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サルト・サーキット徹底解剖

ル・マン24時間の変遷をたどる

名勝負の舞台、ル・マン24時間サーキットを巡る(2/4)

最高速アップに重要な「赤い丘」とは?

ダンロップ・ブリッジからテルトル・ルージュ・コーナーを望む
ダンロップ・ブリッジからテルトル・ルージュ・コーナーを望む
では、サーキットを1周してみよう。
①. スタートラインを過ぎると、まずピット前のストレートを駆け上る。ここはゆるい登り坂になっていて最初のコーナーが右の「ダンロップ・カーブ(Courbe Dunlop)」だ。ダンロップ・ブリッジが架かっていて、実際に歩道橋として使われている。観客はここを通ってコースを横断することができるが、橋の中からコースを見ることはできない。
常設のブガッティ・サーキットでも第1コーナーとなることから、グラベルが敷きつめられたランオフエリアは広くとってある。2012年からハイブリッド車のブレーキングゾーンが7ヶ所設定されているが、ここはそのゾーンNo.1だ。

ここを過ぎると下り勾配になり、「"S" de la Foret 」へと続く。日本語で言えば「フォレ(森)のS字」。その名の通りS字コーナーとなっている。ここまではブガッティ・サーキットのトラックで、ブガッティはS字の途中から右に大きくターンする。

②. 次に右の「テルトル・ルージュ・コーナー (Virage du Tertre Rouge)」へ。テルトル・ルージュ(Tertre rouge)とは赤い丘と言う意味。1950年代にここを整備した際に地面が赤かったことからこの名が付いた。大きな半径のこのコーナーは進入速度が高い上、長いストレートへと続くことから、ここでの立ち上がりがトップスピードに大きく影響する。そのため難しく、かつ重要なコーナーと言える。イン側に観戦エリアが設けられている。

③. その長いストレートは日本でもよく知られる「ユノディエール」。正しくは「Les Hunaudiers(レ・ユノディエール)」で、その名は中間地点にある村の名前から来ている。1990年にふたつのシケインが設けられるまでは約6kmもの直線で、トップカテゴリーのプロトタイプカーは400km/h近いスピードが出ていた。1988年にWMプジョーがレース中に記録した405km/hの最高速度は今も破られていない。ふたつのシケインはそれぞれハイブリッド車のブレーキングゾーンNo.2、No.3となる。

サルト・サーキット

アメリカのあるサーキットとの共通点

インディアナポリス・コーナーを走行するTS030 HYBRID
インディアナポリス・コーナーを走行するTS030 HYBRID
④. 長いユノディエールを走り切ると右の直角コーナー、「ミュルサンヌ・コーナー(Virage de Mulsannne)」が待っている。ミュルサンヌとはこのコーナーがちょうど入り口に位置している村の名前だ。2012年、トヨタTS030 HYBRID8号車がアンソニー・デビッドソンのドライブ中に周回遅れのGT車両とのアクシデントが発生したのがこのコーナー手前だった。ここはハイブリッド車のブレーキングゾーンNo.4だ。
アウト側には観客のための観戦エリアがある。また、かつてはここを過ぎたところにシグナル・ピットがあり、ドライバーへのピットサインはそこから出されていた。1周13キロを超えるサーキットの半分を少し過ぎたところにあって、グランドスタンド前のピットとは常に電話で連絡がとれるようになっていたが、1990年のピットビル、ピットロードの改修で廃止された。

⑤. 次に、ゆるい右コーナーふたつを含むほぼ直線を過ぎると「インディアナポリス・コーナー (Virage d'Indianapolis)」がある。ふたつ目の右コーナー直前にはLMP1車両なら300km/h以上のスピードが出ており、そこから急減速。左コーナーのインディアナポリスへとアプローチする。その名称は言うまでもなく、アメリカのインディ500マイルの舞台として有名なインディアナポリス・モーター・スピードウェイに由来する。かつてBricyard(ブリックヤード)と呼ばれたインディアナポリスと同様、舗装する前はレンガ敷きだったことに加え、路面がバンクしていることが、インディアナポリス・コーナーと呼ばれる理由だ。ハイブリッド車のブレーキングゾーンNo.5である。

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