33台中19台が離脱する超サバイバルラリーを制し
奴田原文雄が今季初優勝!
2位新井敏弘がJN6チャンピオンを確定

全日本ラリー選手権第7戦 RALLY HOKKAIDO レポート

2015.09.23 全日本ラリー選手権2015

シリーズ最大規模の大一番は雨のサバイバル戦に

北海道帯広市で開催される「Rally Hokkaido」は、全日本ラリー選手権のなかでは最大の規模を誇り、アジア・パシフィックラリー選手権(APRC)との併催により、国内で唯一の国際ラリーとして開催される。かつてWRCラリージャパンでも使われたスペシャルステージ(タイムアタック区間。以下SS)が多く設定され、合計17本、189.82㎞のSS、そしてリエゾン(移動区間)を含めた総走行距離741.66㎞は国内最長で、クルマにもドライバーにも最もタフなラリーとして知られている。また、グラベル(未舗装路)でSS総走行距離が100㎞を超えるため、シリーズポイントが通常の2倍与えられることから、タイトルを争ううえでも重要な一戦となっている。今年はAPRC23台、全日本ラリー選手権38台のエントリー(出走は33台)で、合計56台が北の大地での熱戦を繰り広げた。

拠点となったのは、ラリージャパンのサービスパークとして使われた北愛国交流広場。9月18日(金)に行われたセレモニアルスタートで幕を開け、その直後にナイトステージのSS1を実施。本格的なラリーがスタートした19日(土)は前夜から降り続いた雨でウエットコンディションとなり、全日本ラリー選手権を戦う出走33台のうち19台がコースオフやマシントラブルでレグ離脱またはリタイアするという超サバイバル戦となった。最終日20日(日)は天候が回復し、北海道らしい秋晴れのなか、ダイナミックな戦いが展開された。

ラリーはAPRC部門からスタート。雨のなかたくさんの観客がラリーカーを見送った。
ラリーはAPRC部門からスタート。雨のなかたくさんの観客がラリーカーを見送った。

北愛国交流広場のサービスパークと併設されたラリーパークには多くの観客が集まり、年に1度のRally Hokkaidoを楽しんだ。
北愛国交流広場のサービスパークと併設されたラリーパークには多くの観客が集まり、年に1度のRally Hokkaidoを楽しんだ。

[ JN6クラス ] 奴田原/佐藤組が今季の不調を跳ね返し圧勝

シリーズランキングトップの新井敏弘/田中直哉組(スバルWRX STI)にとっては、獲得ポイントによってタイトル獲得が確定する可能性があり、新井組に注目が集まったこの一戦、序盤で大量リードを築いたのは奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)だった。ウエットタイヤを装着し、SS2、3、4でベストタイムを奪い、この3本のSSだけで2番手以下に1分以上のマージンを築き上げる。一方、新井/田中組は先頭走者のため、路面の轍に溜まった雨水の“水かき役”となってしまい、SS4を終えた時点でトップから1分46秒4遅れの4番手と大きく出遅れる。しかし、昼のサービスでウエットタイヤに交換すると、SS5からベストタイムを積み重ねて逆襲。SS8でそれまで2番手につけていた鎌田卓麻/市野諮組(スバルWRX STI)が電気系トラブルからリタイアし、3番手の勝田範彦/石田裕一組(スバルWRX STI)がSS8、SS9でホイールを破損して遅れたこともあり、新井/田中組が一気に2番手まで浮上した。そのSS9で奴田原が今大会の決定打とも言えるベストタイムをマーク。トップの奴田原と2位の新井の差は1分50秒3に拡大し、土曜日のステージを終えた。

最終日の20日(日)は打って変わって快晴。トップの奴田原/佐藤組はベストタイムこそ1本にとどまったものの、初日に築き上げたマージンをしっかりと守り切り今季初優勝を獲得した。一方、2番手の新井/田中組は、ここでシリーズチャンピオンを決めるために、最終日のSSを全力で攻め続ける。シリーズ2位の勝田/石田組も、チャンピオンへの望みを次戦以降に繋げるために新井に対抗するが、新井/田中組が最終日のデイトップポイントを獲得し、2位入賞とともに今年のJN6クラスチャンピオンを確定させた。そして、3位には、前日の順位を守り切った炭山/保井組が入賞している。

昨年のJN6クラスチャンピオン奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションX)が今季初勝利。
昨年のJN6クラスチャンピオン奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションX)が今季初勝利。

2位入賞の新井敏弘/田中直哉組(スバルWRX STI)が、今年のJN6クラスチャンピオンを確定した。
2位入賞の新井敏弘/田中直哉組(スバルWRX STI)が、今年のJN6クラスチャンピオンを確定した。

