TOYOTA GAZOO Racing | 5大陸走破プロジェクト

南米大陸は、たくさんの気づきを与えてくれた。高山病になるほどの標高にある町で求められるもの。風が吹き荒れる自然のなかで求められるもの。整えられた開発の環境のなかでは想像すらできなかった経験がここにはあった。この肌で感じたことを、これからのクルマにどう生かすか。闘志に火がついた。

No.01

視界を遮り、車内へと入り込む土埃

Invasion of desert

No.02

視界を遮り、車内へと入り込む土埃

Invasion of desert

No.02

視界を遮り、車内へと入り込む土埃

Invasion of desert

No.02

視界を遮り、車内へと入り込む土埃

Invasion of desert

No.02

視界を遮り、車内へと入り込む土埃

Invasion of desert

No.02

視界を遮り、車内へと入り込む土埃

Invasion of desert

Gallery
  • 走破地

    南米大陸

    アルゼンチン ∕ ボリビア ∕ ブラジル ∕ チリ ∕ コロンビア ∕ エクアドル ∕ ガイアナ ∕ パラグアイ ∕ ペルー ∕ スリナム ∕ ウルグアイ ∕ ベネズエラ

  • 走破距離

    20,000km

  • 走破日数

    84日間

    2016年8月21日 - 9月15日 2016年9月23日 - 10月20日 2016年11月7日 - 12月6日

  • 走破メンバー

    120名

  • 走破車両

    のべ16車両

    ハイラックス Sキャブ ∕ ハイラックス Wキャブ ∕ フォーチュナー ∕ エティオスSD ∕ エティオスHB ∕ カローラ ∕ RAV4 ∕ プリウス ∕ ランドクルーザー200 ∕ ランドクルーザー70 ∕ ハイエース ∕ ヤリス ∕ プラド ∕ レクサスLX ∕ 4ランナー ∕ タンドラ

no01

Navigating the land of sand

視界を遮り、車内へと入り込む土埃

 埃の質が、日本と南米大陸ではまったく違う。ダートを走ると土埃によってフロントガラスが白く煙り、対向車が来ているかどうかさえわからなくなる。乾燥していれば非常に細かい埃はクルマの中に入り込み、雨が降れば粘土となってタイヤにまとわりつく。ブラジルのアマゾンを切り開いたプランテーションの町を走りながら、お客様品質部の梅津は通常よりも車間距離を長く取って安全を確保しつつ、こう話していた。「もしも日本でこの道の写真だけを見せられたら、特別な場所なんだと思ってしまう。でも、ブラジルでは一本入ったら、猛烈な土埃が巻き上がる。この道が、生活道なんですよね。その事実を体感しています」

 細かな土埃が車内に入りこんでしまうという問題は、ブラジルだけに限った話ではない。その他の南米の国々でも同様の問題を抱えていた。特に国土の75%が未舗装路と言われるボリビアでは、走破隊の白い車体が半日と持たず茶色くなってしまう。ダートを2日連続ハイラックスで走った車両技術開発部の安達は、こうこぼしている。「乗り込んだときには綺麗だったオーディオパネルが、2時間走っただけでうっすらと埃を被り、汚れてくる」アルゼンチンでも大きな問題となっていたのは、車内に埃が入り込むダストエントリーだった。車両技術開発部の上野は、リアシートバックの脇から﹁モクモクと侵入してくる埃﹂に衝撃を受けたと語った。窓を閉め切って内気循環にしていたとしても、うっすらと細かな土埃が積もっていく。それぞれの国で多寡の差はあれども、とにかく埃の細かさを実感する旅となった。エアフィルターを交換する頻度も、日本で想定されている10倍という国がほとんどだった。毎日清掃をしている走破隊でさえ、車内にうっすらと埃が積もっていくことに嫌気が差す。けれど、その土地で暮らす人々は、この状況が日常なのだ。ある者はシートの裏側まで写真に収め、ある者はその細かな土埃をペットボトルに入れて日本へと持ち帰っていた。体感した問題は、もう他人事ではない。なぜならばあの道を走っている現地の人々の顔が浮かび、“あの道”の体感が今も残っているからだ。

