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2013 SUPER GT/GT500クラス・チャンピオンの軌跡
No.38 ZENT CERUMO SC430

3連続ノーポイント。
でもチームの雰囲気は変わらなかった

「そのときのチームの空気......。がっかりというか、なぜあのタイミングでセーフティーカーが入るか、と。不運でしかないんだけど、『まあ、しようがないよな』と言える雰囲気ではありませんでした。開幕時にはクルマの調子も良かったし今年こそはチャンピオンと思っていたので、まさかこういう形でしかも夏場にチャンピオン争いが終わるとは思ってもいなかったんです」

 3戦連続のノーポイント。それぞれ理由は違うにせよ、どのレースでも上位争いに関わっていながら戦いから脱落した。高いレベルで戦えていただけに、結果が残せないことがより重い失望につながった。「調子の良さと、残る結果がここまでかけ離れたシーズンも珍しかった」と立川は思い返す。
 立川の心の中には、この時点で「今年はあきらめよう」と思う気持ちが生じていたという。「チャンピオンを獲るつもりだったシーズンが、半ばにしてこんな終わり方をするのか」と。だからといってプロフェッショナルは力を抜いてしまうわけにはいかない。立川は、「チャンピオンは無理でも、残りの3レースは全力でがんばろう」と気持ちを切り替えた。ある意味、リセットとも言えるこの切り替えが功を奏したかもしれない。

「なぜか気持ちが腐ることはなかったですね、ぼくもチームも。3レース連続でノーポイントだったら、暗い雰囲気になってもおかしくはないと思うんです。でもシーズン第6戦が行われる富士スピードウェイの現場へ行ってみたら、チームの雰囲気はいつもとまったく変わらず、明るい感じで仕事しているんです。クルマもいつも通り完璧に仕上がっていて、走り出しから速かった。そういう意味ではチームがそういうムードを作ってくれたのでボクも平手も助けられたんです。それがLEXUS TEAM ZENT CERUMOのいいところですよね」

開き直れたから、
最終戦もチームがリラックスしていた

 3戦連続無得点で迎えたシリーズ第6戦、富士スピードウェイで、立川/平手組はポール・トゥ・ウインを飾る。これが彼らの本来の姿、今シーズン残すべき成績だった。3連続無得点で、立川/平手組のLEXUS SC430のウェイトハンディはさほど大きくない。このレースだけを見れば有利な状況であったことは事実だ。だがそのレースを取りこぼさず、きっちりとポール・トゥ・ウインでまとめたことが、立川/平手組の立場を大きく変えることになる。

「鈴鹿のレースが終わった時点で、誰もぼくたちがチャンピオンを獲るとは思っていなかったでしょうし、こっちもプレッシャーはなくなった。それで富士でポールポジションをとって、優勝したら、いきなりポイントランキングで4番手くらい、トップまで数ポイント差まで追いついてしまったんですよ」

 実は立川/平手組が3戦連続無得点で苦しんでいる間、ライバルチームも苦戦して選手権ポイントが分散し、飛び抜けてポイントを積み重ねてチャンピオン争いに先行するチームがいなかったのだ。

「『あれ?』と、予想外の展開でした。『もうランキングでそんなところに来たの?』と。そういう面で、ぼくたちは恵まれていました」と立川は言う。だが、一旦敗北を覚悟し気持ちがリセットされた立川/平手組、そしてLEXUS TEAM ZENT CERUMOが気負うことはなかった。第7戦オートポリス戦でポールポジションからスタート、2位でフィニッシュしてポイントを一気に増やしてチャンピオン争いに返り咲くと、シリーズ第8戦ツインリンクもてぎで王座を賭けて戦うことになった。

「開き直れたから、最終戦についてもチャンピオンがかかっているレースだとは思えないくらいチームがリラックスしていました。1回リセットされたからでしょうか。そういう意味では去年の方が、開幕戦で勝ってずっとポイントでリードを続けて1年戦い続けていたのでずっとプレッシャーとか緊張感とかがチームにありました。それに比べると今年は気持ちが楽でした」

ノーミス、ノートラブルのチームに感謝しなければ

 立川/平手組は、最終戦を公式予選4位から決勝3位で終えた。その結果、一旦はあきらめていたシリーズチャンピオンの座が立川/平手のものになった。立川にとってはSUPER GTシリーズ3回目、平手にとっては初めてのタイトル獲得であった。

「タイトルが獲れたときの気分は、正直なところ『あれ?獲れちゃった』みたいな感じでした。でもチャンピオンを獲れるときは、こういうものなのかなと思ったりもしました」

 これで立川はSUPER GTのシリーズで通算3回目のGT500シリーズチャンピオンとなり、平手は自身初のタイトルを獲得することになった。ドライバーにとって、タイトルはとても重要なものだと立川は言う。タイトルを獲ってきたからこそ戦い続けられたのであって、もしタイトルが獲れていなければ自分は今、ここにはいない、と。

「そういう意味では平手は自分の人生を今シーズンで変えたんです。しかも、獲らせてもらったタイトルではなくて、平手はチャンピオンにふさわしいレースをしていました」

 立川はパートナーの平手の力を賞賛。そして、こう付け加えることを忘れなかった。

「とにかくチームの力が大きかった。なにしろ去年、今年とチーム的にはテストも含めて、ノーミス、ノートラブルなんです。これはすごいことです。そういう意味で、ぼくも平手も、チームに感謝しなければいけませんね」

  • 厳しい結果となった第5戦鈴鹿。しかし、それがリセットとなり、気持ちが切り替わったと言う。

  • 3戦連続ノーポイント。しかし、チームの雰囲気はいつもと変わらず明るかった。

  • 得意の富士に戻っての第6戦は、ノープレッシャーで厳しいレースをくぐり抜け、初優勝を果たす。

  • 連続ポール・トゥ・ウインはならず。だが、第7戦オートポリスは2位でランキング1位に浮上。

  • 追われる立場になった最終戦もてぎ。だが、チームは大きなプレッシャーはなく挑めたという。

  • もてぎも決して楽なレースにはならず。LEXUS SC430の2台に迫られながら、なんとか3位でゴール。

  • 厳しい1年を戦い抜きチャンピオン獲得。立川は最多タイの3回目、平手は嬉しい初タイトルだ。

  • 平手、高木監督に加え、子供たちも招き上げてチャンピオン杯を掲げた表彰式。皆笑顔が弾けた。

  • LEXUS SC430のラストレース、富士スプリントカップにてチーム、TRDスタッフと記念写真。


  1. 2013 SUPER GT/GT500クラス・チャンピオンの軌跡(2013年12月5日公開)
    1. 1. 開幕前から手応えがあり、いけるぞと思っていました
    2. 2. 勝てたはずなのに...。久々に悔しさを噛みしめました
    3. 3. 3連続ノーポイント。でもチームの雰囲気は変わらなかった