MWR ファクトリー探索 - シャシ製造
今日はシャシの製造(fabrication)風景をご紹介。 Michael Waltrip Racing ではこのシャシ製造専用に 40SqFt もの大きさの建屋を持っています。以前訪問した時はここもツアーで案内していました。さすがに作業現場に近づくことはできませんが、シャシの製造風景をみせているチームはあまりないのでは? まずは全景(と言っても建屋のたった1/4なんですが)こんな↓感じ。車両製造用のブースが四つみえますよね。この左側にも製造ブースがあって全部で七つあったと思います。
NASCAR のレース車両は鉄パイプを組んだパイプフレームの上に鉄板を貼った構造。市販の乗用車・ベース車両のカムリとはまったく共通点がありません。確認したことはないんですが、量産カムリの部品はひとつも使っていないと思います。
パイプフレームの製造は溶接中だったんで作業風景は撮れなかったんですが、完成したパイプフレームシャシはこんな↓感じ。ちなみにこれは左後方からみたところ。なんとなくイメージがありますよね。
こちら↓がエンジンルームを前からみたところ。パイプフレームになっているのがよくわかりますよね。この形状はレギュレーションで定義されていますので、どのマニュファクチャも同じ形状です。
パイプフレームの上にこの鉄板↓を貼っていきます。ホントたんなる平らなまっすぐの鉄板。
まずは大雑把な大きさにこの↓切断機を使って切ります。まっすぐにしか切れませんのであくまでも直線部だけ。
それをこの↓ベンダーをつかって曲げてゆきます。ただしこの機械では二次元的な曲げしかできません。
フェンダーなどの三次元形状の曲げをだすには、この↓English Wheel と呼ばれる道具を使います。このローラーの間に鉄板を挟んでゴシゴシとこすりながら曲げていくんです。その技はまさに芸術。手で触った感覚で曲げてゆきたまにテンプレートと呼ばれるアルミの型紙にあてて形状を確認するんです。
ちょうどBピラーを加工していたのでちょっとご紹介。まず大まかに形をつくったパーツを車両にあてて形状を確認↓。
で加工が必要なところをペンでマーキング↓。
この↓大胆さ(笑)がアメリカンなのかも・・・
で、マーキングしたところをハンドメイドで切断↓してゆきます。
作業風景の全景をみると↓テンプレートに合わせてボディの外形が作られていくのがわかりますよね。ひとつのブースで二人が作業をしていました。こうやってハンドメイドで作るのでゼロからはじめて形になるまで30日程度かかるそうです。
フロント部分はエアロダイナミックに影響が大きいので、インチキできないようにFRPプラスチックで作ったパーツが用意されています↓。この部品は各マニュファクチャーがそれぞれのベース車両に似るようにデザインをし、それを NASCAR に持ち込んで風洞実験でマニュファクチャ間で差がないことを確認した上で認定パーツとして登録されます。各チームはマニュファクチャ毎に登録されているパーツをマニュファクチャから入手して使うんです。それ以外のパーツは許可されません。
フロントフェンダーがまだ装着されていないフロント周りはこんな↓感じ。パイプフレームのベースの上にテンプレートに合わせて鉄板が貼られているのがわかりますよね。
リアもこんな↓感じ。パイプフレームに取り付けられた細い金属の棒で外形パネルが支えられているのがわかりますよね。 だから?ぶつかるとグシャって潰れてヒラヒラと鉄板が舞うんです・・・!
こちらにくるまでは TMG (ドイツ)の F1 製造現場しか知らなかったわたしにとって初めてこの風景をみた時はショックでしたよー。ハイ
焼成時の寸法変化を極力減らすためにプラスチックを加工してつくったオス型をベースにカーボンコンポジットでメス型を作る。 その型に数十ページになる作業指示書をみながら正確に貼り付けてゆくカーボンクロス。 それをオートクレーブで焼いたあとにコンマ何ミリの精度で加工してできるエアロパーツ。 という世界とはまったく違うんですよ。 あぁ・・・余談ですが・・・某FNチームで型も使わずハンドメイドでドライヤーで乾かしながらカーボンパーツを作っていたのをみた時ときにもちょっとショックを受けましたが・・・(笑)
次回はペイント編!
Chase 進出決定まであと1日!
イサカ [09.09.12 02:37]
Juraさん いつもコメントありがとうございます♪
「日本の NASCAR ファンにどうやってつくっているのか紹介したい!」って言ったら許可してくれましたよー。 太い小さなパイプフレームの上に細い鉄棒で浮かすように鉄板を貼っているのがわかっていただけました? ぶつかるとグシャっと潰れるのですが、中のパイプフレームはあまり影響がないので外側をガムテープ(の親分)で直して走れちゃうんですね。
GrandAM も基本的には一緒です。あれ NASCAR が主催者なので・・・(笑)
TMG も初期の頃といまはかなり規模が違いますね。わたしが初めて訪問したのは 1994年 だったなー。ホントこじんまりとしていたんですけど・・・
いま Practice-1 が終わって Kyle が3位、 Denny が5位です。 Brian はやっぱり得意ではないようで36位・・・。あと20分で Practice-2 が始まります。
m&ms [09.09.12 08:17]
イサカさん、ありがとうございます。
取材を許可してくれたファクトリーにも感謝ですね。
一台作るのに30日とは…「匠の世界」ですね!職人さんです。
ノーズ部分をカーボンにしないのは安全面の配慮からでしょうか?