生活道で巻き起こる、土埃のホワイトアウト

モクモクと侵入し、うっすらと積もる

改善のきっかけとなる、あの道の体感

CREW’S VIEW 南米大陸で隊員たちが得たもの

独自の埃入り対策として、ベントダクトに厚さ40mmのスポンジを取り付けていた。しかしここの砂埃は非常に細かいようで、スポンジでは目が荒すぎ、効果が薄いそうだ。今度はエアコン用フィルターを取り付けトライしてみるとのこと。ブラジルの路面の砂は非常に細かく、砂と言うより粉に近い状態。粒子が小さく難しいようにも思えるが、「他メーカーはここまで入らない」とディーラーも現地クルーも口にするということは、技術的には解があるのだろう。 2016.8.25 田原工場 品質管理部 / 藤島裕一 未舗装路が65%も占めるボリビアでは、ドアハンドルだって当然土埃まみれ。車に乗り込もうと手を掛けた時、一瞬嫌な気持ちになってしまう。例えばワイヤレスキーのロック解除ボタン長押しでドアが少し開いてくれたら手が汚れずに乗車できるかもしれない。そんなことを考えていた時に乗車したLC200とLX。バックドアだが、インナーハンドルのおかげで手を汚さずに閉じれたのは嬉しかった(でも開く時はやっぱり汚れるのだが)。 2016.10.11 車両技術開発部 / 金森貴史 走行後の室内の汚れが気持ちよく無い。ここに来るまでのほとんどのガソリンスタンドにはモップがある。窓が頻繁に砂まみれになるので、それを洗い落とすために置いてあるのだ。こんなところからも、現地での使用環境がよくわかる。 2016.11.18 鋳造生技部 / 上本昌彦

no02

Nothing is the same at high altitude

クルマの限界を見た、高地

未知の経験を求めて訪れた南米の中でも、“高地”での走破は、まさしく日本から遠く離れなければ体験できないものだった。ペルーは首都のクスコでさえ、標高が3400m。旅の最高地点となったチリのアタカマ天文台へと向かう途中、5000mを越えたあたりで、車両技術開発部の森本が運転していたRAV4が停まった。高地による酸素不足が、クルマに影響してしまった。「クルマがクルマとしての機能を停止する境を、テストコース以外で初めて体験することができた」と、自身の体験を振り返る。クルマだけではない。運転者のほとんどが、酸素ボンベをつけながらクルマを走らせている状況。まさしく極地なのだが、そこでもトヨタ車を走らせてはたらいている日本人がいた。東京大学アタカマ天文台(TOA)へと案内してくれた吉井教授は、﹁こんなところにもエンドユーザーがいることを知ってください﹂と語っていた。「トヨタ車は、

このTOAプロジェクトの一員なんです」という激励の言葉に、クルマを作ることの意味を考えるメンバーたち。“クルマの限界”と表現する際にさまざまなベクトルがあるが、“高度”という視点は日本人には持ち難い。だが、「ここが本当に4000m級なのか、街中に比べると幹線道路の路面が整備されていてビックリした」と車両技術開発部の立松が語るほど、富士山の標高を超えるような地点にも人々の営みはあって、クルマを必要としている。頻繁に繰り返されるアップダウンでは、ガソリン車のパワー不足が議題に上がる一方で、ディーゼルエンジンの性能を改めて見直す結果となった。土地に合ったクルマについて話す日本人メンバー。しかし、現地クルーからはパワー不足を指摘されることはない。それは運転の仕方の違いから来るものではないかと車両技術開発部「ペルーではカーブミラーをほとんど見ることがないですよね。事故への意識がとても高かったり、他車への意思の伝達が日頃から上手なんでしょう。追い抜きの際にもコミュニケーションをし合っているのを感じます」では、日本と南米、どちらの意見に合わせてクルマを作るべきなのか?そもそも誰もが満足するクルマを作ることはできるのか?求められる基準は一つではないことを如実に感じた高地での体験。新しい指標を体の深い部分に植え付けることになったはずだ。

