雨のデイ1にリタイアが続出したサバイバルラリー
新井敏弘がライバルを圧倒して今季初優勝

2015年全日本ラリー選手権第2戦 久万高原ラリー2015レポート

2015.05.11 全日本ラリー選手権2015

5年ぶりのオールターマックステージ

全日本ラリー選手権第2戦は、愛媛県上浮穴群久万高原町の美川スポーツランド(旧美川スキー場)を拠点に、5月8日(金)~10日(日)の日程で開催された。2006年から2010年までターマック(舗装路)ラリー、2011年から昨年まではグラベル(未舗装路)ラリーとして開催されていた同ラリーは、5年ぶりにターマックラリーとして開催されることとなった。

ラリーは、雲海を眼下に見る標高1500m以上に設定されたステージや、木々が茂った森林地帯を縫って走るステージなどを中心に構成され、2日間に渡りSS総距離108.54km(9SS)で戦われる。

標高が高い山岳地帯が舞台となるため、毎年“久万高原ウェザー”と呼ばれる猫の目のように変わる天候が選手を翻弄するこのラリーだが、今年も天気予報では曇りだった土曜日の天候が雨に急変。さらに苔に覆われた滑りやすい路面コンディションが重なり、コースアウトやマシントラブルなどによりリタイアする車両が続出するサバイバルラリーとなった。

デイ2はサービスパークに隣接するギャラリーステージが設けられ、間近でラリーカーの走りを見ることができた。
デイ2はサービスパークに隣接するギャラリーステージが設けられ、間近でラリーカーの走りを見ることができた。

[ JN6クラス ] 初日に上位陣が次々と戦線離脱

JN6クラスは、「(開幕戦から)大幅にマシンセッティングを見直してきた」という新井敏弘/田中直哉組(スバルWRX STI)が、初日に設定された5本のSSすべてでベストタイムをマークし、2番手の炭山裕矢/保井隆宏組(スバルWRX STI)に45.6秒の大差を付け、初日を折り返した。

一方、昨年のチャンピオン奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)は、エンジントラブルのためにSS2でリタイア。さらにSS3では勝田貴元/草加浩平組(スバルWRX STI)、SS4で勝田範彦/足立さやか組(スバルWRX STI)、SS3まで2番手を走行していた新井大輝/伊勢谷巧(スバルWRX STI)が滑る路面に足を取られて次々と戦線離脱するという大波乱の展開となった。

そんななか、初日をトップで折り返した新井は、2日目も危なげない走りで快走。炭山に1分以上の大差を付け、今季初優勝を遂げた。2位に炭山、3位には2日目にポジションを挙げてきた鎌田卓麻/市野諮組(スバルWRX STI)が入賞した。

新井敏弘は自身の今季初勝利に加え、新型WRX STIでの全日本ラリー初勝利もマーク。1~3位までを新型WRX STIが占めた。
新井敏弘は自身の今季初勝利に加え、新型WRX STIでの全日本ラリー初勝利もマーク。1~3位までを新型WRX STIが占めた。

[ JN5クラス ] プジョー208GTiが全日本初優勝

初日は、開幕戦を制した眞貝知志/漆戸あゆみ組(アバルト500)がトップで折り返したJN5クラスは、その眞貝が2日目のSS7でまさかのコースオフ。脱出に10分以上の時間を費やし、最下位に転落するという波乱の展開となった。眞貝の脱落によりトップに浮上した柳澤宏至/中原祥雅組(プジョー208GTi)が、最終SSまでトップの座を守りきり、今季初優勝を飾った。

2位には、初日にブレーキトラブルを抱えた天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツGRMNターボ)が、2日目は2本のSSでベストタイムをマークする走りで入賞、3位には、SS7でベストタイムを奪い、粘りの走りをみせた大倉聡/北田稔(トヨタ・86)がそれぞれ入賞した。

今年から全日本ラリーに参戦可能となったプジョー208GTiが、ベテラン柳澤宏至の手で早くも優勝を果たした。
今年から全日本ラリーに参戦可能となったプジョー208GTiが、ベテラン柳澤宏至の手で早くも優勝を果たした。

[ JN4クラス ] 香川秀樹が4年ぶりに優勝

レーシングドライバーの織戸学(トヨタ・86)が出場して話題となったJN4クラスは、その織戸がSS2でベストタイムをマークしてトップの香川秀樹/浦雅史組(ホンダ・シビックTYPE R)に2.3秒差まで迫るものの、続くSS3ではフロントサスペンションを破損してリタイアとなった。

一方、香川はその後一度もトップの座を譲らず快走し、今季初優勝を飾った。2位には、開幕戦優勝の石川昌平/石川恭啓組(スバル・BRZ)が、滑りやすい路面に苦戦しながらも入賞。シリーズトップの座を守りきった。3位には、初日を4番手で折り返した番場彬/織田千穂組(トヨタ・86)が、2日目にペースを挙げ3位にジャンプアップを果たした。

2010年のJN3クラス(当時)のチャンピオンである香川秀樹がドライブしたホンダ・シビックTYPE R。
2010年のJN3クラス(当時)のチャンピオンである香川秀樹がドライブしたホンダ・シビックTYPE R。

[ JN3クラス ] 岡田孝一が開幕2連勝

JN3クラスは、開幕戦を制した岡田孝一/鶴田邦彦組(マツダ・デミオ)が、初日すべてのSSでベストタイムをマークする速さを見せ、早くも独走体勢を築き上げた。

2日目に入ると、「初日のウェットセッティング、2日目のドライセッティングと、いろいろなセッティングをテストすることができた」という余裕をみせ、2日間通して全SSでベストタイムをマークし、開幕戦に続き2連勝を達成した。

