ニュルブルクリンクへの挑戦 2009
VLN1レポート

2014.03.18 ニュルブルクリンクへの挑戦2009

レースを通じた"クルマの味づくり"をテーマに2007年に始まったGAZOO Racingのニュルブルクリンクへの挑戦は今年で3年目。その初戦、24時間レースへ向けての事前テストの一環として参戦した4時間耐久レースはクラス優勝、着実にステップを踏んでいくプロジェクトの戦いを追う。

だからこそ走る意味がある

ヨーロッパを代表する伝統的なサーキット、ニュルブルクリンクを舞台にしたVLNシリーズの開幕戦は、4月4日、気温20℃前後の晴天の下で開催。ミニ、ゴルフからポルシェ、ダッヂバイパーに至るまで163台の多種多様なマシン、10~60代までのアマチュアから現役のプロまでが意気揚々とサーキットに集まった。

2007年にアルテッツァ、昨年はIS250でニュルブルクリンクに挑んだGAZOO Racingが擁するマシンはプレミアム2シータースポーツLF-A。世界のモーターファンが注目する未発売の開発車両を、耐久レースを通じて鍛え上げることが第一の目的である。

1927年に開設されたニュルブルクリンクは、全長約25km、山間部に位置するために激しいアップダウンが連続、170を超えるコーナーの大半が先の見通せないブラインド、コース幅は狭く、路面には無数の凹凸が存在する。「難攻不落」「アクセルを全開にするには大きな勇気がいる」「20年走っても恐怖を感じる」・・・、経験豊富なドライバー達は一方でこう語る、「だからこそ走る意味がある」。世界中の自動車メーカーが走行性能の仕上げ、すなわち“味づくり”の場に選ぶ理由がそこにある。

数多の視線と波乱の予選

GAZOO Racingは、5月に行われるニュルブルクリンク24時間レースへ向けた実戦テストの意味合いで今回の4時間耐久レースへ参加した。予選前日、ライバルチームやメディアの視線を集めながらLF-Aがコースイン、甲高いエキゾーストノートを響かせながら快調に周回を重ね、ノートラブルで最後の練習走行を終えた。ルールに合致したマシンであることを主催者が確認する車検では、これまで以上に細かいチェックを受けたが、これも注目の証し。

予選では、先ず、プロレーサーの飯田章選手が160台以上のマシンがひしめき合うコースへ向かった。ペースが上がってきた2周目、まさかのアクシデントが発生。「前を行くマシンが急にペースを落とし、避け切れずに接触してしまった」と緊急ピットイン、フロントバンパーが真っ二つに裂けている。テープで応急処置を施し、3年目の挑戦となるモリゾウ選手がステアリングを握った。「マシン本体へのダメージは?」と心配そうにモニターを見つめるチームスタッフの顔に安堵の表情、順調に走行しピットへ戻ってきた。「クルマの仕上がりがいいので、クルマと対話することができました」、軽く汗をぬぐいながら落ち着いた口調でコメント。代わってハビエル・キロス選手がコースイン、コスタリカでトヨタ販売代理店を経営しながら趣味のレース活動も行っている走るビジネスマンも、初めてのニュルブルクリンクに快音を響かせ、「速い、ブレーキング性能も安定性もいい、最高のクルマだよ」と興奮気味に語った。

予選終了まで5分、他車との接触のためにタイムアタックができなかった飯田選手がピットアウト、ワンチャンスにかける。タイムは・・・8分41秒914! 総合15位、クラストップタイムをマークした。

価値あるクラス優勝

4月4日正午、4時間耐久レースがスタート。GAZOO RacingのLF-Aは飯田選手のドライブで1周目に11番手までポジションアップ、ポルシェを始めとする上位の常連マシンとバトルを展開しながら6周目にピットインしドライバーチェンジ。モリゾウ選手も安定したペースで予定通り6周を走行、交代したキロス選手が8ラップを担当、40位前後でピットインした。残り約40分、飯田選手が最後のピットアウト、この時点でクラス優勝の可能性が濃厚となり、ピットにやや緊張感が漂う。

SP8(4000~6200cc未満)クラスのライバルは、アストン・マーチン、コルベット、ランボルギーニ・ガイヤルド、アウディR8、しかもニュルブルクリンクをよく知る競合チームである。飯田選手は終盤に自身の予選タイムを上回るペースで周回を重ね、総合36位、クラストップでゴール。24時間レースへ向けての耐久性チェックやデータ取得を主な目的としながら、そのスピードをも証明して見せた。レース中のベストタイムは総合6位のマシンを3秒近く上回るものであった。

尚、GAZOO Racingからは、プレイングマネージャー的な位置付けで、チームを率いるトヨタのマスターテストドライバー成瀬弘が、テストドライバーの高木実、勝又義信と共にIS Fで出場、総合108位、SP8クラス2位でチェッカーを受けた。

GAZOO Racingの挑戦も今季で3年目。出場マシンのパワー、スピードが年々アップしているのはもちろんのこと、それ以上に、チームワーク、そしてモリゾウ選手を始めとするドライバー達の落ち着いた雰囲気が、プロジェクトの成長を感じさせる。「クルマを強くし、人を強くする。そこから新しいクルマづくりが始まる」。

当初からの一貫した哲学が実を結ぶ日は近いだろう。

4時間耐久レースVLN1ムービー