カーボンは割れると断面がかなり鋭いですから…
写真を拡大してみるとスポット溶接のようなあとを確認できる
のですが、最終的な固定はどのようになっているのですか?
貴重な写真の数々、ありがとうございました。
イサカ [09.09.12 09:51]
m&msさん いつもコメントありがとうございます♪
Michael Waltrip Racing とは特に仲が良いのでこういったリクエストに応じてくれるんです。Joe Gibbs Racing だとそうはいきませんね・・・。
カーボンパーツを使わないのはコストを抑える意味もあるんです。カーボンを使いだすとそれなりの設備も必要になり、予算のあるチームとそうでないチームの差が開いてしまいます。リアウィングはカーボンですが、これは NASCAR からの支給品です。
固定はスポット溶接です。どこでも手に入る設備ですね。
MR2 No.6 [09.09.12 11:09]
イサカさん、貴重なレポートありがとうございます。
Michael Waltrip Racingは以前TV番組でもカップドライバーだった福山選手の取材も快く受けていましたね。確かラジオ番組のスタジオまであったような記憶があります。
フレームはCOTになってより標準仕様になったので、もっと支給品が多くファクトリーではアセンブリだけで”Body Builder”かと思ったら全然違いますね。フレームの溶接治具も標準品ではないのでしょうか?これも各チームで違うとしたら、溶接の歪や残留応力の低減方法などもノウハウがあるのでしょうか?
外形パネルは完全に私が思っていたのとは違いました!ほぼ全て手作りなんて。。。2D曲面はともかく、3D曲面があるのでまとめてどこかでプレスされているのかと思いましたが。。。驚きです!まさに職人芸!!
そういえば、春のアトランタで優勝したKyle車のフロントマスクがチャリティオークションに出ていました。300ドルくらいで落札されていました。ちょっと良いかな?とも思いましたが、保管場所や送料を考え止めました(笑)
イサカ [09.09.12 11:31]
MR2 No.6さん いつもコメントありがとうございます♪
そうそう、Michael Waltrip Racing には Michael 用のラジオ番組スタジオがあるんです。ハイ よくご存知ですねぇ・・・脱帽モノです。 支給品・購入品は前後バンパー・前後フードなどがメインかな? 基本的には手作りです。 そういえば以前は Nationwide / Truck 用に TRIAD がパイプフレームとボディパネルを作っていたんだけど、いまはどうなんだろう?
溶接用の治具はお手製というか普通にある工具でしたよ。 テンプレートは NASCAR の標準品です。
たまにインターネットでサイドパネルとか売ってますよね。 あれファンはやっぱり買うんでしょうねぇ・・・。 アメリカだから置く所に困らないのかな? かなり昔にマラネロのフェラーリのファクトリーに行ったことがあるんですが(量産車の会議で・・・)、ファクトリーショップにはいろんな中古部品が販売されていましたよー。
MR2 No.6 [09.09.12 12:13]
結構普通のお店(Hooter'sなどの飲食店)でもさりげなく、ボンネットやパネルを飾っているところもありますね!
マラネロは個人旅行で行ったことがあります。博物館のショップでも売っていました。で。。。エンジンのバルブを買っちゃいました!(笑)
イサカ [09.09.12 12:27]
MR2 No.6さん いつもコメントありがとうございます♪
ありますあります・・・お店に NASCAR グッズが飾ってあるところ! IRL なんかの部品はあまりみかけないんですが NASCAR の部品を飾っているところってありますよねー。
エンジン・バルブですか?ちなみにお幾らぐらいだったんでしょう?うちも売れば少しは予算の足しになるのにぃ・・・(笑) でもいろいろと秘密があるんで売れないんですよねー。
m&ms [09.09.12 12:54]
以前のブログで、ドライバー1人あたり15台前後の車両を制作するとありましたが、激しくクラッシュしてフレームが狂った場合、程度にもよるでしょうが再利用するのでしょうか?
写真にあるような堅牢なフレームですから修正するのもたいへんですよね。
フレーム修正機も大きそうです。
イサカ [09.09.12 12:58]
m&msさん いつもコメントありがとうございます♪
ハイ、それもちゃんと取材?済みでもう少しあとで書こうかなーと思っていました。(笑)
再利用しますよちゃんと。修理しているところもアップロードしますね。次回はまずペイント編!
Jura [09.09.12 02:30]
ものすごく詳しい説明ありがとうございます。
前回、「シャーシ製作は秘密」と書かれていたのに、よく許可してくれましたね。Michael Waltrip Racingに感謝感謝です。
そしてお願いしてくださったイサカさんにも感謝です。
これを見るとタイヤ周りを修理している場面などでも、「ああこれを直しているのだな」とすぐわかりますねね
TMGができた時見学を許可されて見に行きました。
F1とはまた違う作り方ですね。
実は私チップガナシのインディカーのほうのファクトリーには行ったことがありまして、あそこにはグランダムも作っていて、フレームだけの車を見たことがあります。
その後どうやって作るのかなと思ってましたが、グランダムもこれに近い作り方でしょうか。
ペイント編も楽しみです。