2015年全日本ラリー選手権開幕!
勝田範彦が開幕戦10連覇の偉業を達成
2015年全日本ラリー選手権開幕!ツール・ド・九州2015 in 唐津レポート
2015年開幕戦はニューマシンが勢揃い
2015年全日本ラリー選手権の開幕戦が、九州の佐賀県唐津市を舞台に4月10日(金)~12日(日)の日程で開催された。唐津市の北西部に位置する唐津東港の一角に設けられたサービスパークには、全クラス合わせて55台のマシンが集結した。
JN6クラスは、昨年の第8戦に新型スバルWRX STIを投入した炭山裕矢選手に加え、新井敏弘選手、鎌田卓麻選手も新型にマシンチェンジ。3台の新型WRX STIが、熟成の域に達した奴田原文雄の三菱ランサーエボリューションⅩや開幕戦10連覇に挑む勝田範彦選手の先代スバルWRX STIに対し、新たな戦いを挑む。
またJN5クラスでも、昨年のオープンクラスに出場して話題となったグループR車両のアバルト500ラリーR3Tや、国内のRJ規定に則った改造が施されたプジョー208GTiやミニ・クロスオーバーが全日本ラリーにデビュー。昨年の第8戦に登場したトヨタ・ヴィッツGRMNターボを加えた4台のニューカマーが、2年連続チャンピオンカーとなったトヨタ86/スバルBRZに挑む。
2日間にわたって戦われるラリーは、SS総距離71.23kmに14本のSSを設定。JN6クラスとJN5クラスでは、1秒を争う好勝負が展開された。
[ JN6クラス ] 勝田範彦がロングSSでスパート
前日に降った雨の影響が残り、路面が乾き切らずハーフウエット状態となった初日は、SS2を終えて奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)が首位に立つが、路面がドライコンディションとなったロングステージのSS3で勝田範彦/足立さやか組(スバルWRX STI)が一気に挽回。それまで9.7秒あった奴田原との差を3.5秒にまで縮めてくる。さらに、SS3のリピートステージとなるSS8では奴田原を捉え逆転。勝田が奴田原に0.5秒差の首位に立ち、初日を折り返した。
2日目に入り、さらにペースアップした勝田が奴田原との差を徐々に拡大。最終的にはタイム差を5.5秒に広げ、10年連続となる開幕戦優勝を果たした。
[ JN5クラス ] 群雄割拠のJN5クラス
初日は眞貝知志/漆戸あゆみ組(アバルト500)、天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツGMRNターボ)、柳澤宏至/中原祥雅組(プジョー208GTi)による三つ巴の戦いとなったJN5クラス。初日に2番手に対して18秒のマージンを築き上げた眞貝が、2日目もその差を守り切り、開幕戦を制した。
初日は天野と柳澤が競り合った2位争いだったが、2日目に入ると石田雅之/遠山裕美子組(トヨタ86)がSS12で天野と柳澤を一気に捉え、2番手に浮上。その後も天野と0.1秒を争うバトルを展開し、石田がわずか0.7秒差で逃げ切り2位に入賞。天野が3位、全日本ラリー初登場となるプジョー208GTiの柳澤は、天野と7.3秒差の4位でフィニッシュした。
[ JN4クラス ] 20代ドライバーが大活躍
JN4クラスは、昨年のチャンピオン竹内源樹がJN6クラスへと移籍、シリーズ2位の平塚忠博が今季のラリー参戦を休止したため、上位陣の顔ぶれが一気に変わった。そのなかで、昨年までJN3クラスを戦っていた石川昌平/石川恭啓組(スバルBRZ)が、時にはJN5クラスのトップ争いに絡むほどの好タイムをマークし、2番手の小濱勇希/馬場雄一組(スバルBRZ)に4.9秒差を付ける首位で初日を折り返す。 2日目に入ると小濱がタイヤをパンクさせてしまい一気にタイムダウン。小濱との差を37.7秒差に広げ、全日本ラリー初優勝を飾った。優勝の石川も2位の小濱も、ともに20代のドライバー。今年のJN4クラスは、この若手ドライバーふたりが中心となりそうな気配だ。
[ JN3クラス ] ベテランの岡田孝一が独走
JN3クラスも昨年のチャンピオン天野智之がJN5クラスへ戦いの場を移したため、JN4クラスと同様にチャンピオン不在となった。また、シリーズ3位の石川昌平もJN4クラスへと移動。そのため、シリーズ2位の岡田孝一にとってはライバル不在の状態となったが、開幕戦もその状況どおりの結果となった。
今シーズン、新たにマツダ・デミオを製作した岡田孝一/鶴田邦彦組は、唐津港の特設ステージで行われたSS11&14以外、すべての林道SSでベストタイムをマーク。2位の藤田幸弘/藤田彩子組(マツダ・デミオ)に2分以上の大差をつけ、開幕戦を制した。3位には2本の特設ステージでベストタイムをマークした本名修也/湊比呂美組(トヨタ・ヴィッツRS)が入賞した。
[ JN2クラス ] JN2クラスは出場台数が一気に拡大
[ JN1クラス ] JN1クラスはベテラン復活
シリーズチャンピオンの中西昌人がJN2クラスへ移り、シリーズ2位の中村晃規が欠場したJN1クラスは、全日本ラリー選手権の前身で1978年まで行われた全日本ベストラリースト選定戦時代から活躍していた大ベテランの松田保夫/杉原慶彦組(マツダRX-8)が、約30年ぶりに全日本ラリーに復活。全日本ラリーは初出場ながらも長年にわたってレースやラリーでエンジニアとして活躍している喜多見孝弘/木原雅彦(マツダRX-8)との戦いを制し、全日本ラリー初優勝を飾った。
また、日産リーフで出場した大井貴之/三輪智信組は、4本のSSでベストタイムを奪いながらも、初日の最終SSを走行後にバッテリーを使い切り、サービスに戻れず惜しくもデイリタイアとなった。
TOYOTA GAZOO Racing社員チームのメカニックがラリーの現場で整備を実践
