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2013 SUPER GT/GT500クラス・チャンピオンの軌跡
No.38 ZENT CERUMO SC430

勝てたはずなのに...。久々に悔しさを噛みしめました

 進化したクルマ、成長したパートナーを得て立川は順調にシーズンを始めた。開幕戦岡山国際サーキットの公式予選は、ウェット路面に翻弄されて12位に終わったが見事な追い上げを展開して決勝では4位入賞。第2戦の富士スピードウェイでは予選5番手から決勝2位。選手権ポイントは順調に積み上げられていった。ところが立川/平手組の流れは突然方向を変える。
 シリーズ第3戦セパンでは予選2位からスタートしながら、スタートドライバーの平手が走行中に他車と接触してスピン、それが原因でタイヤバーストを起こして優勝はおろか、1ポイントも獲得することができなかった。

「平手は、過去にも同じようなミスをしてきたので『もったいないことをした』と本人が一番後悔していました。それがわかったので、ボクも含めて周囲は何も責めませんでした。自分がわかっているのなら周りが何か言う必要はありません」

 ところがシリーズ第4戦SUGOでは今度は立川が思いがけない不運に見舞われる。予選5番手から平手がスタート、クルマを引き継いだ立川はトップに立って残り10周を走れば優勝という状況にありながら、「もらいアクシデント」でコースオフ、入賞すらできないポジションへ突き落とされてしまう。

「勝てるなと思っていました。でも前に周回遅れのクルマが出てきて、一瞬インを差そうと思ったんですけど、向こうもあそこではロスしたくなかったようでインを塞ぐような素振りを見せたので、じゃあぼくはアウトアウト、と行くことに決めたんです」

 勝てるレースで立川は無理をせず、きちんと引くべきところで引いて、優勝を確実なものにしようとしたのだ。ところが思いがけない事態が発生する。もう1台のクルマがさらにイン側へ飛び込み、周回遅れのクルマと接触したため、周回遅れのクルマが外側へ飛ばされ、立川のクルマに当たったのである。

「周回遅れのクルマもアウト側をボクに対して開けてくれたので、そこまではうまくいっていると思ったんですけど、いきなりドン、とぶつかったので、一瞬何が起きたのか意味がわからなかったです。状況がわかったのは後から無線で説明を受けてからのこと。それまでは『なんで?』とわけがわかりませんでした」

 自分ではどうしようもない、まさに降りかかったような不運だったが、優勝が目の前にあったレースを落としたことに立川はショックを受けた。

「(予想もできなかったことだったからといって)ぼくらは、プロとしてやっている以上しかたがないやと気持ちを切り替えることなどできません。勝てたレースだったのにゴールまで持って行けなかった。本当に久々に悔しさを噛みしめました。ピットに戻ったときはとにかくみんなに『ごめん』と言いました。LEXUS Racing陣営みんな、平手もスタッフもみんなががんばってくれて、その最後の部分をぼくが託されていたわけで、託された身として申し訳ないという気持ちになるのは当然です。でも、みんな状況はわかってくれていたので、チームの雰囲気はそんなに悪くはなくて『次のレースでがんばろうよ』という空気でした。でも悔しさという意味では自分の中では今シーズン、一番印象に残っているレースです」

 だが、LEXUS TEAM ZENT CERUMOの立川祐路/平手晃平組に降りかかった不運はこれで終わりではなかった。シリーズ第5戦、鈴鹿1000kmレースではピットストップの回数を減らすための燃費戦略が重要な意味を持つ。ところがその戦略を狂わすタイミングでコース上のアクシデントを処理するためセーフティーカーがコースインしてしまうのだ。

「鈴鹿は、『今度こそ』という思いで臨んだレースでした。ところがセーフティーカーが非常にまずいタイミングで入ってしまった。今のGT500では、ピット回数を減らすために非常にシビアな戦略で走っています。ぼくらは最初のスティントで、戦略的な面やタイヤの状況を見て、当初の予定より1、2周早くピットインしていて、次のスティントは燃料的に非常に厳しい状況でした。
 あのセーフティーカーが入った次の周に、正にピットに入る予定だったんです。だから、あれ以上走り続けることはできませんでした(コース上のストップもありうる)。でもピットに入ればペナルティを受けてしまう。それをすべて把握できた瞬間『ああ、今シーズン終わったな』と思いました」

 セーフティーカーが入ったタイミングでピットに入ればペナルティを受けることになる。だがピットに入って給油しなければ、燃料を使い果たしてコース上で止まってしまう。究極の決断を迫られて、チームはペナルティ覚悟のピットインを選ぶ。この時点で、立川/平手組はレースでの上位争いの権利を事実上失ってしまった。これで3戦連続の無得点。チャンピオンシップ争いを考えれば致命的な状況だった。

  • 第2戦富士では、2位表彰台を獲得。開幕から連続ポイント獲得で、順風かに思われたが・・・。

  • 第3戦セパンは予選2位からトップを狙うが、他車に接触されタイヤバースト。ノーポイントに。

  • 第4戦SUGOは、予選5位から平手がHSV-010GT勢を抜く激走を見せ、トップ争いに加わった

  • SUGOはレース中盤から雨模様。立川はピットにより先行した本山哲のGT-Rを抜き、トップに迫る。

  • 滑る路面をものともせず、トップのDENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一)に並び掛ける。

  • SUGOのレースもラスト10周。トップに立った立川だったが、この直後に悪夢のような事態に...。

  • SUGOは「久々に悔しさを噛みしめた」と言う立川。だが、チームにはまったく動揺がなかった。

  • 「ペナルティか、ガス欠か」究極の選択となった第5戦鈴鹿。まさかの3戦連続ノーポイントに。



  1. 2013 SUPER GT/GT500クラス・チャンピオンの軌跡(2013年12月5日公開)
    1. 1. 開幕前から手応えがあり、いけるぞと思っていました
    2. 2. 勝てたはずなのに...。久々に悔しさを噛みしめました
    3. 3. 3連続ノーポイント。でもチームの雰囲気は変わらなかった