標高5640mのアタカマ天文台へ

高度の影響を語り合うメンバー

高地という、新しい座標

CREW’S VIEW 南米大陸で隊員たちが得たもの

高地ではパワーが無くなりブレーキも効きにくい。それに加えて、空気が薄くなることでの滑空感を知ることができた。4500mの高さでは、信じられないくらい空走する。それもあり、下りではエンジンブレーキを多用するが、シフトがD→S→Bと経由しないと強いエンジンブレーキに辿り着けない。曲がりくねった下りでは、手を離さなくてよいステアリングにBレンジ相当の切り替えボタンがあると嬉しい。2016.9.27 MSボデー設計部/国政孝幸 本日はHILUXディーゼルに乗車。海抜ゼロから4000mまで駆け上がる。ずっと一人で運転している訳ではないが、やはり高地にくるとパワーが落ちるのがよく分かる道。本社の、一番パワーの出る状態で行う坂路評価だけで○を出してたら、この国では通用しない。ちゃんとどこまでパワーが落ちるのかをしっかり考えた上で判断していかなければ、アンデス山脈のユーザー期待値は超えられない。2016.10.5 ドライブトレーンシステム統括部/尾渡正和 3000m級の山岳路を走行!所々に落石があるが、路面は整備されていて走りやすい。街中はバンプ&ポットホールなどで荒れており、走りづらい。今日はプラドに試乗した。ばね上の収まり、各操作系の遅れに少々手こずった。昨日同様、現地クルーたちの第1プライオリティは、ワインディングにおける追い越し時のパワーであると感じた。もっと細かく車を知るとさらに要求性能が高くなっていくだろう。2016.9.28 凄腕技能養成部/田中英幸

no03

Stormy winds challenge the driver

台風が毎日あるような、風

風が引き起こす、運転の疲労

風のノイズで、聞こえづらい

風の中見つけた進化のための種

 ブラルジルとパラグアイの国境へと向かう途中、台風かと思うほど風が強くなった。直線にもかかわらず、ステアリングが安定しない。高い運転技術を持つ凄腕技能養成部の関谷でさえ「トラックとのすれ違いであおられると、微妙なステアリングの修正が必要とされるんです」と語るほど。イグアスの滝を挟んだ対岸のアルゼンチンでは、その風はより強く吹いていた。特に南端に近いパタゴニアでは、立っているのも困難なほどに、強い風が吹き続けている。必然、クルマの運転にも影響は強く出てくる。車両実験部の奥村は、横風によって路肩へのロールオーバーの危険性さえ感じたという。「対向車とのすれ違う際の風圧の変化や高速域での追い越しなど、とても気を使います。気を許す間がないために、長時間の運転では疲労が蓄積してしまう。日本ではなかなか味わえないシチュエーションで、高速直進性、横風安定性がいかに重要であるか、まさしく現地現物で体感することになりました」普段は気にならないディテールが風の強さのためにクローズアップされる。運転性能だけでなく、車内の快適性にも関わる話だ。鋳造生技部の上本は、センターピラー上部あたりからの風切りノイズが、どうしても気になってしてしまう。おしゃべり好きのアルゼンチンの人々もやっぱり室内のノイズには敏感

だったと振り返った。ハイラックスではそれほど気にならなかった風がハイエースではもろに横風を受けてしまうなど、ボディサイズ、あるいはパワーによって風の影響は異なる。その受け取る体感の差も、毎日、違うクルマに乗り込んで走破を続けているからこそ、わかることかもしれない。日本ではシーズンに1度か2度体験するかどうかの強風が、ほとんど毎日吹き続ける。車両実験部の奥村が指摘するように、強風は危険を容易に引き起こし得る。クルマは、何を想定し、どこまで準備すればいいのか。風によって横転してしまったときのためのカーテンシールドエアバッグが必要なのか。それとも強風を前提としたパワー、あるいは風を避ける空力デザインをもっと洗練させるべきなのか。あるいは、そのすべてなのかもしれない。強風の中を毎日走ることで、走破隊は進化のための種を見つけた。現地現物はいつも、想像を超えている。

