ナンバー1

日本とは違う道にあった、小さなヒント。

2014.09.03 - 09.11 From Melborne to Ceduna

初対面のメンバーも多い旅で結束を固めるべく、チーム1のリーダー・斉木さんは出発直前にミーティングを開いた。それぞれが熱い思いを吐露する中、もっとも印象的な言葉を残したのが、オーストラリア側のサポートスタッフである二村さんだった。「安くて良いものを作るということは、本来矛盾しているでしょ?良いものを作るには知恵と時間がかかる。つまり人件費というコストがかかって、普通なら高くなってしまう。でも、そのロジックを成立させる唯一の方法が、仕事を好きになること。つまり、クルマを好きになること。好きなんだから仕事を離れてクルマのことを考えたって誰も困りませんからね。オーストラリアは、言葉ではなくクルマの楽しさを身体で感じることのできる環境だと思います」。二村さんの言葉の通り、メルボルンの街を出ると日本との環境の違いにすぐに気づく。未舗装路こそ出て来ないが、道路事情はかなり悪い。海沿いをワインディングが続くグレートオーシャンロードの後には多雨地域が広がっていた。雨が降るために草が生え、牧畜が盛んだった。ミルクを運ぶ重いクルマのために、アスファルトが痛んでいく。車中のノイズが気になると、メンバーたちは駐車する度に道路へと手を当ててみる。この道路事情ならば必要となるのはどんな性能なのか? 耳から手へ、手から脳へと思考を伝達させて行く。

悪路とディテールの関係について。

マウント・アイブという南部の中継の拠点から北に位置するレイク・ガードナーまでの道は、LandCrusier70(ランクル70)の能力を存分に発揮するダートだった。Crestと呼ばれる先の見えない丘を越え、家畜用の柵があるために段になっているGripを抜け、落ち込んだDipをいくつか通ると目の前に、真っ白の塩湖が広がっている。車両環境と呼ばれる“悪路”を専門とするメンバー、野方さんは、クルマを降りるとすぐにドアを開け、塗装抜きのための小さな穴をチェックしていた。窓を閉め切った状態でも室内に埃が入ってしまうのは、その塗装抜きの穴などの細部から微かな粉塵が入り込むからだ。やはり細かな塵が付いている。室内を快適に保つためには、シーリングのもう一工程が必要だと語る。密閉性は快適性を担保する要素のひとつであることを再認識していく。塩分濃度の高い水の中を走り回り、いくら水洗いをしたとしても、入り組んだ下回り部品の奥にはどうしても塩が染み込んでしまう。想像以上の過酷な環境。撮影の後には、エアフィルターにまで塩の結晶がこびりついていた。

車内に響くノイズの正体は?

ダートの帰り道では、まるで雨が降っているような音が車内に響いた。往路ではまったく音がしなかったのに、シャーシャーという音がどこから来るのか? どうやら撮影中に降った雨が原因らしい。細かい塵が雨で固められ、タイヤのパターンにはまって巻き上げてしまうスプラッシュノイズ。自然環境のわずかな変化がノイズとなってクルマに影響する。走行自体に問題があるわけではないが、このスプラッシュノイズをいかに軽減するのか。あらゆる路面に対応できるタイヤのパターンなど存在しない。ランドクルーザーがなぜオーストラリアでは必要とされるのかが深く理解されると同時に、さらに高みへと登るためのヒントがいくつか見つかった。

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