ダカールラリー2012

7連覇の夢ならず-ダカールラリー2012を振り返る-

世界一過酷と言われる「ダカールラリー」。
トヨタ車体(株)のチームランドクルーザー・トヨタオートボデー(TLC)※1は、市販車両のランドクルーザーでダカールラリーに参戦し続けており、2011年度まで市販車部門6年連続優勝を果たしている。今大会では、前人未踏の市販車部門7連覇を目指し参戦。惜しくも連覇はならなかったものの、市販車部門2位の好成績を収めた。ダカールラリー2012終了後から2ヶ月たった今、レースの様子を振り返る。

  • ※1 チームランドクルーザー・トヨタオートボデー(TLC)は、トヨタグループの中でランドクルーザーの生産を担当するトヨタ車体(株)が、ランドクルーザーの走破性・安全性・信頼性を世界に証明するとともに、ラリーで得たノウハウを車両開発にフィードバックすることを目的に、ダカールラリーに参戦しているラリーチーム。

震災の影響を乗り越え「ダカールラリー2012」のスタートに立つ

2011年10月にエジプトで開催されたファラオラリーに参戦したTLC。ダカールラリー本番に向け、様々な車両の負荷テストを実施

2011年10月にエジプトで開催されたファラオラリーに参戦したTLC。ダカールラリー本番に向け、様々な車両の負荷テストを実施

2011年3月初旬、TLCは「ダカールラリー2012」の参戦に向けて、例年通り海外・国内の訓練スケジュールを計画していた。そんな矢先の3月11日に起こった東日本大震災。日本中の企業が震災の影響を受け、操業停止が相次いだ。トヨタ車体もその1つであった。
そういった中、ダカールラリー2012へ向けてのTLCの活動継続は危ぶまれたが、会社上層部の「こんな時だからこそ、多くの人を元気づけることができるこの活動は続けるべき」との後押しを受け、活動を開始した。ただし当初より計画していた訓練スケジュールを大幅に縮小された。毎年、6月に実施しているモロッコでの海外訓練は中止となり、国内で可能な訓練をすることになった。

10月にエジプトで開催されたファラオラリーに参戦。結果は、マシントラブルにより1号車は市販車部門5位、2号車は4位と振るわなかったが、ダカールラリー本番に向け、様々な車両の負荷テストを行い、課題の洗い出しができた。また、このラリーを通して、チーム一丸となって勝利に向かっていく姿勢は、「チームの結束力」をより堅固なものとした。
こうしてダカールラリー2012への準備が着実に整っていった。

アルゼンチン、チリ、ペルーの3ヶ国を横断する8374kmの戦いが始まる

周りに惑わされず自らのペースを守れるかが勝負と意欲を漲らせる、1号車三橋ドライバー/ゲネックナビゲーター

周りに惑わされず自らのペースを守れるかが勝負と意欲を漲らせる、1号車三橋ドライバー/ゲネックナビゲーター

リム落ちや不運なスタックに見舞われ、序盤で苦しむ1号車

リム落ちや不運なスタックに見舞われ、序盤で苦しむ1号車

ダカールラリー2012は、アルゼンチンの“マル・デル・プラタ”からペルーの“リマ”を走行する全長8374km(競技区間4191km)の戦い。昨年との大きな違いは、ペルーが新たなコースとして加わっており、また、競技を行う走行距離が全体的に短くなっていることだ。

TLCは、例年2台の車両で参戦している。1号車は昨年、市販車部門で優勝した三橋淳ドライバーとアラン・ゲネックナビゲーターのペア、2号車は寺田昌弘ドライバーと田中幸佑ナビゲーターのペア(昨年、市販車部門6位)と、昨年と同じペアで今年も参戦。1号車は市販車部門7連覇を目指して挑み、2号車は1号車をサポートするという役割分担はあるものの、今年は1号車2号車で市販車部門1・2フィニッシュを狙えるレベルに準備ができていた。
「チーム体制は昨年とほぼ同じですが、今大会で勝利の方程式を確立させるつもりです。7連覇にとどまらず、8、9と連覇の記録を伸ばせられる磐石のチーム体制を築きたい。」TLCの監督を2008年4月から務める森達人はスタート前から力強く語っていた。

そしてアルゼンチンの“マル・デル・プラタ”から現地時間の2012年1月1日、ダカールラリー2012がスタートした。
今大会は、1月1日~15日の間、1日毎に走行区間が区切られた、計14ステージの競技が行われる。

ミスなく上位を目指すと意気込む、2号車寺田ドライバー/田中ナビゲーター

ミスなく上位を目指すと意気込む、2号車寺田ドライバー/田中ナビゲーター

快調な走りで、砂地を落ち着いて走破した2号車

快調な走りで、砂地を落ち着いて走破した2号車

序盤では、例年に比べると流れが悪く、前方の車両を追い抜くのに手間取ったり、リム落ち※2に見舞われたり、思うようにタイムが伸ばせない。さらに、オートバイが目の前で転倒、それを避けようとしてスタック※3してしまう不運な出来事もあった。
2008年からTLCに加入し、3回の優勝を果たしている三橋ドライバーはこう語る。「初日にリム落ちがあって、その修理に3分かけたら、スペシャルステージ(競技区間)総合で63位となってしまった。順位が下がったことにより翌日のスタート順が遅くなり、前方の車両を追い抜くのに手間取ってしまった。そういった不運が続き、序盤はリズムに乗れなかった。」序盤のステージでは競技区間の距離が短い為、3分のストップが大きく順位を下げることになってしまうのだ。
そういった中でも、着実に順位を上げ、第3ステージでは市販車部門の首位に立った。

一方、2号車は序盤、非常に良い状態で走行ができた。前方を遮る車両がほとんどなく、リスクが少ない状態で着実に走ることができた。
トヨタ車体の社内公募で選ばれ、今大会で2年目となる田中ナビは「自分としては、初日は緊張感もあり、うまく出来なかったが、2日目、3日目と徐々に調子が上がった」と語る。
そんな順調にいっていた2号車だったが、第4ステージでアクシデントに見舞われる。

  • ※2 リム落ち:ホイールからタイヤが外れてしまう状態
  • ※3 スタック:車両がドロ、砂、土、雪などにはまり込んで自力で抜けなくなった状態