CREW’S VIEW 南米大陸で隊員たちが得たもの

no04

Local voices make our cars better

現地の言葉は“改善”の宝庫

 5大陸走破プロジェクトの一つの目的は、日本とは異なる自然環境の中で、クルマがどうやって使われているかを知ることにある。その使われ方が極端であればあるほど、「もっといいクルマ作り」へのヒントになるはずだ。ブラジルでは、ブルーマカウという絶滅危惧種の青いインコの保護活動をしている人々と共に野生動物が暮らすオフロードを走った。トヨタはブルーマカウ・プロジェクトの活動の初期からサポートしている。雨季には水位が30cmにもなるような砂地を走り、CV車両実験部の大泉は、過酷な状況下では先端技術が求められているわけではないことを知る。「彼らがクルマに求めているのは、ノーエレクトロニクスでした。パワーウィンドウもA/Tも、水が侵入して壊れてしまう可能性が高いのであれば、使うことができない。自分たちで直すことができる単純な構造が求められている」

ボリビアのウユニ塩湖では、現地のガイドから話を聞くことができた。彼らが過酷な環境で使う道具として選んだのは、やはりランドクルーザー。塩湖や砂地、あらゆる条件下で走行することを考えると、ランクル以外には考えられないという言葉をもらった。ただし、塩によるサビや、目一杯の荷物を乗せて荒地を走ることから足回りのパーツを3ヶ月に一度換えなければならないなど、激しい使い方を聞くうちに、メンバーの表情が厳しくなる。﹁ランクルの敵はランクル。終わりのないクルマなんです﹂と車両技術開発部の宮崎は語る。チリのアタカマ砂漠では5000mを超える高地で走るハイラックスと出会

い、世界最大規模のエスコンディーダ銅鉱山では300台が働き続けている。ブラジルのプランテーションではサトウキビやジャガイモを積載し、アルゼンチンの油田では月に3000kmもの距離を走る。その土地によって使われ方は違い、必然、ダメージを受ける箇所も変わってくる。バンパーが外れ、足回りがへたり、小石によってボディに亀裂が入り、塩害に悩まされる。その過酷な使用環境を実際に走り、直接話を聞くことでしか伝わらない事柄がある。同時に、世界の果てのような極地にもエンドユーザーがいることの喜び。トヨタで働く者にとって、これほどの矜持はない。

野生動物を保護するために

塩の湖とランクル

野生動物を保護するために

CREW’S VIEW 南米大陸で隊員たちが得たもの

我々は試験車を大切に扱う様に教わった。評価でダート走行をした後は直ぐに洗車したり、試験車を駐停車する時はハンドルを真っ直ぐにして止めたりすることが当たり前。現地クルーの指摘で気になったことがある。ベルーでは左ハンドルのため、運転手がシートポジションを変えようとすると腕時計が邪魔になるという声である。普段、トヨタで行う検査の際には車両を傷つけないように腕時計を外すのが決まりだ。過去の常識に縛られ過ぎるのは危険な匂いも…。2016.10.1 車両技術開発部 / 森本知昭 ウユニ塩湖のユーザーにインタビュー。実際に車両を見せてもらうと想定外の使われ方が多数あった。オイル漏れかと思うほどベタベタのエンジンルーム。実は塩害防止のために、軽油を混ぜたものを塗布しているらしい。またバッテリーは固定用ステーが壊れたため、自作ダンボールボックスで処置。安全に走行してもらうためにはメーカー推奨の使い方があるが、そんなものは一切通用しないと痛感。メーカー側が想定の範囲を広げ、歩み寄るしかないのかと…。2016.10.10 三好工場・明知工場工務部 / 安永秀俊 この日伺ったOILカンパニーではトヨタ車を使い、30万キロを使い切る。日々オフロードメインの構内を行き来し、OILラインのメンテでは斜面を登るなどタフさを求められ、ロールバー、アンダーガード、 泥ヨケが当たり前に付いており、ダート、ラリー車両のようになる。国地域、ユーザー毎に要望は多様だろうが、破損防止や便利な機能を追加していることに違いはない。情報共有し、ベース車両への反映やオプション提案の充実につながると良い。2016.11.15 鋳造生技部 / 上本昌彦

no05

Driving straight for hours

日常のロングドライブ

長い距離が実感を伴う

真っ直ぐが一番難しい

直線の高速のオーバーパス

路肩で牛が寝るハイウェイ

広大な南米大陸で様々な国を走ったメンバーたちが口を揃えてその体験の価値を語るのが、とても長い距離クルマを走らせたという事実。1ヶ月以上もの間、毎日およそ400km〜600kmもの距離を運転する。日本ではロングドライブだが、街と街との距離が離れている南米では、そのロングドライブが日常。ブラジルを走った第2先進安全開発部の水瀬は、「自分でも長距離を走ることで、クルマの細かな運転のしづらさ、それによる疲労をお客様と同じように感じることができる」と語った。

