ニュルブルクリンクへの挑戦 2013
VLN2レポート

2014.03.17 ニュルブルクリンクへの挑戦2013

「ニュルブルクリンク24時間レース」へ向けた貴重な実戦テストの場である「VLN2(ニュル耐久選手権・第2戦)」、GAZOO Racingは大幅なリファインを施したLFA、昨年デビューした24時間レースで得られたノウハウをフィードバックした2台の86で臨んだ。

木曜日の夕方、ピットへ3台のレースカーが運び込まれると、他チームのベテランメカニックが「LFAはどんなチューニングをやってきたんだ?」と話しかけてきた。シルバーメタリックが加わったカラーリングも新しさを感じさせるが、よりワイド化されたボディがひときわ目を引く。そして、外観上は分からないが110kg近い軽量化がなされたことが最大の変更点である。富士スピードウェイのテスト走行ではラップタイムが向上、メカニックもドライバーも期待感と共にニュルへ乗り込んできた。一方の86も約60kgの軽量化や各部のブラッシュアップが施され、昨年実証されたコーナリングスピードに加えてアベレージスピードの向上が期待された。

土曜日午前8時30分、冷たい雨、気温11℃/路面温度9℃という春らしからぬ気候の下で予選が始まった。終盤には走行ライン上をスリックタイヤで走行可能なコンディションとなったがチームの判断で3台ともに無理なプッシュをせず、決勝へ向けた足回りの調整などに主眼を置いた。LFA#140は影山正彦選手、石浦宏明選手、大嶋和也選手、86#280は飯田章選手、井口卓人選手、蒲生尚哉選手、86#281は木下隆之選手とトヨタ社員テストドライバーの矢吹久選手、平田泰男選手がそれぞれのプログラムを着実にこなしながらトラブルなく走行を重ね、LFA#140が総合31位/クラス3位、86#280が総合84位/クラス2位、86#281は総合86位/クラス3位のタイムで予選を終えた。

初戦が降雪でキャンセルされたため「VLN2」が実質的な開幕戦、「24時間」へ向けたテストのチャンスが今回と「VLN3」を残すのみとなり、上位を狙う有力チームのピットには本戦さながらの緊張感が漂っていた。GAZOO Racingは今年も“いいクルマづくり”を目的に掲げ、チームにはまた新しい社員メカニックが入ってきた。経験者と新人がレースならではの特殊な技術やものの考え方、それを支える“決して諦めない”気持ちをレースを通じて伝承していく。「普段の仕事場では得られないことがここには山のように存在する」と誰もが語り、「得たものをこれからのクルマづくりに活かしたい」と願うようになる。これが、GAZOO Racingが2007年からニュルに挑戦する最大の理由である。

晴れ間がのぞくものの気温11℃/路面温度12℃と肌寒い中で12時23分に4時間耐久レースがスタート。LFA#140は影山選手が直ぐにクラス2位へとポジションを上げ、クラストップのフェラーリ458をテール・トゥ・ノーズの僅差で追いかける。ピットインして石浦選手へ交代、メカニックが迅速にタイヤ交換と給油を終えてコースへ。次の周にフェラーリ458が同様のピットを終えてコースへ戻った時にはLFA#140がクラストップを維持、関谷チーフメカニックが控えめに笑顔を浮かべた。ゴールまで1時間余りとなった15周目、石浦選手がピットガレージへLFA#140を入れた。総合25位/クラストップを走っていたが、「24時間」へ向けて異なるセッティングをトライするためにサスペンションを交換、メカニックは給油を含み約15分間で大嶋選手をコースへと送りだした。チーム全員がモニターに注目する中、大嶋選手は1周目からベストラップを更新、ハンドリングバランスの向上が確認された。チーフドライバーの影山選手は、「国内テストはしたがやはりニュルは特別。荒れた路面を実戦で走りながらセットアップを進めていかないと本戦は戦えない。レースに出ながら変かも知れませんが結果よりもクルマを進化させることが重要で、このニュルでしか得られないデータ、ノウハウを最終的にはトヨタの“いいクルマづくり”に繋げていきたい」と語った。LFA#140は最終ラップに2日間のベストタイムを記録し総合29位/クラストップでチェッカーを受けた。

発売前の2011年秋に「VLN9」に出場、昨年は「24時間」デビューをクラス優勝で飾った86は、そのコーナリングスピードの速さが総合上位のドライバーの間でも話題になるほどだった。今年は2台共に約60kgの軽量化を施されてニュルへ運び込まれ、LFA同様に本戦へ向けたセットアップを行った。昨年、86と共に初めての「24時間」を走った86#280の井口選手はレース後、「軽量化によってアベレージで10秒くらいペースアップした感覚です。ここからはセッティングでどこまで速くできるかが楽しみです」と笑顔を見せた。ニュル挑戦22年目の木下選手は、「これまで乗ってきたレースカーと絶対速度の違いに戸惑いはありますが、86は本当にコーナーが速い、上位と変わりませんからね。予定通りにセットアップは進んでいます。我々の活動で得たノウハウが世界中の86オーナーのチューニングのお手本になるように頑張りたいですね」と熱く語った。ドライバーのコメントが示すように86も有意義な週末を経て最後の“実戦テスト”である「VLN3」へと向かう。

「24時間レース」前哨戦の第一弾には214台がエントリー、193台が決勝へ出場し132台が完走、61台が涙を飲んだ。レース終了後、各チームは早々に車両と機材をトランスポーターへ積み込んで足早にサーキットを後にした。本戦へ向け技術と情熱を注ぐ戦いは5月19日16時のスタートの瞬間まで休む間もなく続く。

エントリー:214台/予選出走:206台/決勝出走:193台/完走:132台

総合順位

1位 No.19 BMW Team Schubert / BMW Z4 GT3 (SP9クラス)
2位 No.35 Timbuli Racing / Porsche 911 GT3 R (SP9クラス)
3位 No.20 BMW Team Schubert / BMW Z4 GT3 (SP9クラス)
4位 No.45 Timbuli Racing / Porsche 911 GT3 R (SP9クラス)
5位 No.2 H&R Spezialfedern GmbH & Co. / BMW Z4 GT3 (SP9クラス)
6位 No.60 Manthey Racing / Porsche 911 GT3 RSR (SP7クラス)
7位 No.7 ROWE RACING / Mercedes-Benz SLS (SP9クラス)
8位 No.44 / Audi R8 LMS ultra (SP9クラス)
9位 No.21 ROWE RACING / Mercedes-Benz SLS AMG (SP9クラス)
10位 No.40 Pinta Team Manthey / Porsche 911 GT3 R (SP9クラス)

SP8クラス順位

1位 No.140 GAZOO Racing / LEXUS LFA
2位 No.135 / LEXUS IS F
3位 No.132 Hyundai Motor Deutschland / Hyundai Genesis V6
4位 No.458 GT Corse / Ferrari F458

SP3クラス順位

1位 No.270 Bonk Motorsport / BMW Z4
2位 No.266 / Honda Civic
3位 No.280 GAZOO Racing / TOYOTA 86
4位 No.281 GAZOO Racing / TOYOTA 86
5位 No.263 Fanclub Mathol Racing e.V / Honda Civic Type R
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