新居章年リポート
2007年7月23日(月)
いつもご声援ありがとうございます。ホッケンハイムリンクで行われていたドイツGPに代わって、今年はニュルブルクリンクのヨーロッパGPがドイツで唯一開催されるF1となりました。あいにくの雨で大波乱のレースとなりましたが、その模様を報告します。
前戦イギリスGPで発生したホイールナットのトラブルは解決。今回はサイドポッドエクステンションの形状をアップデート
●第2の地元グランプリへ向けて、トラブルへの対策は万全
前回のイギリスGPでは2台そろってリタイアに終わったわけですが、エンジンは2台とも新しいものに積み替えることなく、今回2戦目のエンジンとして使用することにしました。空力的には、大きな変更ではありませんが、風洞実験で効果があったので、サイドポッドエクステンションの形状をアップデートしたものに変えています。前戦イギリスGPでラルフ(シューマッハー)に発生したホイールナット締めつけの問題は、原因を究明することができたので、再び問題を発生させることはないと思います。
つまりイギリスGPのレース中にラルフのトラブルの原因が特定できず、ヤルノ(トゥルーリ)をリタイアさせましたが、結果的にはリタイアさせる必要はなかったわけです。しかし安全性を考慮すれば、原因が特定できていなかった以上、それ以上ヤルノを走らせるわけにはいかず、下した判断に間違いはなかったと思います。
ニュルブルクリンクはパナソニック・トヨタ・レーシングのファクトリーがあるケルンからも近く「第2の地元グランプリ」と言える場所。ぜひ、いい戦いを披露したいという気持ちで臨みました。
パナソニック・トヨタ・レーシングが本拠地を置くドイツは、ラルフ・シューマッハーの母国でもある
●雨を予測して、金曜日の午前中にすべてのプログラムを消化
金曜日は昼過ぎから雨が降るという予報を入手していたので、午前中のフリー走行1回目でプログラムをすべて消化できるよう、2台で役割分担して90分間の走行を進めました。ヤルノがミディアムタイヤを履いてショートランを繰り返した後、ソフトタイヤでロングランを行い、ラルフはソフトタイヤでセットアップを進めた後にミディアムタイヤでロングランを行いました。
予報通り午後になって雨が降り出しましたが、セッション前に雨は上がり、路面も途中からドライになったので、フリー走行2回目では午前中に煮詰めきれなかったセットアップの調整に時間を割きました。しかし、まだブレーキングでナーバスなところが残っており、中速コーナーでのアンダーステアが解消されませんでした。
前戦イギリスGPでは、強風のためにヤルノのセットアップが進まず苦しい戦いを強いられましたが、今回のヨーロッパGPは雨に見舞われたものの、2人ともプログラムを順調に消化。滑り出しとしては、いい初日だったと思います。
予選の最終ピリオドは、燃料を減らすことよりもクリアラップを狙うため、2台とも先手必勝でアタックに出た
●最後の予選アタックはクリアラップ重視で、8位と9位を確保
2台そろって予選トップ10に入ったことは良かったと思います。しかし、上位との差を考えれば、8位と9位に終わった今回の予選は残念でなりません。というのも、最終ピリオドで赤旗が出た後、われわれは予選が再開されたら、ほかのドライバーが全員ユーズドタイヤでコースインして1周だけ燃料バーンオフ走行をしている間に、ニュータイヤを履いてコースインし、みんながピットインしてタイヤ交換している間にタイムアタックを開始する作戦を採っていたからです。これは残り5分でセッションが再開されれば渋滞になることが予想されたので、だったら1周ぶん燃料が多くタンクに残った状態でもクリアラップを取るほうが得策と考えたからです。
実際、2人のアタックは完全にクリアでミスもなく満足していますが、目の前にいる2台とのタイム差を考えると、1周ぶん燃料を軽くしていれば十分に逆転できただけに複雑な心境でもあります。
予選の第2ピリオドではヤルノがスピンしてしまい、ギリギリでの通過となるなど、他にも反省点がなかったわけではありません。もっとしっかりとした力をつけて、第2ピリオドを確実に通過し、かつトップ2チームに次ぐポジションにつけたいと思っています。
雨で大荒れとなった決勝レース。序盤からピット作業の混乱によりチャンスを失い、上位進出は叶わなかった
●急変した空模様に翻弄され、実力を発揮できないまま得点圏外に
決勝は天候の急転に、ピット作業が翻弄される展開となってしまいました。まず、スタート直後の雨についてですが、スタートしてあっという間に雨雲が訪れ、1周目を終えようとした段階でヤルノをピットインさせることはできませんでした。チーム側の判断が遅かったと言われても仕方がありません。また、ここでラルフのタイヤ交換に手間取ったことも、トップを目指すためには改善しなければならないでしょう。いずれにしても、2人は3周の間に2回ずつピットインして、ポジションを下げる形となりました。
赤旗後のレースでも混乱がありました。まず、ヤルノは雨が降る可能性がまだあったため、エクストリームウェザー(深溝)タイヤを装着しましたが、結果的にそれは裏目に出ました。さらにドライ路面へと急変していく中で、ドライタイヤに交換するためラルフ、ヤルノの順で同時にピットイン。このときヤルノの左リアタイヤが用意されておらず、約20秒ロスしてしまいました。
結果的に、このピット作業の不備が2人のドライバーの足を引っ張ってしまいました。荒れたコンディションの中、懸命に走ってくれたドライバーには、本当に申し訳ないことをしました。なぜ、このようなミスが続いたのか。二度と同じミスを繰り返さないためにも、しっかりと原因を突き止め、次戦ハンガリーGPではどんな状況になっても実力をきちんと発揮できる体制で臨みたいと思いますので、ご声援よろしくお願いします。
ニュルブルクリンクでの新居章年。今回はクルマの速さはあったものの、急変する気象状況に足元をすくわれる形となりポイントを逃した。次戦ではチーム一丸となり巻き返しを狙う。