ニュルブルクリンクへの挑戦 2009
VLN2・3レポート

2014.03.18 ニュルブルクリンクへの挑戦2009

2009年のニュルブルクリンクへの挑戦、その初戦をクラス優勝で終えたGAZOO Racingチーム。続く第2戦、第3戦もそれぞれ2位、3位と連続入賞を果たした。24時間耐久レースに向けてマシンの完成度は高まっているのか?その2つの戦いを追う。

意義深い24時間レースへ向けた前哨戦

4月4日のVLNシリーズ開幕戦をクラス優勝で終えた我々GAZOO Racingは、続く 第2戦(4月18日)と第3戦(5月2日)にもエントリー。5月23日-24日に挑むニュルブルクリンク24時間耐久レースに向けての貴重なデータ収集を行ったのだ。開幕戦では激戦のSP8クラスで優勝を飾り、士気高まるGAZOO Racingなのだが、勝敗よりも内容が大切なこのイベント。

というのは、VLN参戦は、メインイベントであるニュルブルクリンク24時間耐久レースの前哨戦としての狙いがある。世界一過激とされるこのコースで連続周回する機会はめったになく、レース参戦によって許される4時間の走行は貴重なもの。ライバルの多くが同様の狙いでこのレースに参加しており、ということはつまり、我々の実力が横比較で把握できる。もちろんマシンのセッティングに有用なチャンスとなるのだ。

実際に、24時間制覇をもくろむチームの多くがこのVLNに参戦してきていた。開幕戦から時を経るに従って台数が増え、第1戦より第2戦のほうが、第2戦より第3戦によりトップランカーが集まった。常勝チームであり、今年も優勝候補筆頭のマンタイレーシングのポルシェGT3をはじめ、必勝態勢で挑んでくるアウディは数台ものレーシングR8をグリッドに並べていたし、コルベットやバイパーも轡を並べていた。アストンマーチンも存在感を誇示しており、特にV12ヴァンテージが注目の的。レベルもヒートアップしており、24時間レースさながらの激しい雰囲気に包まれていたのだ。火花が散る。

レースを通じて完成度が高まっていくマシン

今回から我々は、本番を想定して、2台のレクサスLF-Aを投入することにした。データ収集のためと自らの実力を測るために、システマチックに戦略を進めることにしたのだ。92号車は、木下隆之と飯田章という日本人コンビがドライブ。95号車は、大ベテランのアーミン・ハーネとヨッヘン・クルンバッハと、そして成瀬弘にステアリングが託された。タイヤの性能チェックや燃費計測など、それぞれが分担し合いながら仕事を進めるという盤石の体制を敷いていたのである。

マシンはずいぶんと仕上がってきたといえよう。開幕戦ではクラス優勝に輝き、レクサスLF-Aに際立つ戦闘力が備わっていることが確認できたのだが、それでもまだ開発途上にあり、手探りの勝利だった。だが、タイヤのグリップ性能や耐久性が読めてきている。燃費のデータも揃いつつある。サスペンションやエンジンには常に改良が施されており、日増しに完成度が高まっていることが実感できるのだ。

ブリヂストンが持ち込んだタイヤも、コロコロと変化する天候に対応してくれるであろうことが確認できた。新しく持ち込んだ空力パーツも、期待どおりの効果を発揮することを証明してくれた。エンジンは燃費とパワーのバランスを整えつつある。ミッションはいまだ一度もトラブルに陥っておらず、20万回のシフトチェンジまでは実証済みという過剰すぎるほどの耐久性に自信を深めた。主導権を握ってレースを進めるには、もっともっと速いタイムで周回する必要があるのかもしれない。耐久性の確認がすんだ以上、ドライバーはさらにマシンに鞭をくれるに違いない。

24時間レースへ向けて、高まる期待

第2戦は、92号車がSP8クラスで2位に輝いた。第3戦は3位。開幕戦から連続で入賞を飾っているのだ。表彰台獲得率はなんと100%。93号車は多くのデータを残すことが狙いだったために、頻繁にピットインをしながら微調整を進めていた。よって数字上の入賞はならなかったが、92号車とほぼ同タイムを記録しており心配はない。むしろハンドリングは92号車よりも良好のようで、ハーネもクルンバッハも表情は明るい。

もちろんここでのリザルトがそのまま24時間に置き換えられる保証はどこにもない。さらに強力なライバルがこぞって集結してくるわけだし、レースディスタンスは今回の6倍もの長距離戦となる。ただし、ライバルはトラブルを抱えて戦列を離れる場面が多かったのにたいして我々のトラブルは皆無に等しかった。昨年のデータをもとにウイークポイントには手を加えてきたし、戦闘力も計ってきた我々のマシンには、不安材料は少ないのだ。
「ややアンダーステアが強いものの、24時間レースのことを思えば理想的なセッティングに近づいている」

木下隆之がそう言えば、
「こんなプロフェッショナルなチームで戦えることを嬉しく思う」
とハーネも感触に満足していると口にする。

ドイツチームが走らせるコルベットZR1やアウディR8は、地の利を生かしで挑んでくるに違いない。ドイツ勢としてのプライドも交錯している。簡単に引き下がる相手ではない。だが、VLNで披露した我々の走りは、彼らにとっても脅威に映ったに違いない。

さて、5月23日-24日のニュルブルクリンク24時間レースはいかに・・・。