TOYOTA GAZOO Racingは、ラリーの現場をニュルブルクリンク同様「クルマ・人・チーム」を鍛え、“いいクルマづくり”をするための鍛錬の場として、今年から社員チームでの参戦を予定している。
その計画の一環として、この開幕戦でサービスメカニックに5名のトヨタ社員が参加し、実際の現場でラリーカーの整備を体験した。
今回、ドライバーに抜擢された大倉聡は、これまでスターレットターボなどで全日本ラリーで活躍していた選手だ。「トヨタ86でラリーに出場するのは今回初めてなのですが、トヨタの社員メカニックの皆さんにラリーメカニックの経験を積んでいただくために、とにかくしっかり完走することを心掛けて走っています」と、順位よりも完走することを目標としている。だが、「トヨタ86のドライビングが楽しくて、ついオーバーペースになってしまいそうなので、自分の気持ちと戦いながら走っています(笑)。今までラリーはFFでしか走ったことがなく、どちらかといえばねじ伏せるような走り方だったのですが、トヨタ86はハンドリングがスムーズなので、自分にとっても良い勉強になりますね」と、トヨタ86の素性の良さを語る。
一方、サービスメカニックの5名は、電子技術やエンジン、車両トータル評価など、各分野の開発にたずさわってきた社員たちだ。チーフを務める豊岡悟志は、「ラリーのサービスでは車両に大きなトラブルがなかったので、タイヤローテーションやトルクチェックなどのルーティーンワークを中心に行いました。作業自体は難しいものではなかったのですが、やはり決められた時間内でどのように効率的に作業を進めるかなど、実戦を通じて学ぶことが多かったですね。今回最も驚いたのは、サービスのアドバイスをいただいたチームの車両がクラッシュしてしまい、フロントサスペンションが大破して走行不能となったのですが、2日目に走行できるように短時間でメカニックが修復していたことです。正直、感動しました。なんとかドライバーを走らせたいというメカニックの気持ちが伝わってきましたし、ラリーはチームプレーだということが肌で感じることができました。これもラリーのひとつの姿なんですね」と、感想を述べた。過酷なラリーに挑むため、メカニックたちの挑戦はさらに続く。
クラス別順位結果(上位3クルー)
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 勝田 範彦/足立 さやか |
---|---|
スバル・インプレッサ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 奴田原 文雄/佐藤 忠宜 |
三菱ランサーエボリューションX | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 新井 敏弘/田中 直哉 |
スバル・インプレッサ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 眞貝 知志/漆戸 あゆみ |
---|---|
アバルト500 | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 石田 雅之/遠山 裕美子 |
トヨタ・86 | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 天野 智之/井上 裕紀子 |
トヨタ・ヴィッツGRMNターボ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 石川 昌平/石川 恭啓 |
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スバル・BRZ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 小濱 勇希/馬場 雄一 |
スバル・BRZ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 番場 彬/亀森 隆志 |
トヨタ・86 |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 岡田 孝一/鶴田 邦彦 |
---|---|
マツダ・デミオ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 藤田 幸弘/藤田 彩子 |
マツダ・デミオ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 本名 修也/湊 比呂美 |
トヨタ・ヴィッツRS |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 田中 伸幸/藤田 めぐみ |
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スズキ・スイフト | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 須藤 浩志/新井 正和 |
スズキ・スイフトスポーツ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 鈴木 尚/山岸 典将 |
スズキ・スイフトスポーツ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 松田 保夫/杉原 慶彦 |
---|---|
マツダ・RX-8 | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 喜多見 孝弘/木原 雅彦 |
マツダ・RX-8 | |
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全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。