トヨタ技術会、通称「ト技会」86チームが、イチからラリーカーを作ってみました

トヨタ技術会、通称「ト技会」86チームが、イチからラリーカーを作ってみました

ト技会では、昨年度から車好きの裾野を広げるべく、素人によるラリー参戦を実施しています。
そこで!今年度(2016年度)では、FRスポーツカーである86での参戦を計画!
86チームが実際にレースカーを改造し、レースに参加するまでの奮闘や喜びをお伝えします!

ト技会では、昨年度から車好きの裾野を広げるべく、素人によるラリー参戦を実施しています。
そこで!今年度(2016年度)では、FRスポーツカーである86での参戦を計画!
86チームが実際にレースカーを改造し、レースに参加するまでの奮闘や喜びをお伝えします!

01初戦に向けた車両準備

まずは初戦のレース選び。

「ト技会」86チームは、車両の納期、改造のリードタイムを考慮し、「5月末の徳島ラウンド」を初戦に選定しました。徳島は過酷なダートコースと聞いていた為、レギュレーション対応(必要最低限)+アンダーガード(車両保護)と改造内容を決定しました!今回、ベース車両となった 86 Racing という車両は、レギュレーション部品である「ロールケージ」が、TRDにより装着済のため、改造期間と費用を削減することに貢献!これにより、納車が4月末だったにもかかわらず、徳島参戦(5月末)が可能になりました!

Before
After

そして、いよいよドキドキの車体改造!

初めての人も説明書を見ながら、一生懸命に作業を進めました。

主なアンダーガード取付箇所

  • ① ガード部分:エンジン下、左右フロア下(燃焼パイプなど)、燃焼タンク、ディファレンシャル
  • ② 取付:純正使用のボルト供締めと、穴あけが必要な部位あり

アンダーガードの取り付けは、車体に穴を空けるんです!小さい穴をあけて、それを大きくしていく穴あけ作業は、車両フロアを貫通するので緊張の作業です...。実際に初めて作業を行った人は・・・

「車ってドリルで結構簡単に穴が開くんですね」「イメージはもっと硬いよね」「1度穴を開けたら後戻りできない緊張感!」と、大胆な作業に驚きや緊張感を持ちつつ、楽しく作業を進めていきました。

Before and After

4点式シートベルト取り付け完了

次は、ドライバーの走り(運転)を支えるシート関連の作業に入りますが、初戦までの改造期間もあり、純正シート+4点式シートベルトで挑みます!シートベルト(肩2本)はヘッドレスト取付金具の間に通して位置を決めました。

ただし、純正シートでは座面が高いので、ヘルメットをかぶると天井までのスペースがほとんどなく長身の人は天井に頭が当たってしまう可能性ありました。

リヤのベルトが固定されている様子

ヘッドレストの間からベルトを通します

02純正シートのままで初戦出場

リヤ室内のインナーをめくった様子

実際グラベル走行(徳島ラウンド)で大きく車両が上下にはねたときに、ドライバー、コ・ドライバーともに頭を天井にぶつけ、2人とも「うっ」となったシーンも...。(ドライバーはステアリング操作をミスしかけ、コ・ドライバーはロストしかけたが、なんとか復帰)このことから事故時だけでなく、ヘルメットの大切さを改めて痛感し、シートに一工夫しました。助手席では、座席を後ろに下げ、シートを寝かすことで対応を可能にしました。また競技中は、ヘッドレストの前後を逆に取り付けることで空間を作り、頭の位置を比較的楽にすることが出来ました。今後もさらに純正シートでの課題を洗い出し、その後、バケットタイプへ変更を検討中です。

02純正シートのままで初戦出場

次は、ドライバーの走り(運転)を支えるシート関連の作業に入りますが、初戦までの改造期間もあり、純正シート+4点式シートベルトで挑みます!シートベルト(肩2本)はヘッドレスト取付金具の間に通して位置を決めました。

ただし、純正シートでは座面が高いので、ヘルメットをかぶると天井までのスペースがほとんどなく長身の人は天井に頭が当たってしまう可能性ありました。

4点式シートベルト取り付け完了

リヤのベルトが固定されている様子

ヘッドレストの間からベルトを通します

実際グラベル走行(徳島ラウンド)で大きく車両が上下にはねたときに、ドライバー、コ・ドライバーともに頭を天井にぶつけ、2人とも「うっ」となったシーンも...。
(ドライバーはステアリング操作をミスしかけ、コ・ドライバーはロストしかけたが、なんとか復帰)
このことから事故時だけでなく、ヘルメットの大切さを改めて痛感し、シートに一工夫しました。助手席では、座席を後ろに下げ、シートを寝かすことで対応を可能にしました。

リヤ室内のインナーをめくった様子

また競技中は、ヘッドレストの前後を逆に取り付けることで空間を作り、頭の位置を比較的楽にすることが出来ました。今後もさらに純正シートでの課題を洗い出し、その後、バケットタイプへ変更を検討中です。

03ブレーキキャリパーとホイールが干渉!?

