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4.F1を通じて伝えたい“走り続けるトヨタの意志”
松井誠(モータースポーツ部主査)
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1950年代後半から現在に至るトヨタのモータースポーツ活動の原動力について、ル・マン24時間耐久レースやF1を体験している松井誠氏に話を聞いた。
(2005年6月25日(土)グッドウッド・フェスティバル内ドライバーズクラブにて)

トヨタのモータースポーツ活動を支える原動力
● 1950年代から現在に至るまで続くトヨタのモータースポーツ活動についてまずは伺いたいと思います。この間、トヨタはさまざまなカテゴリーで頂点を極めた経験もあるわけですが、そういった世界のトップレベルのモータースポーツの世界で活動を続けているトヨタの原動力、これはどこにあるのでしょうか?
「やはりモータースポーツというのは自動車と切っても切れないものがあって、自動車メーカーにとってこれはマストだと思います。これは会社としてやるべき事業のひとつだと思います。トップレベルをずっと維持しなければならないかというと、それはまたちょっと別の話になると思います。あまり無理しすぎるとどこかで切れてしまって継続できなくなる可能性がありますからね。切れるよりは長く続ける方が偉い、正しい、と思いますね」

 
  トヨタのモータースポーツ活動は間もなく40年に及ぼうとしている。
  F1への道のり

● たとえばF1におけるトヨタの戦い方などを見ていても、目標に対して着実に歩みを進めていく堅実さというか、そういったいわば大人の戦略のようなものを感じます。これはやはりトヨタならではの考え方なのでしょうか?
「そういう部分はあると思いますね。最初の社員教育からはじまって先輩がいて、そしてやがてそれが行動に表れていく、ということでしょうね。レースに携わるわれわれも、どこかでそういったやり方を自然に理解していて、意識せずともそうした形でやっているんじゃないかなと思います」

● レースに出れば「勝ちたい」という気持ちは当然あると思います。しかし単に勝つことだけではなく長いスパンの中でいかに実績を積み上げていくのか、というのも重要だと思います。
「ええ。着実に知識や技術、経験を自分たちのものにしてやっていこうというのはありますね。“受け狙い”はあまりしない、というスタンスなんです」

 

耐久レースで培われたトヨタの信頼性
● その上でトヨタのモータースポーツの歴史を紐解いてみると、今回グッドウッド・フェスティバルに参加しているS800をはじめ、耐久レースというカテゴリーに重点が置かれているように思えます。
「確かにそうなんですね。というのは、トヨタはモータースポーツのために特化したクルマを作ったことがないんです。つまり商品のラインナップというのがあってその中で使える車種を使ってきた、という流れがあるんです。そうすると必ずしもそのときのレースにぴったりしたクルマが用意できるわけではないんです。たとえば豪華ツーリングカーである2000GTですが、ああいったクルマがスプリントレースに出て勝てるわけはないわけです。では何ができるかというと、信頼性が高いと勝てるレースということになりますよね。スプリントレースの場合、豪華で重いクルマというだけで勝利の権利がなくなってしまうわけです。そのときどきの商品ラインアップの中からクルマを選んだ、という事情が結果的に耐久レースの方向へとつながっていったんでしょうね」

● 耐久という意味ではその頂点とも言えるル・マン24時間耐久レースへの挑戦がありました。あれは1998年~1999年でしたが、優勝まであと一歩にまで迫った非常にレベルの高い戦いだったと思います。松井さんご自身としてはあのときのル・マンのレースをどのように捉えていますか?
「あれは元々2年プロジェクトでした。最初から2年と決まっていたのです。もしもあと1年やっていれば勝てたはずだと思います。しかし、それは既定路線でしたからね」

● 2年で終了したル・マン参戦でしたが、そのときのクルマTS020はルックスの面で非常にF1を予感させる形をしていたと思います。
「それはその通りだと思います。というのはモノコックの形状はあたかも2人乗りのF1のモノコックみたいでしたしね」

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CONTENTS

1.グッドウッド・フェスティバルとは? 詳細..
2.グッドウッドで蘇ったトヨタの名車たち 詳細..
3.時代を駆け抜けたドライバーが語る“あの頃”と“今” 詳細..