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開発者が語るレーシングエンジン開発秘話 前編(1/2)
もっと使ってもらえるエンジン。それがRV8Kの原点

もっと使ってもらえるエンジン。それがRV8Kの原点 トヨタ自動車 スーパーフォーミュラ プロジェクトリーダー 永井洋治

2009年に実戦デビューしたレースエンジン「RV8K」は、4シーズンにわたってフォーミュラ・ニッポン(現スーパーフォーミュラ)、SUPER GTで使用され、多くの勝利を挙げてきました。また、国内のトップカテゴリーに留まらず、ル・マン24時間レースなど海外でも多くのカテゴリーで使われています。このエンジンに携わったトヨタ自動車 スーパーフォーミュラ プロジェクトリーダー 永井洋治の開発にまつわる話を前・後編でご紹介します。

「レースエンジンはよく壊れる」でいいのだろうか?

今年5シーズン目を迎えるRV8Kについてお話を聞かせてください。

永井洋治(以下永井): 我々はすでに次世代レーシングエンジンの開発に着手しています。今、トヨタ自動車は「もっといいクルマを作ろうよ」という軸を定めて自動車開発を進めています。次世代レーシングエンジンも、この軸に沿って開発されます。RV8Kは、そこへつながる考え方の中で開発され使われてきたエンジンです。

永井さんがトヨタ自動車でレース用エンジンを開発するに至った経緯を教えてください。

永井: わたしは、茨城県の鹿島の農家に生まれたんですが、父が「時代はクルマだ」ということでいきなり自動車販売店を始めたんです。時代は高度成長時代だったので、店は大きくなりました。そのように子供の頃から自動車が身近にあったからか、迷いもなく「将来は自動車のエンジンを作るんだ」と決めていました。大学も工学部に進んで機械を勉強。そしてトヨタ自動車に入社したんです。

当初からモータースポーツの部署に配属されたのですか?

インタビューに答える永井洋治 トヨタ自動車 スーパーフォーミュラ プロジェクトリーダー
永井: エンジンを作りたかったんですが、最初はボディ設計に配属されました。でもどうしてもエンジンがやりたいと本社人事に直接申し入れたんです。トヨタ自動車はおもしろい会社ですよ。こういう要望が比較的通るんです。確かにわたしも生意気ではありましたが(苦笑)、ある機会に手を上げて「行きたい部署を聞いておきながら、なかなか行かせてくれない。おかしいじゃないか」と発言したりしました。そうしたら次の年にモータースポーツに配属されました(笑)。"何かをやりたい"という人間の気持ちを尊重してくれる会社だし、一度の失敗は許してくれる社風がありますね。

モータースポーツ部で最初にどんな仕事をしましたか。

永井: 最初にやったのはル・マンの車両でした。SWC(スポーツカー世界選手権)ですね。V10エンジンの立ち上げのときで、ちょうど(エンジンが)回り出したところでした。当時のレースエンジンはよく壊れたんです。テストといえども、市販エンジンは目の前で壊れるということはまずありません。
でもレースエンジンはよく壊れました。それだけ追求して造っていると言うこともあるんですが、今思えば、シミュレーション精度、設計ツール、工作技術、実験設備など、すべての点でまだまだだったんですね。高回転で回すエンジンを開発することに対して、トヨタが、というわけではなくて、ライバルの各社も含め全体の技術が足りていなかった。これらの技術は、今では格段に進歩しました。