ニュルブルクリンクへの挑戦 2013
VLN3レポート

2014.03.17 ニュルブルクリンクへの挑戦2013

3週間後に「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」を控えた4月27日、LFAと2台の86を擁するGAZOO Racingは最後の実戦テストである「VLN3(ニュル耐久選手権・第3戦)」へ出場、悪天候の下、本戦へ向けた貴重なセッティングデータ取得とメカニックの訓練を行った。

午前中の予選は、異常気象とも言える気温3℃/路面温度3℃、冷たい雨の中で行われた。チームは予選、決勝を通じて各車の最終セットアップに専念することを目的に掲げており、予選中もウェットコンディションでのセットアップにトライした。LFA#140は影山正彦選手と、富士スピードウェイで開催されたスーパーGTに出場する石浦宏明選手と大嶋和也選手に代わって、木下隆之選手がドライブしクラス2位。飯田章選手、井口卓人選手、蒲生尚哉選手、トヨタ社員テストドライバー矢吹久選手の86#280はクラス1位、佐藤久美選手、矢吹久選手、トヨタ社員テストドライバー平田泰男選手、木下隆之選手の86#281はクラス3位のグリッドを得た。尚、昨年、LFAのセッティングを担当した木下選手は新旧の車両の違いを確認するため、一方、矢吹選手は異なるセッティングをトライしている2台の86の評価を行うためにそれぞれダブルエントリーした。

正午が近づいても気温は全く上がらず、雨と濃霧の中でフォーメーションラップがゆっくりとスタート。86#281の佐藤選手が「視界が悪くフォーメーションラップが2周になり、あまりの寒さに手も足もかじかんでしまった。こんな経験は今までない」と語る悪天候の下でレースがはじまった。86#280は蒲生選手がスタート直後に後方から他車にバンパーをヒットされコースアウト、佐藤選手の86#281も序盤でコーナリング中にドアをヒットされたが共に走行に支障はなく周回を重ねた。路面温度3℃という低温に加えて、最後の実戦テストということもあり、サーキットには前戦以上にピリピリしたムードがただよっていた。

スタートから2時間15分が過ぎた頃、ようやく雨が上がり走行ライン上が乾いてきた。約20分後にルーティーンのピットインを控えていたLFA#140は、無理はせずにレインタイヤに交換して木下選手がコースへ。今年ニュル22年目の挑戦となる木下選手は久しぶりにLFAをドライブし、「110kgの軽量化によって瞬発力が向上して一発のタイムが確実に速くなった。しかし、舞台がニュルですからね、24時間を安定して走り切るためには本戦のレース前のテスト走行でもう少しセッティングを詰める必要がありますね」とコメント。その後は、チーフドライバーの影山選手が主にサスペンションのセッティングを行いながらクラス2位でチェッカーをくぐった。「雨から次第に路面が乾いていくという本戦でも遭遇し得るコンディション変化の中で貴重なテストが出来ました。大幅な軽量化によってスピードはアップしていますが、反面、これまでのデータがそのまま反映できないという厳しさもあります。ただし、我々の目的は活動を通じて“いいクルマづくり”に寄与することですから、この厳しさは将来的に必ず実を結ぶと信じています」、影山選手は「24時間レース」のさらに先にあるものを見つめながら語った。

2台の86は中盤以降はトラブルもなく、ルーティーンのピットワークを行いながら順調にラップを重ねLFA同様に本戦へ向けたセットアップに専念、クラス3位と4位のポジションでゴールを迎えた。昨年に続いてステアリングを握る佐藤選手は2013年仕様の86をニュルで初めてドライブしてこう語った。「約60kgの軽量化とエンジンの調整によって昨年版よりもパワーや加速感が向上したことをウェットコンディションでも体感できました。一方で軽量化によってバランスが変わった部分もありますのでまだまだ詰めは必要です。24時間の決勝中も進化のための時間ととらえて未来の“いいクルマづくり”に繋がるトライを全員でしていきます」。

前回のレポートでもお伝えした通り、GAZOO Racingには今年、また新しいトヨタの社員メカニックが加入し、フレッシュな顔ぶれが経験者の指導を受け普段の職場では体験し得ない様々な要素に戸惑いながらも確実に成長を続けている。2008年からLFAを担当する関谷利之チーフメカニックは、「僕たちは亡くなった成瀬監督から技術の前に気持ちが大事であることを学びました。技術は心についてくると。新人メカニックたちも心をひとつにすることで本戦ではきっといい仕事をしてくれると信じています」と信頼と期待を胸に語る。

最後の前哨戦には前回を上回る227台もがエントリー、しかしリタイヤ台数は大幅に減った。
「24時間レース」へ出場するチームの多くは、「VNL3」での順位や名声へのこだわりは度外視して本戦へ向けたセッティングなどに専念していたと思われる。年々ヒートアップする“進化”を競う戦い、それぞれが一年を要して温めてきた情熱と技術が正しいものであったか否か、その審判は5月19日17時から20日17時(現地時間)までの短くも長い24時間で、ニュルブルクリンクという過酷なサーキットによってのみ下される。

エントリー:227台/予選出走:210台/決勝出走:210台/完走:164台

総合順位

1位 No.5 PHOENIX RACING / Audi R8 LMS ultra (SP9クラス)
2位 No.20 BMW Team Schubert / BMW Z4 GT3 (SP9クラス)
3位 No.45 Timbuli Racing / Porsche 911 GT3 R (SP9クラス)
4位 No.30 / Porsche 911 GT3 R (SP9クラス)
5位 No.32 Aston Martin Racing / Aston Martin Vantage (SP9クラス)
6位 No.35 Timbuli Racing / Porsche 911 GT3 R (SP9クラス)
7位 No.2 H&R Spezialfedern GmbH & Co. / BMW Z4 GT3 (SP9クラス)
8位 No.19 BMW Team Schubert / BMW Z4 GT3 (SP9クラス)
9位 No.37 G-Drive Racing by Phoenix / Audi R8 LMS ultra (SP9クラス)
10位 No.9 Black Falcon / Mercedes-Benz SLS (SP9クラス)

SP8クラス順位

1位 No.131 Rheydter Club fur Motorsport e.V. im DMV / Aston Martin Vantage
2位 No.140 GAZOO Racing / LEXUS LFA
3位 No.144 Aston Martin Test Centre / Aston Martin Vantage
4位 No.130 / Audi RS 5GT
5位 No.135 / Lexus IS-F
6位 No.138 Aston Martin Test Centre / Aston Martin V8 Vantage
7位 No.136 / Lexus IS-F

SP3クラス順位

1位 No.270 Bonk Motorsport / BMW Z4
2位 No.266 / Honda Civic
3位 No.280 GAZOO Racing / TOYOTA 86
4位 No.281 GAZOO Racing / TOYOTA 86
5位 No.263 Fanclub Mathol Racing e.V / Honda Civic Type R
  • ニュルブルグリングへの挑戦2012
  • 86 SOCIETY
  • SUBARU MOTORSPORT