ループを回せ!エンジニアの真髄はレース前にあり
前回までのあらすじ
アナザーKの追加指令で「東富士研究所」にやってきた桃之介。
彼はそこで「M部長」に再会した。
M部長から「ル・マンレクチャー」を受ける桃之介。
果たして、桃之介はエンジニアたちの仕事を学ぶことができるのか?
桃之介君、エンジニアはレース中は何やってると思う?
ええっと、パソコンの前に座ってクルマから送られてくるデータを分析する・・・とかですかね。
そうやね。クルマにはセンサーがいっぱい付いてとってね。300近くの生データが常に送られてくるんよ。
でも送られてくるのはただの「数字」。それを瞬時に分析して、改善点やトラブルの兆候を見つけようとしてんねん。
さ、300!?
2台走らせてるから、データの量としてはその倍っちゅうことやね。
600近くのデータが常に・・・それをずっと分析し続けるんですよね。スゴい集中力が必要なんだろうな・・・。
そうやねぇ。でもね、レース中の仕事なんて、エンジニアがやる仕事全体から見たら5%ほどなんよ。
え?これだけ仕事してるのに、たった5%なんですか???
エンジニアの仕事は、大きくわけて「開発」と「品質管理」があるねん。
まず「開発」やけど、図に書いて説明しましょか?
(なんだろう???)
エンジニアはこの図のことを「ループ」って呼ぶんやけど、このループに沿ってハイブリッドシステムの開発が行われてるんや。
企画、設計、試作、組付、試験、車組付、車両テスト、レース・・・それから調査・・・なるほど!
このループがテストから、シーズン中にかけてずっと回ってるんよ。車体や空力に関してもおんなじようにループが回って開発が行われてるんや。
知らなかった・・・開発って奥が深いですね。
次に「品質管理」。東富士から送り出したハイブリッドシステムとかのパーツはどこに送られるか知ってる?
はい!ドイツ・ケルンにあるTMGですよね。
正解。TMGでクルマに組付けられるんよ。
(やった!これは僕も知ってたぞ〜♪)
クルマを組み付ける前にやらなあかんことがあって、発送中に破損してないか・・・とか、ハイブリッドシステムが指示通りきちんと組まれているか・・・とか、エンジニアがひとつひとつ丁寧にチェックしないとね。
東富士でもチェックして送り出してるのに、またTMGでもチェック・・・念には念をですね。
サーキットに行ってもチェックは続くんやで。
え、サーキットでもですか!?
そうやで。ピットには「住所」があるんよ。
どこに何を置くか、そしてどれだけの数があるんか、全部決めてるんよ。
たとえば、緊急でよく交換するパーツなんかは、すぐメカニックに渡せるようなところに置く・・・とかね。
(これは念には念を・・・どころの話じゃないな。完璧すぎる!!!)
エンジニアはレースが始まる前にものすごい仕事をやってるってこと、わかってもろたかな?
驚きました。エンジニアが、こんなにたくさんの仕事をされてるとは・・・。
特にパーツの管理までエンジニアがやっているのはビックリです。
そうそう。自分が開発に携わったパーツは、クルマに取り付けられるまで責任を持つ。誰かに任せるんじゃなくて、自分の目ですべてチェック!
エンジニアって、大変なんですね・・・。
たしかに大変やね。でもドライバーはね、300km/h以上のスピードで命をかけて走ってるわけやし、自分がドライバーの気持ちになってみたら、安心して運転できるクルマじゃないと300km/hなんてだされへんでしょ?
そうですね。
もちろん、最初からこうだったわけじゃなくて、参戦を始めた2012年の頃はしょうもないミスでレースを失うことあったからね。
でも、これを繰り返すことで、クルマも鍛えられると同時にエンジニアたちも鍛えられてきたんですわ。
積み重ねられてきた結果なんですね・・・。
これが世界との戦い・・・「ル・マンへの道」や。1度や2度では到底極められへんほど、ル・マンへの道は奥が深いっちゅうことですわ。
ル・マンへの道にこんなに厳しい世界があったとは・・・2年前はとてもわからなかったです。
1度目とは違う光景が見れると思うよ。
桃之介君、2度目のル・マンへの道、頑張ってや!
今日はわざわざ来てくれてありがとう、ル・マンで待ってますよ!
はい、頑張ります!みなさんも頑張ってください!応援してます!
そうそう、ひとつ言い忘れたわ。
「ル・マンキャラバントラック」が日本列島を走るのは知ってるやろ?
僕の代わりに見届けてくれへんやろか?
はい、もちろんです!しっかりと見届けてきます!
次回予告
ル・マンレクチャーを受け、「ル・マンへの道」の奥深さを知った桃之介。
彼は、ル・マンへの次の一歩を踏み出しました。
そしてM部長の代わりに日本各地を走る「ル・マンキャラバントラック」を見届けに行きます。
いくぜ!ル・マン