グランプリ > 2007グランプリ > モナコGP > レビュー
Rd.5 Grand Prix of Monaco
grand prix
プレビュー フリー走行 予選 決勝 レビュー
新居章年リポート
2007年5月28日(月)

いつもご声援ありがとうございます。早いもので、今年もヨーロッパラウンド前半戦最後のレースが終わりました。それでは伝統の一戦、モナコGPの報告をいたしましょう。

●スペインGPでの反省をもとにモナコ決戦へ向けて信頼性を再確認

前戦からここモナコに向けては、大きな改良等は行わず、各部のチェックをはじめとしたメンテナンスを中心とした作業をし、信頼性の確保に努めた。
前回スペインGPのスタートでヤルノ(トゥルーリ)に発生した燃圧低下の問題は、その後ファクトリーで調査した結果、単なる燃料漏れだということが判明しました。したがって、今回のモナコGPに向けて、機構的なシステムを見直すなどという大がかりな変更はなく、メンテナンスをしっかり行ってきました。ラルフ(シューマッハー)のリタイアについては、「ホイールベアリングがおかしい」という無線の情報があってピットインしてきたため、レース中に修復することは不可能だと判断してしまったのですが、実際には振動はノーズ付近から発生していたので、ノーズ交換をすればレースを続行できていただけに悔いが残りました。確かにクルマを速くするために、時にギリギリの信頼性となることもありますが、やはりレースは完走しなければ結果を残すことはできません。真のトップチームとなるためには、スピードだけでなく、高い信頼性も必要となってきます。スペインGPの後、モナコGPまでの2週間はファクトリーが一体となって、信頼性の向上に全力を注いできました。

●初日はヤルノ4番手、クラッシュしたラルフもタイムは好調

木曜日の走行初日、ヤルノは好タイムをマークするなど好調だったが、土曜日最後のフリー走行は雨。コンディションが変わり、苦しい予選を戦うこととなってしまった。
今回のモナコGPでは、今年初めてとなるスーパーソフトタイヤが投入されました。直前のポール・リカール・テストで、我々もライバル同様このスーパーソフトを試しましたが、ポール・リカールとモナコでは路面の粗さがまったくといっていいほど異なるので、まずフリー走行でしっかりと走り込むことが重要でした。しかし、モナコは市街地コース。最初のフリー走行では路面がホコリっぽいのでスーパーソフトを履かず、走行ラインがある程度きれいになった午後に2種類のタイヤで走行データを取りました。
モナコでは、フロントタイヤのグレイニング(めくれ摩耗)をいかに克服するかが課題となるのですが、我々のチーム2台には予想していたよりもその心配はなかったので安心しました。ただモナコの路面は変化が激しいので、ヤルノが午後のセッションで4番手のタイムをマークしたといっても、それで安心せず、セットアップに関して煮詰め直す必要がありました。  フリー走行2回目の終盤に発生したラルフのクラッシュは残念でしたが、あのときラルフはセクター1とセクター2を自己ベストタイムを更新しており、調子は悪くなかったんです。残念ながらプールサイド・シケインの縁石に引っかかり、バランスを崩して壁に激突し、右フロントサスペンションを壊してしまいました。幸いモナコGPならではのスケジュールにより翌日が休息日だったので、気持ちの切り替えはできたのではないでしょうか。

●ヤルノのトップ10進出を阻んだ、予選第2ピリオドでの黄旗

今シーズン、レース初登場となったスーパーソフトコンパウンド。昨年は度々見られた、ささくれ状にめくれるグレイニングが心配されていたが、今回は問題とはならずに済んだ。
しかし、予選で2台そろってトップ10を逃し、今シーズン初めて最終ピリオドに進出することができなかったということは、本当に残念としか言いようがありません。
まず、ヤルノが第2ピリオドで脱落した理由として、ちょうどアタック中に最終コーナーひとつ手前のラスカス・コーナーでキミ・ライコネン(フェラーリ)のクルマが停止していた影響が考えられます。我々もモニターで見ていたのですが、マーシャルがすぐに片付けてくれることを期待して、そのことをヤルノには無線で伝えませんでした。実際ライコネンのクルマはヤルノが通過するときまでには片付けられていたのですが、直前のポストにいたマーシャルがイエローフラッグを出していたために、ヤルノはアクセルを戻さざるを得なかったのです。あれがなければ、1分16秒台前半のタイムで、問題なく最終ピリオドに進出できたと思うだけに残念です。
もちろん、ヤルノにはその後もう1回タイムアタックを行うチャンスがあったのですが、そのときはブレーキがロックするという症状が出てしまい、結局満足のいく予選アタックができないまま、第2ピリオドで予選を終えることになりました。
ラルフに関しては、渋滞による影響がなかったわけではありませんが、初日のフリー走行で気になっていた、縁石に乗り上げたときクルマが弾むという症状を解決できなかったことが響きました。
とはいえ、モナコでは何が起きるがわからないので、最後まであきらめず、チャンスを狙って決勝レースへと臨みました。

●スタートでのつまずきがすべて、北米ラウンドで巻き返しを!

1ストップ作戦を採用したチームは2ストップより若干多いくらいと、ほぼ半数に割れた今回のピットインタイミング。トヨタチームの作業は問題なく行われたが、順位が逆転するほどには至らなかった。
そしてレースは、スタートがすべてという結果となりました。まずヤルノは、発進する瞬間にエンジンがストールしかけるというトラブルに見舞われました。ただし、その時点でエンジンは完全に停止していなかったので、ヤルノがクラッチをつなぎ直すという作業を迅速に行い、なんとかスタートすることができました。しかし、すでに数台のクルマに先行されて18番手までポジションを落としてしまいました。
ラルフのほうは、スタート自体は悪くなかったのですが、1コーナーでのポジション争いで、混乱を避けてコース外に出ていた他のクルマが1コーナーを過ぎたところでコースに戻ってきたため、その影響を受けた形で最後尾に下がってしまいました。抜きどころがないモナコで、オープニングラップの順位が18番手と22番手と、我々にとって状況はかなり厳しいものになりました。
チームは2台ともに1ストップ作戦を採っていましたが、作戦としては悪くなかったと思います。しかし、完走扱い19台、17台がチェッカーを受けるという高い完走率となった今回のレースで、ポジションを上げることは簡単ではありませんでした。しかもレース中、ヤルノはブレーキの温度が上がるという苦しい状況にも見舞われ、なかなか上位のペースについていくことができませんでした。
そのような状況でも、2台がそろって完走したことは収穫でした。ヨーロッパラウンド前半戦では結果を残すことができませんでしたが、ぜひとも北米ラウンドでパナソニック・トヨタ・レーシングの実力を発揮したいと思っています。ご声援よろしくお願いします。


伝統のモナコGPに挑む新居章年。予選でのつまずきが最後まで響いてしまい、決勝では2台完走を果たしたのみにとどまった。チームは北米ラウンドの2戦で巻き返しを狙う。