TS030 HYBRIDを徹底解剖!
レース用も市販技術の延長線上に
発熱して赤く光るフロントのブレーキディスクに対して、
エネルギーの回生が行われているリアは黒いまま。 エネルギーの回生を後輪で行うTS030 HYBRIDは、リアの制動に通常のエンジンブレーキとディスクによる摩擦ブレーキに、新たに回生ブレーキ(電気)が加わる。このため、摩擦ブレーキへの負荷が少なくなり、通常発熱して赤く光るカーボンディスクは黒いまま。摩擦ブレーキと回生ブレーキの比率はコンピューターで制御されるが、WECのレギュレーションではブレーキングゾーンで駆動アシストに使えるエネルギーを500kJまでに制限されていることもあり、この制御はエネルギー回生を後輪で行うレース用ハイブリッドシステム開発の鍵となる。
ハイブリッド車の技術で世界のトップを行くトヨタは、回生協調ブレーキ(摩擦と回生の制御)でのノウハウが豊富だ。これがTS030 HYBRIDに活かされ、ブレーキの応答性が高められている。そしてTS030 HYBRIDの速さにつながっているのだ。
ピットアウト時にはどの車両も爆音をとどろかせてコースに復帰するが、TS030 HYBRIDは一般のハイブリッド車と同様EVモードで発進するためモーターの音しか発しない。
ピットアウト時は、一般のハイブリッド車と同様に
EVモードで発進するためモーターの音しか発しない。 THS-Rには市販車の技術が数多く採り入れられている。いわば市販ハイブリッド車技術の延長線上にあるのがこのTHS-Rだといえる。
なお、WECのレギュレーションによって各サーキットではハイブリッド車両がブレーキング時に回生したエネルギーを使用することが可能な場所が特定される。これはスパ6時間から導入されたもので、スパでは5カ所、ル・マンでは7カ所が設定された。エネルギーが前輪で回生/放出される場合、その放出が行われるのは車両が120km/h以上で走行しているときでなければならないと規定されている。エネルギーが後輪で回生される場合(TS030 HYBRIDの場合)にはこの最低速度の制限はない。富士では4カ所のブレーキングゾーンが設定される予定。
<次ページへ続く>
- P1:ライバルが驚嘆したTHS-Rの加速性能
- P2:レース用も市販技術の延長線上に
- P3:TS030 HYBRID 図解
- P4:村田ハイブリッドプロジェクトリーダーによる動画解説