86に使用されるブレーキには、①小径タイプ:RC、Gグレードと、②大径タイプ:GTグレード以上の2種類が存在します。

86 Racingには、②の大径タイプが装着されており、「ホイール内径」と「フロントのブレーキキャリパー」がわずかに干渉していました。この問題を解決する為に、2つの方法が出てきましたが、それぞれデメリットがありました。

ブレーキオイル注入

小径タイプのブレーキに交換

  • ①ホイール内径が最も大きいものへ変更した場合 → 干渉はないが、クリアランス極小(1mm程度)、ホイール価格が高い
  • ②フロントブレーキを小径タイプへ変更 → 部品納期が間に合わない

※タイヤサイズのレギュレーション:195/65R15 or 205/65R15のため、ホイールのインチアップが不可(純正16 or 17インチ)

という状態で、さすがに困り果て、全日本ラリーに86で参戦されている方に相談したところ、社外品ブレーキへの交換後に余っている小径タイプ(RCグレード用)を頂くことができました。本当に感謝です!
そして交換後、小径化によるブレーキフィーリング・効きの悪化は特に感じられず、
素人レベルでは、初期のタッチは小径タイプの方が良いいくらいでした!

小径タイプのブレーキに交換

04参戦に向けて、FRの特性を体感
04参戦に向けて、FRの特性を体感

本番へ向けて、FF車両(ヴィッツ)とFR車両(86)を使って、メカニック含めチーム全員で乗り比べを実施!
まず、円旋回による基本特性を把握するために、サーキット場の広場を貸切りました。
練習日は、ちょうど朝に雨が降り、濡れた路面。
低速でもアンダーステア、オーバーステアが出やすかったため、練習に最適な日となりました。

定速での円旋回状態を作り、クルマの挙動を体感!!

  • ① ゆっくりアクセルを開けていった場合  → アンダーステア(ヴィッツ、86ともに)
  • ② 急にアクセルを開けた場合 → アンダーステア(ヴィッツ)、オーバステア(86)
  • ③ アンダーステア、オーバステアを出して、それを抑える(速度を落とす、カウンターを当てる)

FR車の場合、技量があれば、ステアリングとアクセル操作でオーバステアのまま旋回できるため、みんな何回も挑戦していました!
86が楽しくて、途中からヴィッツに乗る人が少なくなるという場面も...

【FR特性を体感した感想】

  • ・アンダーステア、オーバステアの言葉は知っていたが、実際に体感したのは初めてで、FFとFRによって挙動が全然違うことに驚いた。
  • ・アンダーステア、オーバステアの出し方と抑え方を教わり、うまくできた時は大興奮。特にFR車でオーバステア出してからカウンターで狙った方向に加速できた時は嬉しかった。
  • ・FR車は思い通り操るのは難しいが、それが楽しいしうまくいった時の喜びが大きい。
  • ・定常円走行は結局うまくできなかったが、今年中に絶対習得したい!

この体験からFR車両を運転することの難しさ、楽しさを体感することができました!

本番へ向けて、FF車両(ヴィッツ)とFR車両(86)を使って、メカニック含めチーム全員で乗り比べを実施!
まず、円旋回による基本特性を把握するために、サーキット場の広場を貸切りました。
練習日は、ちょうど朝に雨が降り、濡れた路面。
低速でもアンダーステア、オーバーステアが出やすかったため、練習に最適な日となりました。

定速での円旋回状態を作り、クルマの挙動を体感!!

  • ① ゆっくりアクセルを開けていった場合  → アンダーステア(ヴィッツ、86ともに)
  • ② 急にアクセルを開けた場合 → アンダーステア(ヴィッツ)、オーバステア(86)
  • ③ アンダーステア、オーバステアを出して、それを抑える(速度を落とす、カウンターを当てる)

FR車の場合、技量があれば、ステアリングとアクセル操作でオーバステアのまま旋回できるため、みんな何回も挑戦していました!
86が楽しくて、途中からヴィッツに乗る人が少なくなるという場面も...

【FR特性を体感した感想】

  • アンダーステア、オーバステアの言葉は知っていたが、実際に体感したのは初めてで、FFとFRによって挙動が全然違うことに驚いた。
  • アンダーステア、オーバステアの出し方と抑え方を教わり、うまくできた時は大興奮。特にFR車でオーバステア出してからカウンターで狙った方向に加速できた時は嬉しかった。
  • FR車は思い通り操るのは難しいが、それが楽しいしうまくいった時の喜びが大きい。
  • 定常円走行は結局うまくできなかったが、今年中に絶対習得したい!

この体験からFR車両を運転することの難しさ、楽しさを体感することができました!

05ついに86で参戦しました!

いよいよ参戦当日!
ドライバーは前々日くらいから緊張で眠れない日々が続きました...。 
「まず、徳島の剣山まで行けるのか」「ミスしてぶつけてしまわないか」など、凄まじいプレッシャーの中で迎えた本番!