 広大な南米大陸で様々な国を走ったメンバーたちが口を揃えてその体験の価値を語るのが、とても長い距離クルマを走らせたという事実。1ヶ月以上もの間、毎日およそ400km〜600kmもの距離を運転する。日本ではロングドライブだが、街と街との距離が離れている南米では、そのロングドライブが日常。ブラジルを走った第2先進安全開発部の水瀬は、「自分でも長距離を走ることで、クルマの細かな運転のしづらさ、それによる疲労をお客様と同じように感じることができる」と語った。アルゼンチンでは、「ハンドルをまっすぐにしての走行が80分続いた」と、車両技術開発部の村松。そして、「真っ直ぐ走ることの大切さを実感した」という。直進安定性こそがクルマの基本だと、5大陸走破プロジェクト3度目の参加となる凄腕技能養成部の関谷は言う。
「長い距離を走ると、普段ならば気にならない箇所が気になってくるんです。特に直線はクルマにとって基本であると同時に、一番難しい道。何も気を遣わずにまっすぐ走ることのできるクルマを作らなくてはいけない」直線での追い越し時には、日本ではなかなか気づきづらいパワー不足を実感する。ペルーのナスカへと向かう直線、ハイエースに乗車した車両技術開発部の早川は、追い越しでかなり気を使ったとこぼした。「日本では追い越し専用レーンを使うから多少の余裕があるけれど、反対車線に出て追

い越しをするペルーでは、時速100km以上で迫る対向車の合間を縫って、一気に前のクルマをパスする必要がある。」南米でグッと加速するパンチ力のあるクルマが好まれる理由はここにあった。ただし、チリの4000mを超える高地では、加速力が失われたという報告もある。直線路が延々続けば、スピード感覚も麻痺してくる。時速100km以上もの高速で対向車とすれ違い、追い抜きをかけてくるクルマは時速150kmを超えている。それなのに、ブラジルではハイウェイのすぐ脇を人が歩いている。「ガードレールもない路肩では動物がくつろいで、スマホを見ている少年がいる。その隣を時速100kmのクルマがビュンビュンと走っていく不思議な光景でした」と第2先進安全開発部の水瀬。ロングドライブによって南米大陸に体を馴染ませることで知った“日常”は、新たな“安全”への契機となるだろう。危険な道路条件の下では、クルマが安全を担保する必要がある。

CREW’S VIEW 南米大陸で隊員たちが得たもの

本日の担当セクションで厳しかった直線。ほぼ1時間、ステアリングを切るのは追い越しの時だけ。LKA(レーンキーピングアシスト)があれば楽なのに、と思っていると、路側のラインがなくなる。クルーズコントロールもあったが、あえてOFFで走行してみる。自分に合ったアクセル踏力で快適だったが、アクセルを保持する力が強くても弱くても車速管理が難しく、ストレスになると感じた。普段何気に踏んでいるアクセルだが、コントロール性はやはり大切であると感じた。2016.11.29 車両技術開発部 / 鷲見浩文 AHB(オートマチックハイビーム)はあって欲しい装備の一つだと感じた。ブラジルの高速道路、特に片側1車線を走る際に気をつけなければならないのが﹁追い越し﹂。昼間はまだしも、夜間になると反対車線からクルマが来ていないか非常に判別し辛い。安全に追い越しを実施するためにも、ハイビームを使って前方を探るのがブラジル流(日本もですが。)2016.8.30 レンタリース事業部 / 宮﨑賢太朗 横風を受けポッドホールをかわしながらのオーバーパッシング。昨日と同じ国道40号線ですが、ポッドホールが増え、路肩側も崩れたままで路面修復も行き届いていない。対向車が来ていると避けきれずに100km/hでポッドホールを踏んでしまう。道路にはバーストしたタイヤ破片が落ちていました。駐車場で各車のタイヤを見ると何台かサイドウォールに擦れ跡が見え始める。タイヤの耐久性やステアリング応答性がとても重要だと感じます。
2016.11.15 凄腕技能養成部 / 佐々木正徳

