耐久レースで培われたトヨタの信頼性
● その上でトヨタのモータースポーツの歴史を紐解いてみると、今回グッドウッド・フェスティバルに参加しているS800をはじめ、耐久レースというカテゴリーに重点が置かれているように思えます。
「確かにそうなんですね。というのは、トヨタはモータースポーツのために特化したクルマを作ったことがないんです。つまり商品のラインナップというのがあってその中で使える車種を使ってきた、という流れがあるんです。そうすると必ずしもそのときのレースにぴったりしたクルマが用意できるわけではないんです。たとえば豪華ツーリングカーである2000GTですが、ああいったクルマがスプリントレースに出て勝てるわけはないわけです。では何ができるかというと、信頼性が高いと勝てるレースということになりますよね。スプリントレースの場合、豪華で重いクルマというだけで勝利の権利がなくなってしまうわけです。そのときどきの商品ラインアップの中からクルマを選んだ、という事情が結果的に耐久レースの方向へとつながっていったんでしょうね」
● 耐久という意味ではその頂点とも言えるル・マン24時間耐久レースへの挑戦がありました。あれは1998年~1999年でしたが、優勝まであと一歩にまで迫った非常にレベルの高い戦いだったと思います。松井さんご自身としてはあのときのル・マンのレースをどのように捉えていますか?
「あれは元々2年プロジェクトでした。最初から2年と決まっていたのです。もしもあと1年やっていれば勝てたはずだと思います。しかし、それは既定路線でしたからね」
● 2年で終了したル・マン参戦でしたが、そのときのクルマTS020はルックスの面で非常にF1を予感させる形をしていたと思います。
「それはその通りだと思います。というのはモノコックの形状はあたかも2人乗りのF1のモノコックみたいでしたしね」 |