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Rd.3 Grand Prix of Bahrain
grand prix
新居章年リポート
2008年4月7日(月)

いつもご声援ありがとうございます。4月に入り、F1グランプリは中東、バーレーンにやってきました。それでは、バーレーンGPの報告をいたしましょう。

風が強い上に、周りを砂で囲まれているサクヒールサーキット。2月にテストを行った甲斐あって、荒れたコンディションのこのコースでも安定した走行ができた。

●秒速15mの突風が吹くコンディションでTF108の真価を問いたい
今回バーレーンに来て、まず驚いたことは風が強いことです。予報でも金曜日は多少強いという程度ですが、土曜日と日曜日は秒速7~8mと風はきつく、時折15mほどの突風が吹くとも予報されていました。もともとバーレーンは風が強いサーキットで、昨年はこの風にかなり悩まされました。ただし、そのおかげで今年のクルマは風の影響を受けにくくするように開発してきましたから、その成果がこの強風の下でどのような結果をもたらすのか、楽しみにしているというのが正直な気持ちです。さらにわれわれは2月にここでテストをしている数少ないチームですので、そのアドバンテージを活かしたいところ。マレーシアGPでヤルノ(トゥルーリ)が4位に入り、チームの士気も高まってきていますから、この勢いでバーレーンGPでも良い成績を残したいと思っています。

●ソフトを履いた金曜のロングラン走行ではヤルノが素晴らしい安定感を披露
2月にこのバーレーンでテストしているということもあって、滑り出しはスムーズでした。特に大きなトラブルに見舞われることもなく、順調にプログラムを消化することができました。昨年のバーレーンGPでは4種類あるブリヂストンタイヤのコンパウンドのうち、ハードとミディアムの2種類を使用しましたが、今年のバーレーンGPはミディアムとソフトという異なる組み合わせとなったため、今日は主にソフトコンパウンドの評価を行いました。ロングランでは非常にいい結果が得られ、特にヤルノの安定感はレースに向けて、大きな自信につながるものでした。


ここバーレーンでは、従来と同じノーズまわりの仕様で参戦。次戦では新パッケージとなるフロントウイングとノーズが投入される予定。

また次戦スペインGPに向けて開発してきた新しいノーズとフロントウイングのパッケージが予定よりも早く完成したので、このバーレーンに持ち込みました。そして、今日のフリー走行1回目に2台のクルマに装着して試してみたのですが、このサーキットではあまり効果が得られず、使いこなせないと判断して、従来のフロントウイングとノーズのパッケージに戻しました。
土曜日に向けての課題は安定感抜群のロングランに対して、一発の速さに関してやや不満の残る結果となったことです。まだ練習走行が残されているので、土曜日のフリー走行3回目では予選に向けた準備をしっかりと行って、3戦連続で2台揃って、最終ピリオドに進むという考えでした。

ヤルノは連続して予選トップ10入り、ティモは第2ピリオドでのタイヤの感触になじめず、惜しくも第3ピリオド進出ならず、13番手だった。

●ヤルノが予選トップ10に入るも、ティモが自己ベストを更新できず残念
前日のセッティングから、さらに改善を目指して、土曜日午前中のフリー走行3回目ではさまざまなセットアップをトライしましたが、いずれもあまり効果的ではないと判断して、最終的には前日のフリー走行で非常にいいロングランを行うことができたセッティングに戻して、2台とも予選に臨むことにしました。
午後に入って、やや風は収まり、予想していたよりは風の影響を受けずに済みましたが、それでも常時秒速2m以上の風が吹き、ほかのグランプリに比べれば難しいコンディションだったと思います。そんな中、予選の第1ピリオドでは2台揃って、3戦連続で突破することができましたが、第2ピリオドでティモ(グロック)が2回目のアタックで自己ベストを更新できずに終わってしまい、まだまだクルマを改良しなければならないことを痛感しました。
また第2ピリオドが終了してから、ヤルノの給油リグの電源が落ちるというアクシデントが発生して、一時ピットが騒然となりましたが、スタッフの迅速な対応で予定していた燃料を搭載することができ、事なきを得ました。その頑張りにヤルノもしっかりと応えて、7番手を獲得。できれば、BMWザウバーの1台を上回りたかったのですが、その楽しみは日曜日にとっておく、という気持ちでした。ヤルノにはポイントはもちろん、表彰台に近いポジションで戦ってくれることを期待しています。
もちろんティモにもポイント獲得の可能性はありますが、今回はまず完走することを望んでいます。ふたりのドライバーが完走すれば、2台揃ってポイントを獲得するという結果は、自ずと付いてくると思っています。

●ティモが初完走して、今季初の2台完走を果たす
100点満点とまではいきませんでしたが、非常にいいレースができたと思います。まず6位でフィニッシュして、2戦連続でポイントを獲得したヤルノについては言うことはありません。レース序盤にライバル勢の猛攻に遭ったのは、コース上に他車が撒き散らしたオイルがあったため、慎重に走行していたからです。その後はヤルノらしい安定したキレのある走りで、トップ3チームに次ぐポジションをしっかりと守ってくれました。


レースでは、ヤルノが序盤ウイリアムズのニコ・ロズベルグの追撃を振り切り、その後は安定した走りで6位。ティモもルノーのフェルナンド・アロンソとの攻防を制しての9位と今後に期待を持てる成績を残した。

チームメートのティモも、今日は素晴らしい走りを披露してくれました。スタート直後の混乱をうまくかわしてポジションを上げたティモは、1回目のピットストップでチームスタッフの見事なピットワークによってポジションをさらにひとつ上げて、9番手に浮上することに成功しました。ところが、ここでティモのギアボックスに制御系のトラブルが発生したため、走行中にバックアップモードに切り替えなければならなくなりました。このトラブルがなければ、ポイントを獲得していた可能性が高かっただけに残念ですが、そういう状況の中でレースペースも悪くなく、収穫の多いレースでした。そして、何より今シーズン完走していなかったティモにとっては、この初完走は大きな自信となったはずです。
スペインGP直前に行われるバルセロナ合同テストでは、アップデートした空力パーツを投入する予定。今回、トップにつけられた約40秒の差を、少しでも縮めてヨーロッパラウンドに突入したいと思っていますので、今後もパナソニック・トヨタ・レーシングへ、ご声援をよろしくお願いします。


サクヒールでの新居章年。ヤルノが2戦連続ポイントを獲得し、また今季初めて2台揃って完走を果たすなど、収穫の多いレースだった。更に上位を狙うべく、次週のバルセロナテストに臨む。