新井敏弘・大輝が全日本ラリー初の
親子1-2フィニッシュ
今季初のグラベルラリーは各クラスで波乱の展開に
全日本ラリー選手権第4戦 2015 ARKラリー洞爺レポート
例年よりも荒れた路面コンディション
全日本ラリー選手権は、開幕戦から第3戦まで続いたターマック(舗装路)ラリー3連戦を経て、この第4戦からはグラベル(未舗装路)ラリー2連戦が組まれている。グラベル初戦となる「2015 ARKラリー洞爺」が、北海道有数の観光地である洞爺湖町を拠点に、7月3日(金)から5日(日)の日程で開催された。
ラリーは、3日(金)の夕方に砂防ダムを利用した特設コースのスーパースペシャルステージ(SS1)から始まり、4日(土)に7本、5日(日)に6本、あわせて14本のスペシャルステージ(SS/総距離66.74km)が設定された。いずれのステージも、ラリー前日に降った雨の影響で、路面が掘れて轍ができやすくなっていた。特に特設コースは、路面のギャップやうねりが多い上に、ラリーカーが走行するたびに路面の下に埋まっている大きな石が掘り起こされるという荒れた状況となり、わずか0.7kmというショートステージながらも気の抜けないSSとなった。
[ JN6クラス ] 新井大輝/伊勢谷巧組が怒濤の追い上げ
初日は、新井敏弘/田中直哉組(スバルWRX STI)と炭山裕矢/保井隆宏組(スバルWRX STI)が、SSベストタイムを3本ずつ奪い合い、わずか0.9秒差で新井がトップに立つ。しかし、2日目に入ると初日6番手の新井大輝/伊勢谷巧組(スバルWRX STI)が一気にペースアップ。2日目に設定された4本の林道SSすべてでベストタイムを奪い、ハーフスピンやミッショントラブルなどに見舞われペースが上がらない炭山を捉えて2位に浮上し、最終SSまでトップの座を堅守した新井(敏)とともに、全日本ラリーでは初の親子1-2フィニッシュを達成した。
一方、2日目の林道SSで苦戦した炭山も、SS11/12の特設ステージではライバルに2~3秒の差をつける走りを見せ、3位表彰台を獲得した。また、初日3番手につけたランキングトップの勝田範彦/足立さやか組(スバルWRX STI)は、この特設ステージでタイムが伸びず大苦戦。さらにこのステージでマシンを傷め、その修復のためにサービスの規定時間を3分オーバーして30秒のペナルティを受けてしまう。林道SSでは善戦しながらも、特設ステージに苦しめられ6位という結果に終わった。
[ JN5クラス ] 三菱ミラージュが1-2フィニッシュ
天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・Vitz GRMN Turbo)と関根正人/竹下紀子組(三菱ミラージュ)、さらに松倉拓郎/松倉英実組(三菱ミラージュ)と小倉雅俊/平山真理組(ダイハツ・ブーンX4)の4台が、初日に1秒を争う接戦を展開したJN5クラスは、2日目に大波乱が待ち受けていた。
初日2番手の関根に対し2.4秒差の首位で2日目を迎えた天野は、オープニングのSS9をスタートしてわずか700mでまさかの横転。天野のリタイアにより首位に立った関根は、その後もトップの座を守り切り、一昨年のラリー北海道以来となる優勝を果たした。最終SSまで続いた松倉と小倉の2位争いは、SS13で小倉が1.2秒差まで迫るものの、最終SSとなるSS14で松倉が小倉に0.2秒差のベストタイムをマークして逃げ切りに成功した。
[ JN3クラス ] 寺川和紘/石川美代子組が全日本初優勝
JN3クラスは、開幕戦と第2戦を制しシリーズランキングトップに立つ岡田孝一/鶴田邦彦組(マツダ・デミオ)が、初日のスタート直後からエンジンが吹け上がらないトラブルに見舞われ、ペースが上がらない。この隙に、全日本はスポット参戦ながらも今年で参戦7年目を迎える寺川和紘/石川美代子組(マツダ・デミオ)がベストタイムを連発し、岡田に49.2秒の大差をつけてトップに立つ。
2日目に入ってもタイムが伸びない岡田に対し、寺川は手を緩めずベストタイムを連取。最終的には1分以上の大差をつけ、全日本ラリー初優勝を飾った。昨年のこのラリーでは、JN2クラスで初優勝に手が届きそうながらも最終SSをフィニッシュした直後にリタイアという悲運に泣いた寺川だが、1年越しで雪辱を晴らした。
[ JN2クラス ] 田中伸幸/藤田めぐみ組が余裕のラリー展開
前戦は若手の中井育真が全日本初優勝を獲得したJN2クラスだが、今回は田中伸幸/藤田めぐみ組(スズキ・スイフトスポーツ)、高橋悟志/箕作裕子組(トヨタ・ヴィッツRS)、中西昌人/廣島真組(スズキ・スイフトスポーツ)という、過去に全日本チャンピオンを獲得した経験のあるベテランドライバー同士の対決となった。
