TES-CROSS 開発ストーリー

2015.01.09 東京オートサロン2015

クルマの魅力、楽しさを再発見、再認識する活動に取り組むトヨタ技術会

ヨタの社員が任意で加入する団体がトヨタ技術会、通称「ト技会」。一般的にはクラブ活動のようなもので、歴史は古く創設されたのが1947年、現在約2万9千人もの会員を擁するトヨタ社内で最も歴史ある団体でもある。会員の技術・技能の向上及び親睦を図り、様々な事業の技術分野の発展に寄与すること、地域社会に貢献することを目的に活動を行っている。さらに2010年からオリジナルの車両製作を始め、ガルウイングEV、ハイブリッドのイメージを変えるスポーツカーなど数多くのコンセプトモデルを発表。開発に当たって様々な部門から技術者が集まり、自分の領域を超えて提案することで、さらにいいクルマ作りを実現してきた。クルマの魅力、楽しさを再発見、再認識できる活動を行っている。

Vitzをベースに曲がる楽しさ。走る楽しさを追求したオープントップSUV

Vitzをベースに曲がる楽しさ。走る楽しさを追求したオープントップSUV
ヨタ技術会のメンバーが開発したのがVitzをベースにした4人乗りオープントップSUV。それは自分たちがほしいと思う車を考えて、それを実現したクルマだ。そしてそこに市販になっていない技術を織り込み、トライ&チャレンジを繰り返して完成したのが、4人が乗って楽しく走ることができ、曲がる気持ちよさを実感できるクルマ、TES-CROSS(テスクロ)だ。

メンバーは様々な部署から結集。専門外のところも踏み込んでアイデアを出しながら開発

メンバーは様々な部署から結集。専門外のところも踏み込んでアイデアを出しながら開発
TES-CROSSはFRP製のドアを手作りするなど軽量化に取り組み、ドア内臓のロッドを伸縮させ、ピラーに圧接することでドアそのものを剛性部材として活用する、電動ドアスタビライザーを新開発するなど剛性を向上させている。まさにその道のマイスターたちが作り上げたかと思うのだが、開発メンバーは全員が専門家ではないと言う「色々な部門から人来ていますが全員が専門ではないところも踏み込んでやっています。専門外のところを勉強しながらクルマを作っています。自分たちが日頃やれないことをやろうと言う感じです。」と語ったのは制作部 評価技術室主任の石川政行さんだ。そのドアスタビライザーは「ドアを閉めてから棒が出てきてピラーの下に伸びてくる。これで剛性アップしています」そう語ってくれたのが車両品質生技部主任の今泉直也さん。しかしそれを設計したのはパートナーロボット部 主任の西田武史さんと言う。西田さんは「私は少し素人の部分もありますが、自動車外のところからアイデアを持ってきました。このスタビライザーは走行安定性のためのアイデアです。自分の領域を広げる部分もありますし、本当に勉強させてもらっています。まずやりたいことからやっていますけどね」と笑った。

足回りをかなりいじっています。家族で乗って楽しい、後部座席も楽しいクルマです

TES CROSS
技会ではこれまでもいろいろなクルマを開発してきたが、今回はどんなコンセプトで作られたのだろうか。説明してくれたのはユニットセンター エンジン設計部主任の古城(ふるしろ)太郎さん。「TES-CROSSの開発は曲がるところからスタートしました。回頭性がいいこと、つまり曲がる楽しさ、操る喜びを追求しました。クルマの魅力の再発見をしてもらいたいと思って作りました」。目指したところはスタイルSUVがすっと曲がる意外性だ。ではそのためにどこに力を入れたのか、「TES-CROSSは足回りをかなりいじっています。トレッドを200㎜広くしてリアの足回りもダブルウィツュボーンにして強化しました。開発ドライバーに乗ってもらってテストコースでも走らせました。一番は走り、その中で曲がることを追求しました。普段走っている道で楽しめるクルマです。4人乗りなので家族で乗って楽しい。後部座席も楽しいクルマです。」と説明してくれたのは制作部、石川さんだ。

軽くしながら加給する。曲がるコンセプトのためのスーパーチャージャー化

TES CROSS
TES-CROSSは軽量化のためにエンジンはダウンサイジングされているが、スーパーチャージャーによって出力低下をカバー。オーバーフェンダーやTの字をデザインしたフロントグリルも目を引く。車両品質生技部、今泉さんは「スーパーチャージャー化は高出力狙いではなく、曲がるコンセプトのためですね。ダウンサイジングで軽くしながら加給する。エンジン搭載位置もずらしています。このエンジンでスーパーチャージャーを組み合わせたのは初めての試みです。」と、新しいチャレンジが入っていることを強調する。他にもこだわりの部分がある。今泉さんが続けて説明してくれた。「リアのデザインは下部のデュフューザーをそのまま伸ばした形で、それでどんな感じになるかデザイン的なチャレンジですね。その中にTの文字をあしらっています。シートも軽量化していますが、内装はあえてVitzの形を残しました。外観をこれだけ変えているので(笑)。外観はまず色で目を引きますね。色が変わるので子供でも大人でも見てくれます。これからもチャレンジして行こうと思います。クルマの魅力を再発見してもらい、クルマファンを増やす取り組みをして行きたいですね」。専門外の人たちが考えたことを実現する。そこに新しい技術が生まれ、それが形になる。まさにト技会ならではの発想から生まれたのがTES-CROSS。次はどんなクルマが登場するのだろうか、期待せずにはいられない。
  • 開発メンバー
    制作部 評価技術室 主任 石川 政行
    車両品質生技部 静的品質計画室 主任 今泉 直也
    パートナーロボット部 製品設計室 要素設計グループ 主任 西田 武史
    ユニットセンター エンジン設計部 品質監査室 主任 古城 太郎