徳島のSS(グラベル)では、ソフトボール大の石がごろごろしており、それが轍中央に敷き詰めらた状態で、レッキ(試走)時の速度(10km/hくらい)でさえ、ト技会86は下回りを強打しながら走行しました。
ドライバーは「アンダーガードしていて良かった」「レッキの速度以上で走れる気がしない」とコ・ドライバーに弱音を吐き、「大丈夫!」と励まされる場面も。
コースがコーションが多く、片側が谷、間違えると危険かも・・・という印象を持ったところでレッキは終了しました!
レッキ後、ドライバー、コ・ドライバーがサービスへ戻るとチームメンバーが出迎えてくれました!
チームメンバーの顔をみて安堵し、みんながいる喜びを感じました。
おかげで、セレモニアルスタート以降は落ち着きながら、SSを一つ一つクリアしていくことに集中し途中、スリップしかけたりもしたがなんとか完走できました。

感想
ドライバー:雨+過酷な路面でしたが、緊張感が心地よく本当に楽しかったです。楽しかったと思えるのは、クルマを壊さずに無事に完走できたからだと思います。参戦する前にラリー上級者から、「ラリーは完走が重要」と言われたことが、腹に落ちて実感しました。

コ・ドライバー:ロストしないようにペースノートを読み上げるのは、自分が車を操るような感覚。過酷な一つ一つのSSをクリアするたびに達成感を感じられ、とても楽しかったです。

初めての出来事にドキドキの連続でしたが、ラリー参戦を通じて得られた楽しさや充実感に皆さん満足されている様子でした!今後もこの活動をより多くの方に広め、皆さんに喜びや楽しさを知って頂ければと思います!

05ついに86で参戦しました!

いよいよ参戦当日!
ドライバーは前々日くらいから緊張で眠れない日々が続きました...。 
「まず、徳島の剣山まで行けるのか」「ミスしてぶつけてしまわないか」など、凄まじいプレッシャーの中で迎えた本番!

徳島のSS(グラベル)では、ソフトボール大の石がごろごろしており、それが轍中央に敷き詰めらた状態で、レッキ(試走)時の速度(10km/hくらい)でさえ、ト技会86は下回りを強打しながら走行しました。
ドライバーは「アンダーガードしていて良かった」「レッキの速度以上で走れる気がしない」とコ・ドライバーに弱音を吐き、「大丈夫!」と励まされる場面も。
コースがコーションが多く、片側が谷、間違えると危険かも・・・という印象を持ったところでレッキは終了しました!
レッキ後、ドライバー、コ・ドライバーがサービスへ戻るとチームメンバーが出迎えてくれました!
チームメンバーの顔をみて安堵し、みんながいる喜びを感じました。
おかげで、セレモニアルスタート以降は落ち着きながら、SSを一つ一つクリアしていくことに集中し途中、スリップしかけたりもしたがなんとか完走できました。

感想
ドライバー:雨+過酷な路面でしたが、緊張感が心地よく本当に楽しかったです。楽しかったと思えるのは、クルマを壊さずに無事に完走できたからだと思います。参戦する前にラリー上級者から、「ラリーは完走が重要」と言われたことが、腹に落ちて実感しました。

コ・ドライバー:ロストしないようにペースノートを読み上げるのは、自分が車を操るような感覚。過酷な一つ一つのSSをクリアするたびに達成感を感じられ、とても楽しかったです。

初めての出来事にドキドキの連続でしたが、ラリー参戦を通じて得られた楽しさや充実感に皆さん満足されている様子でした!今後もこの活動をより多くの方に広め、皆さんに喜びや楽しさを知って頂ければと思います!

番外編

ラリーに参加する私たちの姿を「見て・知ってもらう」ことで、クルマの魅力を身近に感じてもらい、もっとクルマ好きになって欲しいと言う想いで始めたこの企画。

昨年、2015年はアクアとヴィッツの2台同時に改造を行いました!
シートを取り外してのロールケージの組み付け、安全装備、ガードやマッドフラップなどの取り付けを行いました。

走行中に石や砂利などの衝撃から車体を守るアンダーガードの取り付けの際、ガード同士で干渉したり、ロールケージの足を止めるプレートと干渉したり、板厚が厚いにもかかわらず、干渉箇所を切断する必要があったので、とても苦労しました!

さらに、運動性能向上のためにサスペンションを交換して”固める”側へ設定を変更しました。

ト技会とは?

クルマの魅力、楽しさを再発見、再認識する活動に取り組むトヨタ技術会のこと。
トヨタの社員が任意で加入する団体がトヨタ技術会、通称「ト技会」。歴史は古く創設されたのが1947年、現在約2万9千人もの会員を擁するトヨタ社内で最も歴史ある団体でもある。
会員の技術・技能の向上及び親睦を図り、様々な事業の技術分野の発展に寄与すること、地域社会に貢献することを目的に活動を行っている。
さらに2010年からオリジナルの車両製作を始め、ガルウイングEV、ハイブリッドのイメージを変えるスポーツカーなど数多くのコンセプトモデルを発表。開発に当たって様々な部門から技術者が集まり、自分の領域を超えて提案することで、さらにいいクルマ作りを実現してきた。クルマの魅力、楽しさを再発見、再認識できる活動を行っている。