ハンガリーGP
テクニカル・プレビュー
パスカル・バセロン Q+A
●パスカル、まずはその首の固定具についてですが、それはハンガリーGPまでにははずれるのですか?
「そう願いたいね! シルバーストーンの金曜日の朝に目覚めてみたら首に痛みを感じた。原因は昔の柔道のケガだ。若かった頃、背骨の周囲の筋肉を何度も痛めたことがあってね。脊椎の骨のひとつが簡単に動くようになってしまって、過去20年のうちに30回ほど痛みのため首が回らなくなったことがある。たいていの場合、痛みが1~2日続き、その後、骨が元の位置に戻るんだが、今回はどんどん悪化してきた。スキャンを撮ってもらったところ、今回はヘルニアになっているらしい。おそらくこういった症状は加齢とともに悪化していくのだろう」
●かなり高いレベルで柔道をしていたのですか?
「実は17~18歳の頃、フランスの全国レベルだったんだ。だがケガのため柔道はやめにした。勉学のことを考えればそれだけのリスクを冒すわけにはいかなかったしね。柔道は本当に攻撃的なスポーツで、F1のいい準備になったよ! 本格的に練習をして試合を重ねていると、1年のうちに数回はケガをすることになる」
●ニュルブルクリンクの宝くじのようなレースでは運が巡ってきませんでしたが、レース前はどのくらいの手応えがあったのでしょうか?
「シルバーストーンのレースと同じような感じだったね。予選とラルフのレース時の速さを見れば、純粋なペースでは今季一番の週末のひとつと言えた。ニュルブルクリンクでの予選結果には実は少々落胆していた。6番手を狙えると予想していたが、それができなかったしね。大差があったわけではないが、われわれとしてはもうすこしいい結果を期待していたんだ。レースペースは良さそうだったし、セットアップの作業も上手くいっていて、方向性も明確だった。ルノーとレッドブルの前で走れると思っていたんだ」
●ブダペストではどんなことがハードルとなるでしょう?
「ニュルブルクリンクでは中~高ダウンフォース仕様だったが、ブダペストの場合平均速度が低いため、かなりの高ダウンフォース仕様になる。ハンガリーではどれだけドラッグが増えようと、とにかくダウンフォースを大きくしてラップタイムを稼ぐことになる。ドラッグで失うタイムよりも、ダウンフォースを強くすることによって得られるタイムのほうが大きいからね。今回のサーキットの場合、空力効率のよさはそれほど必要とされていない」
●そのような特別なセットアップのためにファクトリーのリソースをどのくらい傾注しているのですか?
「どんなときでもリソースは最大限に利用しようと努めるものだが、単一のレースに大きな比率を割くのは愚かだ。したがって特定のダウンフォースパッケージに対しどのくらいのレースがあるのか、その比率に応じてリソースを配分している。どういったダウンフォース対ドラッグの比率でレースに臨むのかはかなり前からわかっているので、あとはその比率に適したレースの数に従ってリソースを振り分けるわけだ」
●コースの最終区間が速くなりましたが、これは冷却システムに対し何か影響しますか?
「ハンガリーはブレーキとエンジンに関して冷却の問題が生じるサーキットのひとつだ。ただしその理由はブレーキに大きな負荷がかかるからでも、アクセルを全開にする区間が長いからでもない。問題は平均速度が低いことで、それによって冷却効率も低くなる。たしかにサーキットの一部の走行速度を速くできれば、その問題を幾分改善することはできる。だが平均速度という点から見ると、それはそれほど大きな改善ではない。相変わらず平均速度は低く、そのため、当然、冷却の問題が予想されるわけだ。気温が高くなるため、特に問題となるのがエンジンだ。気温があまりにも高いためブレーキの冷却に関しては問題ないが、エンジンの冷却に関してはブダペストでの気温と平均速度を考えると、やはり対策が必要になる。そのためエンジンの冷却システムに関してはシーズン中で最も大きな対策を施すことになる」
●昨年は予想外に気温が低かったわけですが、あれについてはいかがでしたか?
「昨年は本当に興味深く、かつ難しい状況だった。もし完全なドライコンディションになっていたら、トヨタにとってとてもいい週末になっていただろう。他チームとは別のタイヤを選択していたからね。ブダペストはたいてい暑くなるが、路面のアスファルトの特性のためソフトタイヤを履いたほうがアドバンテージが大きくなる。路面のきめが細かく、グリップが低いからね。だが昨年はスーパーソフトタイヤのコンパウンドにグレイニングが生じていたため、われわれは他チームよりもう一段階硬めのタイヤを選択していた。その後天候がかなり涼しくなったが、そうなると路面の最低温度が高くなることを前提にしているスーパーソフトタイヤは完全に的外れな選択となった。われわれのタイヤ選択はかなり有望だったが、レースは雨になってしまい、そのアドバンテージを生かすことができなかった」
●ハンガロリンクというサーキットをどう思いますか?
「サーキットというのはいわばレギュレーションと同じようなもので、とにかく全員が同じ条件に立ち向かい、そしてできるかぎり最高の準備をしてこなければならない。ただし、わくわくさせられるかどうかという感情の要素を考えてみると、おそらくブダペストはスパには及ばないと思う。とはいえ、過去に何度かいいレースの舞台となっている。2003年には追い越しが困難なことで知られるこのサーキットで、1周目にスピンして最後尾から再スタートしたラルフが4位でフィニッシュしているしね!」