no06

Different cities,
Different needs

市街地で運転作法を学ぶ

高度や地形など、大地そのものに関わる自然環境が異なるだけではない。都市環境も日本では想像もできないような違いに驚かされることの連続だった。例えばペルーのリマ市内。モトタクシーと呼ばれるオート三輪や乗り合いバスが入り乱れ、初めて見る光景にコーポレート戦略部の上田は戸惑いが隠せない。「急な割り込みや急停止が当たり前の世界。信号機が故障した交差点もポットホールだらけの荒れた路面も、

標識なしで突然現れるスピードブレーカーも、放し飼いの犬の飛び出しも、リマのドライバーには日常の1シーン」では、日本の常識では考えられないような光景に出会ったときにどうすればいいのか。冷静に安全を担保しつつ、その土地を案内してくれたドライバーたちから吸収すればいい。ブラジルのサンパウロでは「車線変更ですり抜けていくバイクを巻き込まないように注意し、ミラーを当てられないように狭い車線でもなるべく幅をあけておくことを学んだ」と、第2先進安全開発部の水瀬。現地ドライバーの運転の仕方を知ることは、その国のクルマの使われ方を知ることでもある。アルゼンチンのブエノスアイレスでも、狭い路地で安全を確保しながら走っていたら、「現地の一般車に抜かされていった」とコーポレートIT部の

野中は言う。アルゼンチンでは8割がMT車であり、ドライバーはとてもレース好きの国民性だという話が腑に落ちた。市街地を走ることはそのまま、その国にどんな人々が暮らしているのかを知ることでもある。南米では、市街地でクルマが止まる度、果物売りの子供や窓を拭こうと試みる人々がひっきりなしにやってくる。ブラジルを走った車両技術開発部の松尾は、最後のミーティングで現地のメンバーが語った言葉にとても感銘を受けたという。「荒れた道がたくさんあるけれど、道は国が作るもの。僕たちには作れない。でも、その道にあったクルマを自分達は作ることができる」同じ志を持つ仲間が南米大陸でも実直にクルマと向き合っていることに胸が熱くなる。ポットホールだらけのひどい渋滞の市街地は、それだけクルマを必要とする人々がいるという証なのだ。

都市の違いは、国民性の違い

現地ドライバーに運転を学ぶ

アルゼンチン人はレース好き

道は作れないクルマは作れる

CREW’S VIEW 南米大陸で隊員たちが得たもの

サンパウロ市内の小高い丘の上には、たくさんの人が住み、傾斜も急だ。この傾斜に路駐している車への乗り込み、あれあれ、どこを持てばいいのか迷ってしまう。ランクルやタンドラなど、デカイ車には当たり前のように付いているBピラーのグリップが無い。上り坂ということがこんなに苦痛を引き起こすとは考えられなかった。ここでは坂道が日常化しており、ONE FAMILYとして手助けしたい。特に主流の小型乗用車にもオプションでもいいから選択肢を提供したい。 2016.8.23  電子制御基板技術部 / 白濱信幸 走破中に見かける一般車両を見ると、輸入された中古車を左ハンドルに改造した車が多い。特にボリビアに入ってから見るクルマは半分ぐらいがそうなのではないか。特に人気のあるのが「カローラバン」。リアサスがリーフサスであることが人気の理由だそう。日本から輸入され、中古車として販売される価格は約$7,000ドル。後継車のプロボックスの方が人気が無く、安い。日本では﹁新しい方がいい﹂が普通だが、この国では通用しない。 2016.10.10  車両技術開発部 / 早川幸輝 通りすがりの街は、現地クルーからの情報によると、アルゼンチンの中でも貧しい部類に入る街らしい。路面はガタガタ。補修してあっても、傷んだ部分だけを直すから、波状路みたいに定期的に振動が伝わる。子供が果物をドライバーに「買ってくれ!」と言っている。街並みや建物を見ても、発展途上な地域だと分かる。そういった地域でも売れる車の値段、物凄く考えさせられる。 2016.11.28  ユニット先行制御システム開発部 / 近藤央

この星は、風の惑星だ。