーの一員だといえます」

SECTION3変わりつつある日本の林業に貢献したい

今後ますますNISULA社とチームの関係性は深まっていきそうですが、ヤリスWRCを通してNISULA社の製品を知った日本のファンや林業従事者の方も少なくないと思います。特に現在の日本林業は機械化を通じて、新たなステップに進化している最中にあります。まさにNISULA社の持つ技術、機械は注目されるはずです。今後の日本での事業展開について、どのように考えているのでしょうか?

  • photo by NISULA

    [photo by NISULA]

  • photo by NISULA

    [photo by NISULA]

「日本は、ハーベスタヘッドにとって非常に大きな市場です。私たちは既に日本でビジネスをスタートしていますが、近い将来、日本での事業をより強化するために、弊社の製品の新しい輸入業者を見つけるべく多くの努力をしているところです」

今年、愛知県と岐阜県の森でラリージャパンが開催されたら、NISULA社にとっても良いプロモーションの機会になることでしょう。もうしばらくしたら、森の中でNISULA社のロゴマークがついた林業機械を発見するチャンスが増えるかもしれませんね。