初日の林道SSでベストタイムを重ねた田中/藤田組が、2番手の高橋/箕作組に19.5秒差をつけ、初日をトップで折り返す。昨年は特設ステージで攻めすぎドライブシャフトを折損した田中だが、今年は特設ステージでは無理をせず林道SSで勝負するという作戦が功を奏し、最終的には高橋に34.0秒差をつけ開幕戦以来となる今季2勝目を獲得した。
TOYOTA GAZOO Racing社員チーム、初のグラベルラリーにもしっかりと対応
ラリーのサービスメカニックに5名のトヨタ社員が参加し、全日本ラリーを転戦するTeam TOYOTA GAZOO Racing。これまでターマック(舗装路)を舞台とするラリーが3戦続いたが、第4戦はこれまでサービスメカニックとしては未体験のグラベル(未舗装路)ラリーだ。
サービスメカニックのチーフを務める豊岡悟志は、初めてのグラベルラリーに向けた準備をこう振り返る。「グラベルラリーはターマックラリーとは違い、未整地の荒れた路面を走るので、クルマへの負担は相当なものです。クルマもこれまでのターマック仕様からグラベル仕様に変更してきたのですが、エンジンやボディの下部を守るためのアンダーガードを装備しなければならないなど、ラリーに出場するまでの準備や作業もターマックラリーとは比較にならないほど大変でした。実はラリーの本番を迎える前に、会社のダートテストコースでテストをしてきたのですが、その時はたまたま雨が降っていたこともあり、ボディのありとあらゆるところに大量の泥が付着して、その泥を落とすだけでも大変でした。泥が付着したままでは工具が入らないこともあり、実際のラリーではさらに厳しい環境のなかで作業をしなければならないと覚悟してきました。ターマックラリーよりも作業量が増えるので、時間の使い方もさらに難しいと実感しました」。
しかし、今回のラリーは予想していたよりも天気が良かったことと、ドライバーの大倉聡/北田稔組がクルマをいたわりながら走ったこともあり、結果はJN5クラス11位ながらトラブルフリーでラリーを終えることができた。「サービス作業もチーム全体として順調に行うことができ、初のグラベルラリーとしてはまずは合格点かなと思います」と、豊岡チーフメカニック。「次戦の福島は、洞爺よりもさらに路面が厳しいと聞いていますので、さらに気を引き締めて挑もうと思います」と、次戦に向けての抱負を語った。過酷な全日本ラリーを舞台に、社員メカニックたちの鍛錬とあくなき挑戦は続く。
クラス別順位結果(上位3クルー)
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 新井 敏弘/田中 直哉 |
---|---|
スバルWRX STI | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 新井 大輝/伊勢谷 巧 |
スバルWRX STI | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 炭山 裕矢/保井 隆宏 |
スバルWRX STI |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 関根 正人/竹下 紀子 |
---|---|
三菱ミラージュ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 松倉 拓郎/松倉 英実 |
三菱ミラージュ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 小倉 雅俊/平山 真理 |
ダイハツ・ブーンX4 |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 寺川 和紘/石川 美代子 |
---|---|
マツダ・デミオ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 岡田 孝一/鶴田 邦彦 |
マツダ・デミオ | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 藤田 幸弘/藤田 彩子 |
マツダ・デミオ |
1位 |
ドライバー/コ・ドライバー 田中 伸幸/藤田 めぐみ |
---|---|
スズキ・スイフトスポーツ | |
2位 |
ドライバー/コ・ドライバー 高橋 悟志/箕作 裕子 |
トヨタ・ヴィッツRS | |
3位 |
ドライバー/コ・ドライバー 中西 昌人/廣島 真 |
スズキ・スイフトスポーツ |
※JN4、JN1はクラス不成立。 全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。