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Rd.2 Grand Prix of Malaysia
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新居章年リポート
2007年4月8日(日)

いつも応援ありがとうございます。灼熱のグランプリ、セパン・インターナショナル・サーキットで行われたマレーシアGPの報告をいたしましょう。

●空力を改良、抵抗の削減を狙う
グランプリが行われる1週間前にセパンで合同テストがあり、私たちは改良した空力パッケージで臨みました。具体的にはインダクションポッド付近にあるロールフープウイングを1対減らして、2対(左右4枚)から1対(2枚)にしました。昨年はタイヤの発熱に苦しんでいたため、目一杯ダウンフォースを付けましたが、今年はそのような問題もないことから、余分な空気抵抗は減らそうというのが主な目的です。

オーストラリアGPではレース終盤にラルフ(シューマッハー)のエンジンにニューマチックの圧が下がるというトラブルが発生しましたが、その後の調査で原因がエンジン本体に起因するものではなかったため、FIAで認められている部分に対策を施し、ヤルノ(トゥルーリ)とともにオーストラリアGPで完走したエンジンで2戦目のグランプリに臨むという段取りで、ここマレーシアにやってきました。

●セッティングの迷路に迷い込んだ金曜フリー走行
一言でいうと、金曜日は満足のいかない一日でした。それはヤルノが16番手に終わったからではありません。ヤルノの順位は、彼のアタックが、渋滞に巻き込まれただけなので、心配していません。それよりも、セットアップがうまく進められなかったことが不満でした。

直前にテストしていたこともあって、午前中のフリー走行は順調にプログラムをこなすことができました。ところが、午後のフリー走行になって、突然ラルフもヤルノもグリップ不足に悩まされました。とにかく、コーナーで安定せず、4輪が滑るような状態に陥ったのです。それ自体はこれまでも経験がないわけではありませんので、驚くことではありません。問題はそれに合わせて、セッション中にさまざまなセットアップを施したんですが、何をやっても明確な答えが見つけられなかったことです。

通常なら、あるトライをして良くなれば、その方向を進めればいいし、反対に悪くなれば、その逆のトライに変えればいいという方向性が見えます。しかし、すべてのトライで一長一短が出てしまい、結果的に時間だけを浪費してしまった形になりました。

とはいえ、2台ともトラブルなく、周回を重ねてくれたことは収穫です。再度、2種類のタイヤを比較することができ、ミディアムとハードの性格が、先週のテストと同様の傾向であることが確認されました。セッション中には答えが見つかりませんでしたが、きちんとした走行データがあるので、これからそれらを細かくチェックして、土曜日までに方向性を定めたいと思います。

●天候の読みが外れたが、予選ではトップ6は狙えるスピードを確認
結局、金曜に我々が苦しんだ問題は、データを調べてみるとどうやら路面コンディションが午後に大きく変化したことが最大の要因ではないかという結論に達して、土曜日午前中のフリー走行は、大きくはセッティングをいじらずに作業が進みました。

今回のレースから軟らかい方のタイヤに帯状のマーキングがされることとなった。写真は予選中のもので、ラルフもヤルノもこれからミディアムタイヤでアタックに向うところ。

このセッションで、ヤルノの順位が20番手にとどまったのは、セッションの終盤にヤルノの車両に電気系のトラブルが発生して、軟らかいほうのタイヤ(ミディアムタイヤ)を履いた予選へ向けてのアタックができなかったためだったので、そんなに心配はしていませんでした。むしろ、セッティングはラルフの方がまだハードタイヤでのフィーリングがしっくりいっていなかったようです。でも、ラルフもミディアムでは問題なかったので、予選はやってくれると信じていました。

GP前のテストから1枚仕様のロールフープウイングを採用した。ダウンフォースが減ってしまうが、空気抵抗を削減できるメリットがあるため、レースでも使用することにした。

予選の戦いは前回のオーストラリアGPと同様、第1ピリオドの最初はハードで確認走行をして、2回目からミディアムでアタック。第2ピリオドは2回ともミディアムを使用したため、最終ピリオドは1回のみのアタックとなりました。この最終ピリオドでラルフに右リアタイヤの空気圧が下がるトラブルが起きたことは残念です。すぐにピットインさせて、1本だけタイヤを交換してコースに復帰させました。

また、予選終盤に雨が降るという予報があり、実際にポツポツと降ってきたようなので、念のために少し早めにアタックするよう指示しました。結局、雨が本格的に降らなかったため、我々より後でアタックしたライバルに抜かれてしまいましたが、それがなければ6番手も狙えるスピードが確認できたので、レースではさらなる上位進出を目指そうと心に決めていました。

●スタートでの出遅れがすべて。とはいえ、ヤルノの入賞はポジティブにとらえたい
2戦連続で2台そろって完走し、かつ1台はポイントを獲得したことは、ポジティブな結果だったと思います。ただ、もう少し、いい成績を残すことができたと思うだけに悔しい気持ちもあります。

残念なことに、序盤に自分たちのペースで走行できなかったことと、ラルフのタイヤトラブルからのピットインで、好成績は残せなかった。しかし、2戦連続でポイント獲得は明るい材料だ。

特にスタートが良くなかったのが、残念でなりません。まだ原因は明確にわかっていませんが、スタート直前のタイヤの温度が予想していた数値より下がっていたので、フォーメーションラップでのタイヤの温め方に問題があったのかもしれません。またデータを見ると、発進自体はラルフのほうが良かったので、1コーナーから2コーナーにかけてのポジション取りで、ラルフが不利を受けたことも考えられます。いずれにしても、燃料を重めに積んだライバル勢に前に出られたことで、我々は自分たちが持っているスピードを披露できず、結果的に順位を上げることができませんでした。

さらにラルフには、1回目ピットストップ後に再びタイヤの空気圧が下がるというトラブルが襲ったことも不運でした。そのため、予定よりも早くピットインしなければならず、そこでレースを走りきるだけの燃料を搭載しなければならなかったため、苦しい走りを強いられました。

ただし、このような状況でも、開幕から2戦続けて入賞できているということは、ウインターテストから改善してきたことが間違っていなかったことだと思います。2週間連続開催となる今週末のバーレーンGPでは、さらにいい結果を出して、それを証明したいと思っていますので、今後もパナソニック・トヨタ・レーシングへ、ご声援をよろしくお願いします。


セパンでの新居章年。2戦連続入賞で手応えを得たものの、細かなトラブルに悩まされ本来の走りはかなわなかった。次戦、バーレーンではさらに上を目指す。