チャレンジプログラム S耐出走で得たものとは!?

2015.07.10 スーパー耐久2015

金曜日の練習走行、慌ただしいピットで作業をじっと見つめる小野田貴俊選手がいた。チャレンジプログラムに選ばれてから、自分の周りの変化について聞いてみた。

「自分は2000年からナンバー付きのワンメイクレースに参戦しており、S耐の他のチームにもレース仲間がたくさんいます。ピットを歩いていると『おっ、ワークスドライバーが来た!!』と茶化されるのが一番の違いですね(笑)。自分はあまり意識していなかったのですが、周りはそんな目で見ているんだと。そういう意味では“立ち振る舞い”も勉強ですね」。

 

 今日はステアリングをあまり握る機会がなく、若干手持無沙汰な様子にも見えたのだが…。

「確かに暇ですね。ワンメイクレースでは自分が何役もこなさなければいけませんが、プロはドライバーとメカが分業だから時間があります。これも普段では経験できないことですね」。

 

S耐マシンの印象はどうだろうか?

「ワンメイクレース用とは全然違いますね。ただ、『楽に速く走れるんだろうな』と思っていましたが、実際に乗ると想像よりも僕にとってはじゃじゃ馬でした(笑)。このマシンであのタイムで長時間戦う3人のドライバーは、『やっぱり自分とは違って凄いな』と感じましたね。現状では他のドライバーとのタイム差も大きいので、色々と教わって成長できればいいなと・・・」

そんな話をしていると、横にいた井口選手は「いやいや、僕も86/BRZレースに参戦していますが、小野田さんのほうが速いので逆に教えてもらいたいくらいです(笑)。また、常にS耐のマシンの乗っている僕らと違って、斬新な発想や僕らが言いにくいこと(!?)もスパっと言ってくれるのも助かります」と。ドライバー同士のコミュニケーションも良好だ。

迎えたDドライバーの予選。雨足は弱まり路面コンディションも良くなっているが、先に走ったプロドライバーと比べての遜色ないタイムだ。ちなみに87号車のDドライバーはスーパーGTのGT500にも参戦する石浦宏明選手。86号車と87号車は車両重量に若干の違いがあり86号車のほうが有利だが、ラップタイムは石浦選手からコンマ数秒落ちであった。小野田選手の走りをチェックしていたチーム関係者からも「小野田選手はいい走りをしているよ」と声が上がるなど、走りの評価も高かった。

決勝は8時間の長丁場。小野田選手の乗る86号車は、井口→蒲生→木下→小野田→蒲生の順番だ。クラス3位を走る木下選手からバトンを受け取った小野田選手。ライバルのホンダ勢とバトルをしながら走行を続け、86号車のファステストを記録するほどの走りを見せる。途中でペースダウンし5位に転落してしまうが、約2時間の走行をミスなく走り切り、蒲生選手に襷をつないだ。走行後、小野田選手はその場に倒れてしまうほど疲れきっていた。まさに完全燃焼である。その後、蒲生選手の追い上げで86号車は3位表彰台を獲得した。

ゴール後、疲労困憊ながらもホッとした表情を見せていた小野田選手に、今回の走り、今回のプログラムについて聞いてみた。

「全力を出し切りました、これが精一杯です。約2時間走行をしましたが、当初はここまで走るはずではなかったので・・・。実は無線で『ペースアップしろ!!』という指示があり、頑張りすぎたら集中力が切れてしまい、その後の記憶がありません(笑)。プロドライバーは常にこのような状況でも冷静に戦っているんだと思うと、自分はまだまだですね。当初はこのプログラムを断ろうと思ったこともありましたがやってよかった。これまでのレース人生の中でも貴重な経験となりました」。

1週間後に86/BRZレースの次戦(スポーツランド菅生)が控えている。

「目標はクラブマンクラスのチャンピオン。今回の経験を活かして頑張ります。S耐に比べればワンメイクはスプリントなので、もうドリンクは積まないで走ります(笑)」。

CHALLENGE Program Story 03CHALLENGE Program Story 03

  1. 2015.5 STORY 01 スーパー耐久のシートは誰の手に?!
  2. 2015.6 STORY 02 ドライバー小野田選手S耐初テスト走行!
  3. 2015.7 STORY 03 S耐出走で得たものとは!?