[ JN5クラス ] 関根/竹下組が最終日に逆転して今季3勝目

JN5クラスは、序盤から激しく首位が入れ替わる展開となった。まずSS2で、グラベルラリー2連勝中の関根正人/竹下紀子組(三菱ミラージュ)がトップに立つと、続くSS3では松倉拓郎/松倉英実組(三菱ミラージュ)が、SS4では石田雅之/遠山裕美子組(トヨタ86)がトップを奪う。石田はSS8、9、10とベストタイムを連発して2番手以下を引き離しにかかるが、SS10でリヤデフを破損してしまい、フィニッシュ後にまさかのデイリタイアとなってしまった。代わってトップに立ったのは、天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・ヴィッツGRMNターボ)だった。天野/井上組を関根/竹下組が追う展開となったが、両者ともクルマにダメージを負いながらの苦しい戦いとなった。天野/井上組が8.3秒差でトップを守り切り、初日のステージを終えた。両者とも前日の最終サービスでマシンを修復して迎えた最終日。この日最初のSS12で関根/竹下組が天野/井上組を逆転すると、そのまま一歩も譲らず今季3勝目を飾った。2位は天野/井上組、3位には中村修/木村悟志組(三菱ミラージュ)が入った。この結果により、天野/井上組のシリーズチャンピオンの確定は次戦以降に持ち越しとなった。

JN5クラスは関根正人/竹下紀子組の三菱ミラージュが第4戦、第5戦に続く3勝目。
JN5クラスは関根正人/竹下紀子組の三菱ミラージュが第4戦、第5戦に続く3勝目。

[ JN3クラス ] 岡田/鶴田組が走り切って優勝、チャンピオン確定

JN3クラスは、シリーズランキング2位の鷹野健太郎/尼子祥一(マツダ・デミオ)が、SS2のフィニッシュ手前で転倒するというハプニングが発生。シリーズランキングトップの岡田孝一/鶴田邦彦(マツダ・デミオ)は、完走を果たせばチャンピオンが決定するという状況となった。ライバル不在となった岡田/鶴田組は、ウエットコンディションとなった初日の難ステージを無理のないペースで攻め完走。今季4勝目を獲得するとともに、ドライバーの岡田は今シーズン2戦を残して自身初となる全日本タイトルを決めた。なお、コ・ドライバーの鶴田は第5戦、第6戦を欠場しているため、コ・ドライバーのタイトル決定は第8戦以降となる。

JN3クラスは岡田孝一/鶴田邦彦組のマツダ・デミオが優勝。岡田のチャンピオンが確定した。
JN3クラスは岡田孝一/鶴田邦彦組のマツダ・デミオが優勝。岡田のチャンピオンが確定した。

[ JN2クラス ] 地元の若手、阿部敬珠/阿部祥吾組が優勝

JN2クラスは、このラリーを得意とする田中伸幸/藤田めぐみ組(スズキ・スイフトスポーツ)がSS2でラジエターを破損してリタイアを喫する。代わってシリーズ逆転チャンピオンの可能性をもつ中西昌人/廣島真組(スズキ・スイフトスポーツ)がトップに立つが、SS8でコースオフして無念のリタイアとなってしまう。JN2クラスで唯一生き残ったのは、地元の若手ドライバー、阿部敬珠/阿部祥吾組(スズキ・スイフトスポーツ)。ベテランでも手を焼く荒れた路面と大雨のなかをなんとかフィニッシュまでたどり着き、最終日も走り切って、見事全日本ラリー選手権初優勝を飾った。なお、中西/廣島組がノーポイントに終わったことで、タイトル争いはこのラウンドをスキップしたシリーズトップの高橋悟志/箕作祐子組とシリーズ2位の田中/藤田組に絞られることとなった。

地元北海道の若手ドライバー阿部敬珠/阿部祥吾組のスズキ・スイフトスポーツが走り切って全日本ラリー選手権初優勝。
地元北海道の若手ドライバー阿部敬珠/阿部祥吾組のスズキ・スイフトスポーツが走り切って全日本ラリー選手権初優勝。

クラス別順位結果(上位3クルー)

class - JN-6
1位 ドライバー/コ・ドライバー
奴田原 文雄/佐藤 忠宜
三菱ランサーエボリューションX
2位 ドライバー/コ・ドライバー
新井 敏弘/田中 直哉
スバルWRX STI
3位 ドライバー/コ・ドライバー
炭山 裕矢/保井 隆宏
スバルWRX STI
class - JN-5
1位 ドライバー/コ・ドライバー
関根 正人/竹下 紀子
三菱ミラージュ
2位 ドライバー/コ・ドライバー
天野 智之/井上 裕紀子
トヨタ・Vitz GRMN Turbo
3位 ドライバー/コ・ドライバー
中村 修/木村 悟士
三菱ミラージュ
class - JN-3
1位 ドライバー/コ・ドライバー
岡田 孝一/鶴田 邦彦
マツダ・デミオ
   
 
 
   
 
 
class - JN-2
1位 ドライバー/コ・ドライバー
阿部 敬珠/阿部 祥吾
スズキ・スイフトスポーツ
   
 
 
   
 
 

※JN4、JN1はクラス不成立。全日本ラリー選手権のクラス区分はこちらを参照ください。