2位争いは、全日本参戦2戦目となる武田雄一郎/鈴木和人組(トヨタ・ヴィッツRS)が、7年ぶりに全日本に復帰した鷹野健太郎/尼子祥一組(マツダ・デミオ)と最終SSまでバトルを展開し、武田が27.9秒差で全日本初表彰台となる2位に入賞した。

ウェット、ドライともに安定した走りを見せた岡田孝一のマツダ・デミオ。
ウェット、ドライともに安定した走りを見せた岡田孝一のマツダ・デミオ。

[ JN2クラス ] 高橋悟志が今季初勝利

JN1クラスが出場規定台数の不足で不成立となり、開幕戦のJN1クラスを制した松田保夫/杉原慶彦(マツダ・RX-8)が編入されたJN2クラスは、昨年のJN2クラスシリーズランキング2位の高橋悟志/箕作裕子組(トヨタ・ヴィッツRS)が、全SSでベストタイムをマークする速さを見せ、今季初優勝を飾った。

2位には、初日は松田と1.2秒差の僅差で折り返した鈴木尚/山岸典将組(スズキ・スイフトスポーツ)が、ドライ路面の2日目に松田との差を1分以上広げ入賞を果たした。3位にはRX-8の松田が入賞した。

昨年の第8戦以来の優勝を遂げた高橋悟志のトヨタ・ヴィッツRS。
昨年の第8戦以来の優勝を遂げた高橋悟志のトヨタ・ヴィッツRS。

TOYOTA GAZOO Racing社員チームのメカニックが唐津につづいて参加

TOYOTA GAZOO Racingでは、モータースポーツの場での技能養成のため、5人のトヨタ社員を開幕戦からTOYOTA GAZOO Racing 86のメカニックとして参画させている。

チーフを務める豊岡悟志は、「開幕戦は、サービスにどのような状態でラリーカーが帰ってくるのか、まったく想像がつかない状態でしたが、今回は開幕戦よりも細かな点に気付くようになり、メカニック全体の動きも良くなってきました。チームワークも開幕戦よりも良くなり、メカニック全員がとにかくできることを一生懸命やろうという気持ちが強くなってきたと思います。また、サービスの時間内で行う整備作業だけではなく、例えばラリーのために準備したタイヤの種類や本数の管理など、ラリーの戦略に関わってくる部分にもしっかりと対応できるようになっていかなければならないと思います」と、第2戦の感想を述べた。

開幕戦に続きドライバーに抜擢され、今回クラス3位に入賞した大倉聡は、「トヨタの社員メカニックの皆さんのサービスでの動きが、前回よりもさらに良くなってきたと思います。今回のラリーはクラス3位に入賞しただけではなく、距離の長いSSでベストタイムを獲得することができました。気持ち良く走ることができ、サービスの時間内にしっかりと正確な作業で整備していただいているトヨタの社員メカニック皆さんのおかげだと思います」と、トヨタ社員メカニックに信頼を寄せるとともに、感謝の気持ちを述べた。

  • GAZOO Racing社員チームでは、様々な部署の社員がメカニックとなってサービス作業を行った。
    TOYOTA GAZOO Racing社員チームでは、様々な部署の社員がメカニックとなってサービス作業を行った。
  • JN5クラス3位に入賞したドライバーの大倉聡(右)とがっちり握手を交わすチーフメカの豊岡悟志。
    JN5クラス3位に入賞したドライバーの大倉聡(右)とがっちり握手を交わすチーフメカの豊岡悟志。
  • 難しい路面状況のなか、GAZOO Racing社員チームの期待と信頼を受けて走りきった大倉聡のトヨタ86。
    難しい路面状況のなか、TOYOTA GAZOO Racing社員チームの期待と信頼を受けて走りきった大倉聡のトヨタ86。

クラス別順位結果(上位3クルー)

class - JN-6
1位 ドライバー/コ・ドライバー
新井 敏弘/田中 直哉
スバル・インプレッサ
2位 ドライバー/コ・ドライバー
炭山 裕矢/保井 隆宏
スバル・インプレッサ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
鎌田 卓麻/市野 諮
スバル・インプレッサ
class - JN-5
1位 ドライバー/コ・ドライバー
柳澤 宏至/中原 祥雅
プジョー208GTi
2位 ドライバー/コ・ドライバー
天野 智之/井上 裕紀子
トヨタ・ヴィッツGRMNターボ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
大倉 聡/北田 稔
トヨタ・86
class - JN-4
1位 ドライバー/コ・ドライバー
香川 秀樹/浦 雅史
ホンダ・シビックTYPE R
2位 ドライバー/コ・ドライバー
石川 昌平/石川 恭啓
スバル・BRZ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
番場 彬/織田 千穂
トヨタ・86
class - JN-3
1位 ドライバー/コ・ドライバー
岡田 孝一/鶴田 邦彦
マツダ・デミオ
2位 ドライバー/コ・ドライバー
武田 雄一郎/鈴木 和人
トヨタ・ヴィッツRS
3位 ドライバー/コ・ドライバー
鷹野 健太郎/尼子 祥一
マツダ・デミオ
class - JN-2
1位 ドライバー/コ・ドライバー
高橋 悟志/箕作 裕子
トヨタ・ヴィッツRS
2位 ドライバー/コ・ドライバー
鈴木 尚/山岸 典将
スズキ・スイフトスポーツ
3位 ドライバー/コ・ドライバー
松田 保夫/杉原 慶彦
マツダ・RX-8

全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。